【続】発想力を鍛えるぞ★大切なことはすべて『ワタモテ』が教えてくれるはず|「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」
発想力を鍛えるぞ★
今日も『ワタモテ』に学ぼう★
本記事で取り上げるのは……『ワタモテ』!
「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」という傑作タイトルに敬意を表しつつ……タイトルの一部をいじり、ストーリーを妄想することで発想力を鍛えようという実用的な企画の……第2回(全3回)!
※注:「第1回」はこちら。本記事の前にご覧になることをオススメします。
※「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」:谷川ニコ氏によるマンガ。略称は「ワタモテ」。そのリアルすぎる「喪女(モテない女性)っぷり」から海外のネット掲示板で火がつき、大ヒットに至ったことで有名。2013年にアニメ化された。
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三葉「それでは元気にまいりましょう!」
清水「承知しました」
三葉「『第1回』の終盤では、『ドラえもん』をヒントにアレコレ妄想を広げましたが……」
清水「ええ」
三葉「今回は『サザエさん』がよいかな、と」
清水「……あなた、好きですよね。こういうの」
三葉「最近、世の中のたいていのことは『ドラえもん』やら『サザエさん』やらに置き換えることが可能で、それによって理解が捗るのではないかと考えておりまして」
清水「ほぉ……」
三葉「私、コレを『Sazaesanalize』(サザエさナライズ。もちろん造語) = 『サザエさん化』、あるいは『Doraemonalize』(ドラえもナライズ。こっちも造語) = 『ドラえもん化』と呼んでいます」
清水「……(何言ってんだ、コイツ)」
三葉「で、サザエさナライズ!まずはシンプルに……」
三葉「いかがです?20代にして生え際が気になり始めたカツオ。彼が、『お前が悪い!』と波平を糾弾しているわけです」
清水「あー、遺伝かぁ……」
三葉「ええ」
清水「まぁ……気持ちはわかる……」
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清水「同じくカツオで……コレはいかがでしょう?」
三葉「ほぉ!つまりこの『姉さん』というのは……」
清水「サザエのことです」
三葉「なるほど……コレ、もしかして『姉弟もの』ですか?じつは異常なほど姉を愛しているカツオだが、理性的で常識人の彼は、自分の感情を素直に認められない。だからこんな物言いになってしまう……」
清水「そうそう!つまりこのタイトルの背後には、『悪いのは姉さんさ!だって……姉さんが魅力的すぎるから……他の女なんて、僕、興味が持てないんだよ!』という熱い想いがあるのです」
三葉「うわぁ……ヤバ……」
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三葉「ではカツオから離れて……こちら、いかがでしょう?」
清水「これは……んー、誰だろう?」
三葉「わかりづらいですかね。主要キャラの中でしゃべれない人といえば……」
清水「あー!イクラちゃんか!」
三葉「そうそう!ノリスケとタイ子の息子にして、タラオのマブダチのあのカレ!」
清水「ふーむ……これはどういうシチュエーションでしょう?」
三葉「つまりね、普段『ハーイ』だの『バブー!』だのしか言わないイクラちゃんですが……じつは彼、とっくに言葉が話せるんですよ」
清水「えっ!」
三葉「しかし彼は、幼くも人の気持ちに寄り添えるヤツでしてね。いや、というか、気を使いすぎる男でして」
清水「ほぉ……」
三葉「周囲の『いつまでもかわいい幼児でいてほしい』という無意識の願望を敏感に感じ取り、その期待に応えている次第」
清水「ははぁ……それはそれは。随分と早熟なんですね」
三葉「『親が頼りないと子どもは早く成長する』と言いますからね。ほら、彼の場合、父親が……ね。そりゃ精神的に早熟でも疑問はありませんよ」
清水「うーむ……」
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清水「少し視点を変えてみましょう」
三葉「承知しました」
清水「『盾の勇者の成り上がり』という作品があります」
※「盾の勇者の成り上がり」:アネコユサギ氏によるラノベ。いわゆる「異世界転生もの」。2019年1月からアニメ放送中(1~6月の予定)。
