物語を盛り上げたければ、「繰り返し」と「意外性」を活用せよ!!|『俺を好きなのはお前だけかよ』に学ぶテクニック
名作アニメを研究して、創作に活かそう!
本記事では、「俺を好きなのはお前だけかよ」に【「繰り返し」と「意外性」を使って物語を盛り上げるテクニック】を学びます。
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作品概要
キーワードは「繰り返し」と「意外性」!!
本記事では、「俺を好きなのはお前だけかよ」の第1話を詳しく分析します。
これが、じつによくできた物語なんですよ!
ストーリーを確認しつつ、「この物語が面白い理由」を解明していきましょう。キーワードは、「繰り返し」と「意外性」です。
シーン①
本作は、「いかにもラノベチックなオープニングシーン」から始まります。
※正確には、冒頭に「意味深なプロローグ」が30秒ほど挿入されるのですが、ここでは割愛します。
はて、「ラノベチックなオープニングシーン」とは何か?
大雑把にご説明しましょう(太字部分は私の感想です)。
▶ まずは、「僕ってほんと、どこにでもいる平凡な高校生なんだ」というサブタイトルが入ります(長っ……)
▶ 朝、主人公が登校するシーン。彼は道を歩きながら独白します「すっかり春だなぁ」(んなことを呟く男子高校生はいねぇよ!)
▶ 続いて、主人公のモノローグが入ります「僕の名前は如月甘露(きさらぎ・あまつゆ)。僕の名前から『月』を除くと『如雨露(じょうろ)』になるから、通称『ジョーロ』ってわけ」(すげぇ名前だな。そしてニックネーム!そんな複雑なニックネーム、誰が考えたんだ!?)
▶ さらにモノローグが続きます「ちょっと珍しいあだ名以外は、何の特徴もないどこにでもいる平凡な高校生だ」(出たー!自称「平凡」!ラノベチックな作品のお約束ですよね)
▶ 直後、1人の美少女が走ってきました。ちなみに、パンチラ&胸揺れです(お約束……)。
▶ 美少女は主人公に「おはよー!」。彼女は主人公の幼馴染で、高校のクラスメイトだそうです(美少女幼馴染!こんなかわいい幼馴染がいる時点で、全然「平凡」ではないじゃん!)
▶ 【幼馴染】は、主人公の顔を見つめて言いました「ふふっ。今日もジョーロだ!」(えっ、何そのセリフ……。こいつ、不思議ちゃんか?)
▶ 続いて、【幼馴染】が主人公の腕にしがみついた。豊かな胸が主人公に当たる。しかし【幼馴染】は無自覚のようです(朝から何やってんの……。高校生にもなって、この無自覚っぷりはヤバイだろ。「天然系ビッチ」ってヤツか?頭おかしいんじゃないの……)。一方の主人公は赤面して、頬をポリポリかいている(お前、高校生だろ!?どれだけ純情なんだよ!「頬をポリポリ」じゃないだろ!)
とまぁ、こんな具合です。
その後も主人公は、【野球部のエースで、性格も最高の親友】と歓談したり、放課後には【誰もが憧れる美しい生徒会長】と2人きりになったり……。
要するに、「主人公は自称『平凡』な少年だが、なぜかリア充生活を送っている。ところが彼は純情で鈍感。自分がリア充なことにまったく気づいていない様子」というわけです。
こうした描写がおよそ4分間続くのですが……もうね、ざっくばらんに言ってうんざりですよ!「ハァ。またこういう作品ね」とため息が漏れる。「見るのを止めようかなぁ」と考えた人も少なくないはずです。じつは私もその内の1人。
つまり本作は、「鑑賞者のヘイト」(!)を集めるところから始まるのです。
シーン②
物語開始から4分47秒経ったところで、主人公は【生徒会長】からデートに誘われます。直後、【幼馴染】からも誘いが来る。
鑑賞者はがっくりです「ハァ。やっぱりこの調子で続くわけね……」。
そして、まずは【生徒会長】とのデートの日を迎えるのですが……ここで、予想外の展開がやってきます!
すなわち、2人はデートを楽しみました。
そして夕方の公園。じつにいい雰囲気です。【生徒会長】がベンチに腰かけて、言った「話があるんだ。まずは隣に座ってくれ」。
主人公の胸が高鳴る「まさか愛の告白か?」。
一方、鑑賞者のテンションはより一層低下する「どうせ愛の告白でしょ?ハァ」。
しかし……違った!
【生徒会長】が言いました「私はきみの【親友】が好きなんだ!仲を取り持ってほしい」。
主人公が愕然とする「えっ、マジで!?」。
もちろん鑑賞者だって愕然とします「えっ、マジで!?主人公がモテモテハーレムを築く話じゃないの!?」。グッと興味が湧いてくる!
