透華はあまりにも格好いい!なぜこれほどに魅力的なのか?|【第13局:微熱】「咲-Saki-」に学ぶ
※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第13話。第12話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
分析メモ
■1:主人公の覚醒を、対戦相手の視点から描く
本話は、【和が覚醒するエピソード】である。それが【対戦相手たる透華の視点】から描かれている。
なお、こうした【戦う中で主人公が覚醒 → 対戦相手が応戦しつつ、主人公のすごさを鑑賞者・読者に解説する】というのは、スポーツものやバトルものでよく見かける王道的な展開と言えるだろう。
■2:透華はメチャクチャに格好いい!!
<1>
上述の通り、本話の中心人物は和だ。和がついに覚醒し、そしてぶっちぎりの強さを発揮する。
だがしかし、対戦相手たる透華も捨てたものではない。というか、本話の透華は、和を食いかねぬほどに格好いいのだ。
<2>
さて、本話で透華がどのように描かれているかざっくり整理してみよう。
・Step 0:透華は、普段は<高飛車なお嬢様 & 感情表現が豊かで子どもっぽい>というキャラだ。<ボケキャラ/ネタキャラ>と言えるだろう。
・Step 1:しかし、<麻雀に関してはじつに真面目で情熱的>だ(強者の牌譜を徹底的に研究したり、ネット麻雀でたくさんの打ち手と戦ったり、地道なトレーニングを積んできたと明かされる)。
・Step 2:和に激しい闘志を燃やす(敵が強ければ強いほど燃えるのだ!)。
・Step 3:和の状態(まだ覚醒していない、覚醒し始めた etc.)を敏感に察知する。
・Step 4:和が完全に覚醒することを望む。
・Step 5:和が覚醒した際には、その強烈な強さに恐怖を覚えつつも、しかし強敵と戦えることに歓喜する。
・Step 6:覚醒した和に手も足も出ず、ショックを受ける。しかし挫けない「ここからが本番ですわよ!」。
嗚呼、なんと格好いいのか!
<3>
ちなみに……こうして整理してみると、透華は「テニプリ」の跡部景吾とよく似たキャラだと思う。どちらも作品を代表するカリスマである。
■3:透華の魅力的なセリフ
<1>
【「咲-Saki-」の登場人物の中で、セリフが特徴的なのは誰か?】と問われれば、大半の鑑賞者は衣の名をあげるだろう。
彼女は本話でも「そうか、いるのか……妖異幻怪の気形が!」、「其を玩弄し、打ち毀す!」などと訳のわからぬことを言っている。
<2>
しかし、透華のセリフもまたじつにユニークで、魅力的なものが多い。
ここでは、特に私が好きなものを列挙しよう。
・「原村和……そのふざけた胸の脂肪はともかく、あなたのプライドくらいは凹ませて差し上げたいところですけど」
・(和がポンした時に)「フン!ですわ!たかが役牌1つ鳴かれただけですわ!」
・(和が調子をあげてきた時に)「こちらも完全イーシャンテン。点数不明の序盤のツーフーロ相手なら、まだまだ押せ押せですわ!」
・(望ましい牌がきた時に)「いらっしゃいまし!リーチですわ!」
・「わかりましたわ。原村和、まだ100%じゃない。のどっちへの変身を完了していない!ヒーローの変身を待つ悪役の美学もわからなくはないですけれど、私は気が短い。早く全力におなりなさい。さもなくば……潰す!」
・(和が覚醒し始めると)「そろそろかしら、原村和。そろそろお目覚めかしら?」
・(和が覚醒した時に)「おはよう……おはよう、のどっち!この気配、このプレッシャー、ネットで出会うのどっちそのもの!いえ、それ以上ですわ!やはり生の感触は格段にジューシー!じっくりたっぷり舐るように味合わせていただきますわ!」
■4:和と透華の共通点、相違点
和と透華は2人ともデジタル派だ。似たような麻雀を打つ。
しかし、覚醒への道筋は大きく異なる。
和はリアルな情報を遮断することで、まるでネット麻雀を打っているかの如き集中力を発揮し、覚醒に至る。一方、透華は和を意識しまくっている。そして和への対抗心からパワーアップしたように見える。
この違いが面白い。
■5:地味な物語を、華やかに描く方法
<1>
上述の通り、和と透華はデジタル派。合理的で堅実な麻雀が得意だ。ゆえに、咲や久のように<オカルトめいた一手を打つ><持ち点がぐんぐん変化する>といった派手さはない。
つまり本話は、一歩間違えれば地味で退屈なエピソードになりかねないのだ。
<2>
ところが、本話は地味でもなければ退屈でもない。他のエピソードに勝るとも劣らぬ華やかさを持っている。
なぜか?