清水「この作品では……物語早々、主人公がマインという女性に騙されるんですよ。これがとんでもない女で!主人公は金品や装備をすべて盗まれ、さらに『性的暴行された』と誹謗中傷を受ける!」
三葉「ほぉ……」
清水「その結果、すべてを失った主人公!彼は心細くも身一つで冒険せざるを得なくなる!しかも強烈な人間不信に陥り、性格は歪む!……とまぁ、そんなストーリーを一言でいえば……」
三葉「なるほど!」
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清水「同様に、とある有名作のストーリーを一言にまとめてみました。コレ、何だかわかります?」
三葉「んー……あっ、コレはアレだ!カミュの『異邦人』!」
清水「おー、よくわかりましたね!」
三葉「『太陽が眩しかったから』というセリフは有名ですもんね」
※『異邦人』:1942年の作品。上述の「太陽……」と合わせて、出だしの「きょう、ママンが死んだ。」という一文がよく知られている。
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三葉「また少し発想を転換してみて……」
清水「ええ」
三葉「主客を逆転させるのはどうかな、と」
清水「ほぉ……どういう意味です?」
三葉「ここまでは『私が○○なのはどう考えても□□が悪い!』というふうに、自分にとって都合の悪いことを相手のせいにしてきました」
清水「ふむ」
三葉「今度はコレを逆転。すなわち……『□□が○○なのはどう考えても私が悪い!』という具合。『アレもコレもソレもドレも、全部自分のせいにする系主人公』とでも言いますか……」
清水「おー!面白いかも」
三葉「例えばコレ!」
清水「ふむ!」
三葉「手前味噌で恐縮ですが……なかなかよいですよね?」
清水「『お前、一体何したの……?』という感じで、ストーリーが気になりますね!」
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三葉「引き続き、『私が悪い!』式のタイトルでいくと……」
清水「おお!コレもまた、一体全体何があったのか気になるタイトルですねぇ……」
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三葉「『私が悪い!』式のタイトルをもう一丁!」
清水「リストカットですか……なんかドンドン話が深刻になっているような……」
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三葉「では、限界まで話を深刻にしてみましょう!」
清水「『限界』ですか……」
三葉「何事も中途半端はいけません。やっぱり行きつくところまで行かねば!」
清水「うーん……」
三葉「ってことで……コレ!」
三葉「世界の終わり!」
清水「なるほど。そういうことですか!」
三葉「主人公は、世界平和のために戦うヒーローにするか、あるいは……」
清水「ええ。一般人にして、セカイ系っぽいストーリーにするか」
※セカイ系:明確な定義なしに広く使われている言葉。したがって一言でご説明するのは難しいのだが、ごく大雑把にまとめると『エヴァンゲリオン』っぽい作品のこと。つまり……
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・男性主人公は自意識過剰ぎみ。
・「男性主人公やヒロインによる、ごくごく日常的な言動(人間関係に悩んだり、誰かを好きになったり……)」と、「世界の終わり(エイリアンによる襲撃など)」が交互に描かれる。
・世界を救うカギは(なぜか……)男性主人公、もしくはヒロインが握っている。
・「私+ごく身近な人びと」と、「世界」の間のアレコレ(「社会」「中間項」などと呼ばれるもの。例えば国家、警察、軍隊)はほとんど描かれない。
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三葉「昨今このタイプの作品はめっきり減ったようで、『最早セカイ系の時代は終わった』なんて話も聞きますが……このタイトルは悪くないと思うんですよね。上手くやれば、セカイ系復活ののろしになるのでは?……なんて思ったり」
清水「ストーリーを考えてみると……うん!男性主人公が、『世界』と『ヒロイン』を天秤にかけ、そして後者を選ぶ展開ですかね?ゆえに、世界は滅びる」
三葉「ふむ!」
清水「『イリヤの空、UFOの夏』の伊里野や、『最終兵器彼女』のちせが救われるようなイメージかな……」