主人公はショックを受けつつも、応援することを約束します。
シーン③
翌日、今度は【幼馴染】とのデートです。
多くの鑑賞者は思うでしょう「もしかして、【幼馴染】も【親友】を……?」。かくしてこれまでとは打って変わって、画面を食い入るように見つめることになる。あー、先が気になる!
そして時が過ぎ、夕方。主人公と【幼馴染】は……公園に入った!
もうね、これだけで大笑いですよ。「こいつ、またフラれるに違いないぞ!」とワクワクしてくる。
そして……【幼馴染】がベンチに座って言った「話があるの。まずは隣に座って」。
鑑賞者が噴き出す「やっぱり!」。
以下、【幼馴染】は【生徒会長】とほとんど同じセリフ、ほとんど同じしぐさで、「【親友】との仲を取り持ってほしい」と主人公に伝えます。
主人公は愕然とする。
鑑賞者は爆笑する。
主人公はショックを受けつつも、【幼馴染】の恋を応援すると約束します。
シーン④
主人公は【幼馴染】とのデートを終え、帰宅する。
そして自室に戻り、絶叫した「ふざけんなー!何がどうしてこうなった!オレ、頑張ってたよね!いい感じに『鈍感純情ボーイ』を演じてたよね!」。
……かくして、主人公の本性が明かされたのでした。
つまり、彼は「鈍感で純情な少年」を演じていたのです。
何のために?無論、モテるためです。「ラノベ主人公のようにふるまい、ラノベ主人公のようにモテモテな高校生活を送ろう」と考えていたのです。
実際には主人公は「鈍感で純情な少年」ではなく、ごく普通の高校生。下心もあれば、怒りを感じることもある少年でした。
鑑賞者はゾクゾクしてくる「すっかり騙されたなぁ!こりゃ面白くなってきたぞ!」。
さらに、です。
主人公がふと思いつく。【幼馴染】と【生徒会長】は、共に【親友】に惚れている。ゆえに、どちらか一方は必ず失恋する。したがって……「2人を誠実に応援し、好感度を高めておこう。そして、あぶれた方と付き合おう!」。
かくして主人公が言いました「オレのラブコメはこれからだ!」。
何と言うか……ゲス!卑屈!
しかし……じつに人間味がある!!
「ラノベチックなオープニングシーン」の反動もあり、多くの鑑賞者はここで、人間臭い主人公を大好きになるでしょう。
シーン⑤
さて、翌朝。
まずは、サブタイトルが表示されます。「僕ってほんと、どこにでもいる平凡な高校生なんだ」……ではなくて、「俺はどこにでもいる平凡なモブだ」。
そして、主人公が登校するシーン。彼は独白します。「すっかり春だなぁ」……ではなくて、「あーあ、春とか滅びねぇかなぁ!」。
そう、「ラノベチックなオープニングシーン」のやさぐれバージョンが始まったのです。これは堪らない!面白いに決まっています。多くの鑑賞者はニヤニヤして画面を見つめるでしょう。
続いて、【幼馴染】が登場。主人公は、それまでと変わらぬ態度で接します。しかし内心は荒れ狂っている「幼馴染という立場を利用するだけ利用して、純情な俺を弄んだクソビッチ!」。
【幼馴染】は先日同様、主人公に体を密着させる。と、主人公はカメラに向かって(つまり鑑賞者に向かって)問いかけた「こいつ、これでオレが好きじゃないだぜ。頭おかしくね!?」。
……さて、お気づきになったでしょうか?
主人公の発言は、私たち鑑賞者が「ラノベチックなオープニングシーン」を見ながら感じていたことそのものでなのです。ゆえに鑑賞者は、「そうそう!この【幼馴染】、頭おかしいよね!」なんて頷きながら、完全に主人公に感情移入することになります。
その後、主人公と【幼馴染】は学校に到着。
早速、主人公が【幼馴染】と【親友】の仲を取り持とうとします。
しかし、ここで問題発生。【幼馴染】はあまりにもポンコツだった!【親友】の前に出ると、事前の打ち合わせを全部忘れて暴走してしまうのです。
かくして主人公は、大苦戦します。
鑑賞者は、「お前、ポンコツキャラだったのかよ!クソビッチのくせに!」とここでもまた一笑いする。
シーン⑥
続いて、【生徒会長】のターンです。
主人公が【生徒会長】に声をかける。
……この時点で、多くの鑑賞者はすでにワクワクしているはずです。【幼馴染】同様、【生徒会長】に対しても、主人公の「本音」が披露されるに決まっているのですから!
