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彼女は、なぜゴミを捨てられないのか?|『28DAYS』(2)
テーマ発表!!
前回に引き続き、映画「28DAYS」をベースに新しい物語を妄想します。
※「28DAYS」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 それではまいりましょう!
三葉 はい。
嘉村 「28DAYS」は、アルコールとドラッグにまみれた生活を送っていた女性の「依存症リハビリセンターでの日々」と、「依存症からの回復」を描いた人間ドラマですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?
案①
三葉 まずは、「28DAYS」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 さてここからは、「『28DAYS』をリスペクトした物語」のアイデアをアレコレ妄想するのですが……その前にもう1つ、以下もご覧ください。
三葉 以上、「依存症の基礎知識」でした。
嘉村 なるほど。
三葉 それでは以上を踏まえて「案①」ですが……ズバリ!「『28DAYS』 ~『強迫的ホーディング』編」!
嘉村 「強迫的ホーディング」……一体どのような依存症ですか?
三葉 ご説明しましょう。これは、「生活に支障が出るほど大量のモノを、家の中に溜め込んでしまう障害」。ざっくり言えば、「ゴミ屋敷の原因となる障害」ですね。
嘉村 ほぉ!
三葉 「案①」のストーリーをご紹介しましょう。……主人公は、未婚の中年女性。元々は実家に住み、仕事をして、ごく普通の生活を送っていた。ところが……昨年両親を亡くした。それ以来、徐々に引きこもりがちになり、仕事を辞め、そしてモノを溜め込むようになった。
嘉村 ふーむ。
三葉 なぜか捨てられない!「私、どうしてこんなにたくさんのモノをとっておくのだろう……」と自分の行動に疑問を抱きつつも、捨てようという気にならない。それが明らかなゴミだとしても、捨てることが苦痛。まるで体の一部を奪われるような鋭い痛みを感じる。……かくして両親を亡くして1年、彼女の家はゴミ屋敷と化した。
嘉村 なるほど。
三葉 そんなある日、市役所の福祉保健課の職員が訪ねてきて、「害虫や悪臭の発生源となり、近所に迷惑がかかっている。また、火災のおそれもある。家を片づけてほしい」と告げる。さらに続けて、「あなたは、市の条例に違反している。○月○日までに改善が見られない場合、市役所が行政代執行を行うことになる」。
嘉村 ほぉ。
三葉 しかし、主人公は聞く耳を持たず……やがて期日を迎える。市役所の職員が代執行を開始。淡々とごみを分別し、処理していく。当初、主人公はそれをボンヤリと見つめていたのですが……モノが減るに連れて、心の奥底に疼痛を感じるようになる。と同時に、沸々と怒りが込み上げてくる。彼女は職員に殴りかかる。辺りにどよめきが起こる。交通整理に来ていた警察官がすぐに取り押さえる。彼女は警察署経由で病院へ運ばれ、「強迫的ホーディング」の診断を受け……そして、依存症リハビリセンターに入所させられたのでした。
嘉村 ふむふむ。
三葉 入所当初、彼女は不機嫌だった。「あなたは逮捕されたいのかい?刑務所は嫌だろ?……だったら、大人しくセンターに入所するんだ。そしてリハビリを受けなさい」と言われ、致し方がなく従ったものの、彼女には「自分が依存症で、治療を必要としている」という自覚がない。「何だってこんなところに入らなきゃいけないのよ!カウンセリングとかグループセラピーとか……気持ち悪い!」なんて思っている。
嘉村 ふむ。
三葉 したがって、真面目に「治療」を受けようとはしない。また、他の入所者を小バカにしたような態度をとる。そしてトラブルを起こす。さらに、職員の言葉を無視して、ここでも部屋にモノを溜め込む。かくして、あっという間にゴミの山ができる。
嘉村 ふーむ……。
三葉 しかしある時、そのゴミが原因でボヤが起き……彼女はようやく気づくのです「私……おかしい!このままではいつか死んでしまう!私、死にたくない!!」。
嘉村 なるほど。
三葉 こうして、彼女は「回復」への第一歩を歩み始めました。しかし、それは茨の道です。そもそも……彼女は、なぜモノを溜め込んでしまうのでしょうか?
嘉村 ええ。
三葉 それは、「生活に必要なものと、必要ないものを判断するのが苦痛だから」。
嘉村 ほぉ……。
三葉 例えばこんな具合です。幼い頃……ある日、彼女はおもちゃを壊してしまった。そして、何の気なしに捨てた。しかし後日、それを知った彼女の母が強い口調で、「えっ、捨てたの!?あれはママが小さい頃、お婆ちゃんからもらった大切なおもちゃだったのに……」。幼い彼女は、小さな胸を痛める。ママを傷つけてしまった!ママを悲しませてしまった!私は悪い子だ!
嘉村 ははぁ。それがトラウマになって……。
三葉 ええ。この幼い日の「失敗」が、無意識の内に、その後の彼女の人生を拘束しまったのです。すなわち、彼女は自分でも気づかない内に、モノを捨てる前にじっくり悩むようになった。「これは本当に捨てていいの?いつか使うのでは?何かの役に立つのでは?」。
嘉村 ふむふむ。
三葉 じっくり悩むのは、別段悪いことではありません。何でもかんでもポイポイ捨てるよりもよほどいい……ように見えるのですが、本人にとっては苦痛以外の何物でもない。毎日毎日、何かを捨てるたびに頭を悩ませる。捨てたあとも、「本当に捨ててよかったの?」とグルグル悩み続ける……これは苦しいですよ。
嘉村 毎日のことですもんねぇ……。
三葉 では、どうするか?答えは簡単です。ルールを作ってしまえばいい。
嘉村 ルール……?
