「若手ビジネスマンAの言動が妙にゾンビっぽい」という演出を通じて、Aが「最早まともな思考能力も残っていない廃人寸前の社畜=生ける屍」であると暗示する ~アニメ「ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜」の場合
◆概要
【「若手ビジネスマンAの言動が妙にゾンビっぽい」という演出を通じて、Aが「最早まともな思考能力も残っていない廃人寸前の社畜=生ける屍」であると暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜」(第1話)
▶1
本作は、「1人の青年が自室でゾンビ映画を見ているシーン」から始まる。
・Step1:画面の中ではゾンビが暴れ回っている。
・Step2:ご存じの通り、ゾンビとは「生ける屍」だ。目はくぼみ、深く濃いクマができている。彼らは生きた人間を襲い、その頭部に噛みつくと、ズルズルっと頭皮と髪の毛をすすった。
・Step3:一方の青年は――ひどく疲れているようだ。目には生気がなく、声には覇気がない。目の周りには深く、濃いクマ。彼は画面を見つめたまま、ズルズルっと力なくカップそばをすすった。
なお、
・Step4:この青年の名は輝(「あきら」と読む)。彼はブラック企業に勤める24歳であり、あまりにもハードな業務とパワハラによって心身ともに限界を迎えていた。最早まともな思考能力は残っていない。うつ病も発症しているようだ。いつ過労死しても、いつ過労自殺してもおかしくない状態である。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step2と3。
そう、輝はゾンビとよく似ている。見た目も行動もそっくりだ。
――もちろん、この相似性は意図的なものだろう。
つまり、【「若手ビジネスマンAの言動が妙にゾンビっぽい」という演出を通じて、Aが「最早まともな思考能力も残っていない廃人寸前の社畜=生ける屍」であると暗示する】というテクニックである。
なお、上記シーン以降も「輝≒ゾンビ」を暗示する描写が複数登場する。
例えば、深夜。疲れきった輝は自らの体を律する力も残っていないのだろう、上半身をふらふら揺すりながら歩いていく。その歩き方は、完全にゾンビのそれである。