おそらくは……
・理由1:和の覚醒シーンが、思いっきり派手に描かれているから
・理由2:和の対戦相手が透華だから(透華は喜怒哀楽が激しく、しかもそれをストレートに表に出すキャラだ。ゆえに彼女がいるだけで華やかになるのだ)
この2つによって、本話は<地味で退屈>を免れ得たのだと思う。
■6:衣と咲の戦い
<1>
本作のキャラは皆、麻雀が強くて、そして麻雀を愛している。
ところが衣は違う。彼女は最強レベルに強いが、しかし麻雀を愛しているとは言いがたい。
なぜならば、衣は強すぎるから。強すぎるがゆえに、皆と楽しみながら麻雀を打つことができないのだ。衣と卓を共にした者は、そのあまりの強さに驚愕し、心に傷を負うらしい。
衣は、そんな状況を半ば諦観しているように見える。とはいえ、<他人と付き合いたい(感謝されたい、友だちになりたい)>という想いは捨てきれないようだ。
この点で、衣はじつに哀れなキャラだと言えるだろう。
<2>
ところで……衣の【強いが、麻雀を愛していない(愛せない)】という特徴、何やら見覚えがないだろうか?
そう、麻雀部に入る前の咲にそっくりなのだ!
咲は家庭の事情ゆえに【強いが、麻雀を愛していない(愛せない)】というキャラだった。
しかし咲は変わった。和らと出会い、いまの彼女は麻雀に夢中だ。誰よりも麻雀を楽しんでいるように見える。
<3>
と、なるとだ。
「なるほど!本作のクライマックスは【咲が、かつての自分(= 衣)と対峙 → 今度は咲が<変える側>になる】という展開だな」と感じた人は少なくないと思う。
続きはこちら!
関連記事
・この<王道感>溢れるオープニングよ!!|【第1局:出会い】「咲-Saki-」に学ぶ
・主人公が覚醒するには、<強く美しいライバル>と<鋭い観察眼を持つ先輩キャラ>が必要!!|【第2局:勝負】「咲-Saki-」に学ぶ
・説教が始まるかと思いきや百合展開!!|【第3局:対立】「咲-Saki-」に学ぶ
・浮かれるな!現実を見ろ!地に足をつけろ!……そして強化合宿へ|【第4局:翻弄】「咲-Saki-」に学ぶ
・いま、ついに、主人公たちの足並みが揃った!!|【第5局:合宿】「咲-Saki-」に学ぶ
・鑑賞者に今後の展開を予想させ、期待を膨らませ、「あー、早く続きを見たい!」とワクワクさせるテクニック!!|【第6局:開幕】「咲-Saki-」に学ぶ
・風越女子と福路美穂子の<ギャップ>の魅力♥|【第7局:伝統】「咲-Saki-」に学ぶ
・<百合>と<ちょいエロ>を使って、重すぎず軽すぎない絶妙なバランスの物語を作る!!|【第8局:前夜】「咲-Saki-」に学ぶ
・構成の妙!鑑賞者をミスリードしまくれ!!|【第9局:開眼】「咲-Saki-」に学ぶ
・鑑賞者が思わず<下世話な妄想>を膨らませてしまう展開や演出をぶちこむ!!|【第10局:初心者】「咲-Saki-」に学ぶ
・久はジョセフ、ネテロ、カイトに匹敵する曲者キャラである!!|【第11局:悪戯】「咲-Saki-」に学ぶ
・隙あらば百合!でもやっぱり主人公カップルが最高だと思う!!|【第12局:目醒め】「咲-Saki-」に学ぶ
---🌞---
関連
---🌞---
最新情報はTwitterで!
---🌞---
最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)