
「キャラ描写が丁寧な作品だなぁ」って褒められたい!!|『Aチャンネル』に学ぶテクニック
アニメを研究して、創作に活かそう!
本記事では、「Aチャンネル」に「【キャラ描写が丁寧な作品】の作り方」などを学びます。
※「Aチャンネル」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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【Topic①】クレイジーな償い
<1>
第9話の終盤(物語開始から15分40秒経った辺り)に、こんなシーンがあります。
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るんとユー子が、ホットケーキを作っていると……ふいに、るんがつまずいた。そして、ユー子に液体状の生地(小麦粉、卵などを混ぜ合わせたもの)をぶっかけてしまった。
るんは顔を青くする。
そして、目に涙を浮かべて謝罪した。
さらにるんは、「私がドジったのに、なんでユー子ちゃんに被害が及ぶの……!」と言って自分を責めます。
ユー子は気にしなくていいと微笑みますが……その時、るんは閃いた「そうだよ!私が被害者になるべきなんだ!」。
かくしてるんは、液体状の生地を自分にもぶっかけたのでした。
<2>
さて、いまご覧いただいたこのシーン。
ご注目いただきたいのは、「相手に迷惑をかけた時に、相手と同じ目に遭って詫びる」というスタイルです。
こういった場面で加害者がとる行動と言えば、
・茫然自失タイプ:オロオロする、泣き喚く etc.
・謝罪タイプ:土下座 etc.
・原状回復タイプ:タオルで汚れを拭おうとする etc.
……辺りが典型例でしょう。
しかし、るんは違う!自分も同じ目に遭って詫びる!
彼女の行動を「優しさ」と見るか、はたまた「狂気」と見るか判断に迷うところですが……しかし、この「スレスレな感じ」こそが、るんらしさと言えるでしょう。
<3>
ところで……このシーン、私は「HUNTER×HUNTER」のゴンを思い出しました。
対ピトー戦。
ゴンは右腕を切り落とされます。その時、彼は名状しがたい表情を浮かべて、こんなことを言います。
ゴン「大丈夫/痛くないよ/強がりじゃない/少しだけ/嬉しい/やっと…/カイトと同じになれた/あの時の…/少しだけ/救われた」(単行本29巻)
ゴンは、カイトを兄のように慕っていました。
しかしそのカイトがピトーに襲われ、腕を切り落とされた時……ゴンは何もできなかった。そしてその後、ゴンは「カイトを救えなかった!」「カイトを見殺しにしてしまった!」と強烈な罪悪感を抱えることになります。
だから自分が腕を失った時(= カイトと同じような姿になった時)、彼は「少しだけ救われた」と感じたのです。
ということで……いかがでしょうか。
るんは、「ダークサイドに堕ちたゴン(いわゆる「ゴンさん」)」と同質の「狂気」を孕むキャラと言えると思いませんか?
【Topic②】「キャラ描写が丁寧な作品」を作りたい!!
<1>
「キャラ描写が丁寧だなぁ」「キャラが1人1人じっくり描かれているなぁ」と感じる作品ってあるじゃないですか。
ああいうの、いいですよねぇ!
そこで、「キャラ描写が丁寧な作品ってどうしたら作れるんだろう?」と考えてみたんですよ。
で、比較的簡単に利用可能なテクニックを見つけました。
すなわち……「ツッコミ担当キャラ同士のやりとり」を描くべし!
<2>
まず、主要キャラを「ボケ、いじられ担当」と「ツッコミ担当」に分けてみましょう。
「Aチャンネル」で言えば、
・ボケ、いじられ担当:るん、ユー子
・ツッコミ担当:トオル、ナギ
……です。
<3>
続いて、「キャラ同士のやりとり」にご注目ください。
作中で特に多く描かれているのは、どのキャラとどのキャラのやりとりでしょうか?逆に、あまり描かれていないのは?
「Aチャンネル」に最も頻繁に登場するのは、「るんとトオル」のやりとりです。一緒に登校する、楽しそうにおしゃべりする、休みの日には買い物に出かけるなどなど、2人のやりとりは随所で描かれている。
また、「ユー子とトオル」のやりとりや、「ユー子とナギ」のやりとりも、比較的頻繁に見かけるものです。
一方、「トオルとナギ」のやりとりはあまり登場しません。
<4>
さて、ここで問題です。「トオルとナギ」のやりとりがあまり登場しないのはなぜでしょうか?
答えは簡単。2人ともツッコミ担当だから。
これ、「Aチャンネル」に限ったことではありません。
大体の物語では、「【ボケ、いじられ担当】と【ツッコミ担当】」のやりとりが頻繁に登場します。
その一方で、「【ボケ、いじられ担当】同士」のやりとりや、「【ツッコミ担当】同士」のやりとりはあまり登場しません。
特に「【ツッコミ担当】同士」となると……これは難しいですよ。
どちらも真面目で、常識人ですからね。彼らのやりとりは、どうしたって地味になりがち。ゆえに、作中で描かれることが少ないのです。
<5>
そして……だからこそ!
だからこそ、「【ツッコミ担当】同士」のやりとりを上手いこと描いてやると、鑑賞者・読者から「おお!この2人のやりとりをフィーチャーするとは、渋いじゃん!」「キャラ描写が丁寧な作品だなぁ!」と評価してもらえると思うんですよ。
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「Aチャンネル」では、第9話で「トオルとナギ」のやりとりにスポットライトが当てられています。
この2人は、るんやユー子のように叫んだりひっくり返ったりすることはありません。まぁ、「地味」と言っていいでしょう。
しかし例えば……
・1:2人は書店に入り、各々好きな本や雑誌を立ち読みする
・2:しばらくしてエロ漫画を発見。「これ、ユー子に見せてやろうぜ。どんな反応をするか楽しみだ!」と悪巧みする
この空気感!
ボケ役(るん、ユー子)がいないからこそ成り立つ「悪友同士」という感じの緩い空気感が最高です!
これぞまさしく、「キャラが1人1人じっくり描かれている作品だなぁ」と感じるシーンだと言えるでしょう。
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(担当:三葉)
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