そして期待通り……主人公は表面的には礼儀正しく接しますが、内心は荒れ狂っている「大人の色気を利用して、無垢な俺の心を弄んだアバズレ!」。
鑑賞者は、待ってましたと爆笑する。
続いて、主人公が【生徒会長】と【親友】の仲を取り持とうとするわけですが、ここでもやはり私たち鑑賞者は期待を抱く「もしかして【生徒会長】もポンコツなのでは……?」。
鑑賞者が「さぁ、どうだろう?」と画面を凝視する中……はい、案の定。【生徒会長】は、【幼馴染】に勝るとも劣らぬポンコツっぷりを披露した。
鑑賞者は「やっぱりね!」と笑い転げる。
シーン⑦
さて、いよいよ最後の場面です。
【幼馴染】と【生徒会長】のあまりのポンコツっぷりに、主人公は精神的に疲弊する。彼は図書室に逃げ込みました。
ここで新キャラ、【図書委員】が登場します。地味でブス、おまけに毒舌というとんでもないキャラです。
主人公は彼女に苦手意識を抱いており、「うえー。こいつかよ……」とうんざりする。
ところが、【図書委員】はとんでもないことを言い出した。曰く、彼女は主人公をストーキングしており、主人公について熟知しているとのこと。例えば「主人公が、鈍感で純情な少年を演じていること」すらも【図書委員】は承知していました。
主人公は仰天する。そして気味悪がる。
と、その時です。
【図書委員】が言った「お話しましょ」。
彼女の視線の先には……ベンチ!
図書室なのになぜか……ベンチ!
あの公園にあったのと同じ……ベンチ!
【図書委員】はベンチに腰かけて言った「話があるの。まずは隣に座って」。
主人公はひっくり返りそうになる。
鑑賞者は抱腹絶倒です「ここに来て、またベンチかよ!」。
主人公は、ブスで気色悪い【図書委員】につきまとわれたくない。ゆえに彼は、「大丈夫さ。今度も『【親友】のことが好き』と告白されるに違いない!きっとそうさ!」と必死に願います。
……もうね、いい意味でオチが見えていますよね。鑑賞者はワクワクして【図書委員】の言葉を待ちます。
そして、【図書委員】が言った「私ね、ジョーロくんが好きなの」。
鑑賞者が吹き出す「やっぱりね!」。
主人公は顔面蒼白。そして叫んだ「俺を好きなのはお前だけかよ!」。
鑑賞者は感心する「おー、ここでタイトル回収か!」。
こうして、第1話は幕を閉じます。
まとめ①
ここまで申し上げてきたことを、図に整理しました。
まとめ②:繰り返し
さて最初に申し上げた通り、この物語のキーワードは「繰り返し」と「意外性」です。
まずは、「繰り返し」について見てみましょう。
<第1話に登場する「繰り返し」のパターン>
第1話には、3パターンの「繰り返し」が登場します。
1:【生徒会長】のエピソードと、【幼馴染】のエピソードの繰り返し(まずは【生徒会長】とデート、次いで【幼馴染】ともデート etc.)
2:【生徒会長・幼馴染】のエピソードと、【図書委員】のエピソードの繰り返し(ベンチでの告白シーン)
3:「オープニングシーン」の繰り返し(純情鈍感バージョンと、やさぐれバージョン)
<「繰り返し」の効果>
ここまで見てきた通り、「繰り返し」によって以下の効果が生まれています。
1:鑑賞者の関心を集める(「もしかして今回も○○?」と予想し、画面に注目する)
2:鑑賞者を笑わせる(「やっぱりね!」「知ってた!」「お前もかよ!」)
<「繰り返し」のタイプ>
「繰り返し」は、2つのタイプに分けることができます。
1:純粋に同じことを繰り返す
2:敢えて一部をズラす
例えば、【生徒会長】の告白シーンと、【幼馴染】の告白シーンは、セリフもしぐさもほとんど完全に一致していました。この「一致」が笑いを生むのです。
一方、【図書委員】の告白シーンは、基本的には【生徒会長・幼馴染】の告白シーンをなぞりながらも、最後のセリフだけが異なっています(【親友】ではなく、主人公を好き)。この「ズレ」が笑いの源泉です。
まとめ③:意外性
上述の通り、「繰り返し」にはすごい力がある!……とはいえ、物には限度がある。「繰り返し」ばかりでは飽きてしまいます。
そこで「意外性」の出番です。
「『繰り返し』と『繰り返し』の間に『意外性』を挟む」ことで、物語にメリハリが生まれるのです。
まとめ④:フリ
最後にもう1つ、「フリ」について。
「フリ → ボケ → ツッコミ」の「フリ」です。すなわち、「笑い(ボケとツッコミ)」を導くきっかけになるもの。
第1話では、冒頭の「ラノベチックなオープニングシーン」が「フリ」として機能しています。これがあるからこそ、その後の「繰り返し」と「意外性」が活きてくるのです(ヘイトがあるからこそ、カタルシスが生まれる!)。
もしも「ラノベチックなオープニングシーン」がなかったら、第1話の面白さは半減していたでしょう。
以上、「繰り返し」と「意外性」、そして「フリ」!みなさんも使ってみてくださいねー!!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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