※『イリヤの空、UFOの夏』、『最終兵器彼女』:セカイ系を代表する作品。男性主人公はただオロオロするばかりで、結局のところヒロインだけが戦い、傷つき、そして死んでいく……というストーリーは、「男性が無責任すぎる!」「女性キャラはまるでママ!カッコよい風に見えて、実際は男性主人公がママに甘えているだけ!クソ!」という具合に激しく批判されることがある。確かに男はクソ野郎ばかり……だが、多くの人の涙腺を崩壊させた傑作であることは疑いようがない。これらの作品から学ぶことは多いと思う。例えば『イリヤの空、UFOの夏』でいえば、伊里野のスーツに描かれた寄せ書き。あの演出にはいろいろと思うところがある(「感動させようと押しつけがましい演出だ……けれど、何?このこみ上げてくる気持ち!」なんて)。ぜひみなさんもご高覧ください★
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清水「あっ!新しいアイデアを思いつきました!」
三葉「ほぉ」
清水「コレ、何だかわかります?」
三葉「んー……あっ!もしやコレは!」
清水「そう!あなたが大好きな『中二病でも恋がしたい!』です」
※『中二病でも恋がしたい!』: 虎虎氏のラノベ。2012年及び2014年に、京都アニメーションによってアニメ化された。本記事ではアニメ版について言及している。なお、本作のヒロイン・小鳥遊六花は重度の中二病患者。ちなみに三葉は彼女の大ファンであり、「小鳥遊六花……それは『萌え』という概念が受肉した存在。彼女は萌えの対象ではない。彼女こそが萌えなのである」とのこと。
三葉「おお!」
清水「そもそも小鳥遊六花は、男性主人公・勇太の影響を受けて中二病の道を歩み始める。したがって、『中二病でも恋がしたい!』というタイトルを勇太の視点から言い換えれば……『お前が中二病なのはどう考えても俺が悪い!』になるだろうと思いまして」
三葉「確かに!……けど、なんかアレですね……」
清水「何です?」
三葉「小鳥遊六花の大ファンとしては許容しがたいものがあるというか……ふつふつと怒りが湧いてくるというか……」
清水「ええっ……なぜ!?」
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清水「それでは同趣旨で、こちらはいかがでしょうか?」
清水「元ネタはみなさんご存知、『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ!」
※『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ: 谷川流氏のラノベ、そして京都アニメーションによるアニメ。我が国の00年代のポップカルチャー界における神。
三葉「なるほど!男性主人公のキョンがタイムスリップして、中学時代のハルヒと出会う。そしてアレコレあるわけですが……考え方によっては、この出会いこそがハルヒをめぐる物語の始まりともいえますね」
清水「そうそう!『涼宮ハルヒの退屈』及び『涼宮ハルヒの消失』で描かれたあのエピソードです。したがってキョンの立場から言えば、『涼宮ハルヒがこじらせたのはどう考えても俺が悪い!』となる次第です」
三葉「んー……理屈は大変よく理解できたのですが……アレですね。やはり腹が立つ!」
清水「えっ……」
三葉「そうだなぁ……先ほどの『中二病』にしろ、この『ハルヒ』にしろ、『俺が悪い!』という表現が鼻につくんでしょうね」
清水「ほぉ。どういう意味ですか?」
三葉「だってこれ、『ヒロインは男性主人公の影響をモロに受けている』ということになりますよね?ヒロインに恋した視聴者・読者が面白くないのは当然では?」
清水「んー……」
三葉「コレっていわば、自分のカノジョがゲーマーで、ゲーム好き同士で意気投合して付き合うに至ったものの……カノジョがゲーム好きになったのは元カレの影響だった。それが明らかになった時の得も言われぬもどかしさと同じですよね」
清水「あー……妙に具体的なご説明をありがとうございます。……そういう意味か……」
三葉「『元カレなんてぶち殺してやりたいけれど、しかしその男がいたからこそ、いまの愛すべきカノジョが存在し得ている……オレはどうしたらよいんだ!』って頭を抱えるヤツですよ」
清水「なるほど……つまり、『□□が○○なのはどう考えても私が悪い』式のタイトルは、確かにインパクトがありますが……」
三葉「使いどころを誤ると読者・視聴者の反感を買うおそれがありそうですね」
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(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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