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冬アニメ「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。」の研究 ~セカイ系のニオイがするぞ!これが「ポストなろう時代のセカイ系作品」ってやつなのか!?

🥳本記事では、ポプカルMAXによるオンライン座談会「アニメ語り」(24年2月25日実施)の内容を一部抜粋してお伝えします。なお、完全版は動画でご覧いただけます→ こちら

「ポプカルMAX」とは?:ポップカルチャー(マンガ、小説、ラノベ、アニメ、映画、ゲームなど)好きのための、ゆるいコミュニティです。好きな作品について語ったり何かを作ったりして楽しむことを目的としています。


<座談会の参加者紹介>

👉清水大地 マスター・オブ・アニメ。年120作以上のアニメを見続けて20余年。「咲-Saki-」で好きなのは龍門渕透華。

👉村上空気 「咲-Saki-」で好きなのは、もちろん東横桃子っす! →X(旧Twitter)でフォローしてね!!




💀今日のテーマは「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。」!!


村上:今日は、「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。」について議論しましょう!

清水:はい。

村上:「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。」は以前も取り上げたことがあるんだけれど、あの時はまだ第5話までしか放送されていなかった



村上:第6話以降もいろいろなことがあったよね。第6-7話では試練の塔を攻略したし、第8話では夜霧の過去がたっぷり描かれた。

清水:そうね。

村上:というわけで今日は第6話以降のあれこれも踏まえて、改めて「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。」について議論しましょう!


💀母性に飢えている高遠くん。もしかすると彼は「母性的な敵」を倒せないかも!?


清水:まず俺が取り上げたいのは、第5話の回想シーンだな。

村上:ふむ。

清水:本作では、「誰かが高遠くんや知千佳さんに敵意を向ける・危害を加えようとする→高遠くんが即死能力であっさり殺す」というのが繰り返されているけれど。

村上:うん。

清水:たださ、「幼い高遠くんと朝霞さんとの出会い」を描いた第5話の回想シーンはちょっと例外なのよ。

村上:と言うと?

清水:ほら、朝霞さんは出会ってすぐいきなり高遠くんを担ぎ上げたり、投げ飛ばしたりしている。本当ならここで反射的に殺されてもおかしくないと思うんだ。でも朝霞さんは殺されない。

村上:あー、言われてみれば確かに。

清水:高遠くんはなぜ殺さなかったんだろうね?

村上:うーん……まず考えられるのは「朝霞さんには敵意や殺意がなかったから」という理由かな。

清水:確かに。

村上:ただ、理由は他にも考えられそうだよね。すなわち――高遠くんは謎の研究所出身だ。どうやら親がおらず、親代わりになる人もいないという劣悪な環境で育ったらしい。つまり、彼は母に愛された経験が不足しており、無意識の内に母性を求めていたと推測できる。

清水:ふむ。

村上:そして朝霞さんってのは、後に高遠くんのお母さんみたいな存在になる人だ。というわけで、高遠くんは反射的に朝霞さんの中に母性的なものを感じ取り、かくして殺さなかったんじゃないかなぁ。

清水:なるほど。

村上:ってことは――そうか!本作のラスボスは母性的なキャラかもしれないね(笑)。何しろ高遠くんはいまもって母性に飢えているみたいだからね。

清水:ほとんど無敵の高遠くんだけれど「母性を感じさせる存在」には弱い、と(笑)。

村上:そうそう(笑)。母性を感じさせるキャラを殺すことはできない。ゆえにラスボスに相応しい。

清水:(笑)。

村上:朝霞さんがいまどうなっているのか作中では描かれていないけれど――最悪の場合、ラスボスはネクロマンサーかもしれないね。朝霞さんの遺体を操って攻撃してくるわけ(笑)。

清水:ひどい(笑)。

村上:で、高遠くんは涙を流しながら「さようならお母さん」と呟き、そして即死能力を発動。朝霞さんを殺す。

清水:なるほど(笑)。

村上:「母なる存在を殺す」というのは、言うまでもなく「自立」のメタファーだ。つまり本作は高遠くんの自立の物語であり、要するにそう、「新世紀エヴァンゲリオン」だったわけですよ(笑)。

清水:となると、高遠くんがシンジで、朝霞さんはユイかな(笑)。

村上:そして知千佳さんはレイ……いや、アスカになるのかな(笑)?


💀ネームドキャラの無駄づかい


村上:俺が好きなのは第6話だな。高遠くんたちが「試練の塔」を下りていく中でいかにも強そうなキャラが何人か登場するんだよね。

清水:ふむふむ。

村上:そして、「イグレイシア」「カヅノマサキ」「シロ」「ゲラルダ」「エマ」なんてふうに画面にわざわざ名前が表示される。これは重要人物に違いないぞと思いきや……。

清水高遠くんの即死能力で直後に死ぬ、と(笑)。

村上:そう(笑)!