三葉 ええ。「すべてとっておく。何1つ捨てない」と決めてしまえばいい。
嘉村 なるほど……一度そう決めれば、もう頭を悩ませることはなくなりますもんね。
三葉 その通りです。彼女はスッと楽になる。生きやすくなる。まさにハッピー♡……なのですが、その結果がゴミ屋敷です。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ここまでご説明したことを整理してみましょう。
三葉 このように考えてみると、ゴミ屋敷を「解決」するのがいかに難しいことかよくわかりますよね。なにしろ、本人にとっては「ゴミ屋敷を作る」のが合理的な選択なのですから。
嘉村 確かに……。
三葉 とはいえ、衛生面でも安全面でも、ゴミ屋敷を許容することはできない。
嘉村 ふむ。
三葉 そこで、依存症リハビリセンターの出番です。彼女はカウンセリングや勉強会を通じて、「生活に必要なものと、不必要なものを区別することの重要さ」「区別するコツ」「区別に失敗したって大丈夫」といったことを学んでいく。また、他の入所者との絆も深まっていく。
嘉村 ふむふむ。
三葉 彼女は次第に成長し、やがて退所日を迎えます。……が、現実は厳しい。退所者の多くはすぐに元の生活に戻り、日を置かずして再びセンターに入所することになるという。
嘉村 アルコールにしろドラッグにしろ、依存症から脱するのは本当に大変みたいですよねぇ……。
三葉 では、我らが主人公は?彼女はどうなってしまうのでしょうか?またゴミ屋敷を作ってしまうのでしょうか?……退所後、彼女は自宅に戻る。家はすっかり片づいている。彼女は何やら落ち着かない。
嘉村 あー……長らく、大量のモノに囲まれて暮らしてきたから。
三葉 そうですね。
嘉村 ふむ……。
三葉 彼女の額にじんわりと汗がにじむ。カバンからペットボトルのお茶を取り出し、飲み干す。彼女の手には、空のペットボトルが残る。彼女はしばらくそれを見つめ…….。
嘉村 あー……。
三葉 ゴミ箱に捨てる。
嘉村 おー!
三葉 彼女がこの先どうなるかわかりません。上述の通り、依存症から脱するのはそう容易いことではない。しかし!彼女は自分の意志でゴミを捨てた。彼女の未来には希望が持てそうだ……というところで、物語は幕を閉じます。
嘉村 ふむふむ。
三葉 それでは最後に、以上のストーリーを「28DAYS」と比較してみましょう。
※補足:以下は、ゴミ屋敷をテーマにしたマンガ「ヤナギダクリーク」を分析した記事です。よろしければ、合わせてご覧ください。
案②
嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。
三葉 はい。「案②」は、「『28DAYS』 ~『断捨離依存症』編」です。
嘉村 断捨離依存症……?
三葉 ええ。「断捨離」をご存知の方は多いと思います。「不要なモノを捨て、モノに対する執着から離れよう」という思想・行動のことですが……。
嘉村 ええ。
三葉 断捨離依存症は、「とにかく何でも捨ててしまう!捨てに捨てまくる!捨てることが快感!捨てるものがなくなるとムシャクシャする!……で、日常生活に支障が出ること」です。
嘉村 ほぉ。
三葉 「案②」の主人公は、この断捨離依存症に陥っている。
嘉村 ふむ。
三葉 まずは、「28DAYS」との比較表をご覧ください。
三葉 ストーリーのアウトラインは、「28DAYS」や「案①」と同じです。すなわち……主人公は断捨離依存症者で、とあることをきっかけに依存症リハビリセンターに入所することになる。ところが彼女には、「自分が依存症で、治療が必要」という自覚がない。したがって、真面目に「治療」を受けず、さらに他の入所者を小バカにするなどトラブルを起こす。
嘉村 ふむ。
三葉 しかしふとしたことから「自分が普通ではない」と自覚し、「回復」への道を歩き出す……という物語ですね。
嘉村 なるほど。
三葉 ところで……この断捨離依存症が、上述の「強迫的ホーディング」と表裏一体の関係にあるということにお気づきになったでしょうか?
嘉村 表裏一体……どういうことです?
三葉 先ほど、「モノを捨てることに慎重になる → 生きづらくなる → 『すべてとっておく』というルールを作ることで解決する」、それが強迫的ホーディングであるとご説明しました。
嘉村 ええ。
三葉 一方同じ境遇でも、「すべてとっておく」ではなく「すべて捨てる」というルールを作ることで対処することもできますよね。それが、断捨離依存症だと言えるでしょう。
嘉村 なるほど……悩んだり不安になったりするのを避けようとしてルールを作る点は共通している。しかし、その方向が真逆なんですね。
三葉 その通りです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 したがって、「案②」の主人公も、「案①」同様、「生活に必要なものと、不必要なものを区別することの重要さ」「区別するコツ」「区別に失敗したって大丈夫」といったことを学ぶことになる。
嘉村 ふむ。
三葉 そして退所日を迎える。彼女は果たして大丈夫だろうか?また手当たり次第にモノを捨ててしまうのでないだろうか?……帰宅した彼女は、カバンの中から1葉の写真を取り出します。退所にあたり、入所者仲間と撮った記念写真です。彼女の手にグッと力が入る。もしかして、ぐしゃぐしゃっと丸めてゴミ箱に捨ててしまうのか?……いや、違う。彼女は、自分の意志で写真を壁に飾る。そう、彼女は間違いなく「回復」に向かっているのです。きっと上手くいくはず。そんな希望を感じるシーンで物語は終わります。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『28DAYS』風物語」のアイデアをご紹介しました!
続きはこちら!!
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クリエイター向け:「28DAYS」の構造を使って、オリジナルストーリーを考えよう!!【「ゴミ屋敷!」の巻】
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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