清水:(笑)。

村上:言わば「ネームドキャラの無駄づかい」「名札の無駄づかい」ね。これがたまらないよ(笑)。

清水:確かになぁ(笑)。

村上:俺は「ウマ娘 プリティーダービー」を思い出したよ。特に「Season3」第1話の登校シーン。大量のウマ娘がバーッと登場し、彼らの名前が片っ端から画面に表示されるんだけれど――「そんな小さな文字で、そんなに大量に書かれてもちっとも読めねーよ!(笑)」と笑った記憶がある。


💀目的地は一緒だけれど、でもだからって一緒には行かない


清水:俺が印象に残っているのは、第7話のラストシーンだな。魔人との戦いが終わり、共に戦ったライニールたちが「俺たちは王都に向かう」と告げるシーンね。

村上:ふむ。

清水:高遠くんたちも王都を目指すことになっている。だから「当然皆と一緒に移動するのだろう」と思いきや、高遠くんは断ってしまう

村上:せっかく誘ってもらったのに「いやだよ。俺は壇ノ浦さんと2人旅するんだから」とか言うんだよね(笑)。

清水:そう(笑)。で、結局、高遠くんと知千佳さんはライニールたちとは別れて移動するんだ――同じ場所を目指すのに(笑)!

村上:いやぁ、最高だよ(笑)。

清水:(笑)。

村上:あのシーンは本当に面白くてさ、だって、単に「ライニールたちの出番はここで終わり→だから高遠くんたちと別れさせたい」なら、「高遠くんたちは王都を目指す。一方、ライニールたちは別の街を目指す→かくしてお別れ」という展開にすりゃいいじゃん。

清水:そうね。

村上:それだのに、わざわざ「目的地は同じです→しかし別行動します」という展開にするんだよ(笑)。

清水:確かに(笑)。

村上:「高遠くんは知千佳さんに強い想い(執着心?恋心?)を抱いています→だから2人きりで行動したがります」と解釈すべきシーンなのかもしれないけれど――脇役がガンガン死にまくるという特徴を持つ本作だからね、「あっ、味方サイドのキャラもあっさり退場するのね(笑)」「まぁ殺されなかっただけマシか(笑)」と思わず笑っちゃうんだよなぁ。


💀本作は「ポストなろう時代のセカイ系作品」?


村上:ところでさ、本作にはセカイ系のニオイが漂っているなぁと感じるんだよ。

清水:ほぉ。

村上:「セカイ系」という言葉がだいぶ多義的に使われていることもあって、以下はあくまでも俺の印象論として聞いてほしいんだけれど――そもそもセカイ系っていうのは「主人公とヒロインを中心とした小さな関係性が、『世界の終わり』などの大きな問題に直結する作品」と言っていいと思う。

清水:ふむふむ。

村上:例えば「エヴァ」の後半を思い出してもらいたい。あの作品では「シンジくん(の自意識や成長)」「シンジくんとヒロインたちの関係」が、「世界(の終わり)」と直結して描かれていたよね。語弊を恐れずに言うならば、「シンジくんの成長・自立=世界の救済・安定」だった。

清水:うん。

村上:では本作はどうか?ここまで話してきた通り、「敵キャラが片っ端から死ぬ」「ネームドキャラであろうと呆気なく死ぬ」「味方サイドのキャラもあっさり消える」――つまり、「高遠くんと知千佳さん以外のキャラの扱いが極めて軽い」というのが本作の特徴の1つだ。

清水:確かに。

村上:多くの異世界ものでは、主人公はヒロイン以外のキャラとも交流するじゃない。

清水:そうね。村人とか、宿屋のおかみさんとか、国王とか。

村上:そうそう。しかし本作にはそういったものがない。むしろ先ほど言った通り、「主人公も味方キャラも目的地は同じです→でも別行動です」とわざわざ描くなど、高遠くんと知千佳さん以外のキャラを意図的に軽く扱っているように感じる。

清水:ふむ。

村上:また、「高遠くんが世界の趨勢を握っている」というのも本作の特徴だ。

清水:彼の即死能力があれば、世界を救うことも破滅に追いやることも可能だろうからなぁ。

村上:何しろ、魔人を一瞬でぶっ殺しちゃうくらいだもんね。

清水:うん。

村上:というわけで、セカイ系の定義――「主人公とヒロインを中心とした小さな関係性が、一気に『世界の終わり』などの大きな問題に直結する作品」――を改めて思いだしてほしいんだけれど、どうだろう?本作にはセカイ系っぽさがあると思わない?

清水:なるほど。

村上:もちろん、「本作はセカイ系そのものだ」と言いたいわけではないよ。本作と、セカイ系と呼ばれる作品群にはいろいろと相違点もあるからね。

清水:ほぉ。

村上:例えば、多くのセカイ系作品では、世界の命運はヒロインの少女が担っている。「最終兵器彼女」のちせや、「イリヤの空、UFOの夏」のイリヤが典型例だ。

清水:そうね。

村上:それに対して本作では、世界の命運を握っているのは高遠くん。知千佳さんではない。

清水:うんうん。

村上:で、こうした特徴も踏まえて考えると、本作は「セカイ系×異世界もの」であり、「ポストなろう時代のセカイ系作品」とか「2020年代のセカイ系作品」とか言ってもいいのかもしれないなぁと思うんだ。


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