【続々】発想力を鍛えるぞ!『ワタモテ』を見よ★|「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」
発想力を鍛えるぞ★
『ワタモテ』に学ぼう★最終日!
本記事で取り上げるのは……『ワタモテ』!
「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」という傑作タイトルに敬意を表しつつ……タイトルの一部をいじり、ストーリーを妄想することで発想力を鍛えようという実用的な企画の……最終回(全3回)!
※注:過去記事はこちら(第1回、第2回)。本記事の前にご覧になることをオススメします。
※「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」:谷川ニコ氏によるマンガ。略称は「ワタモテ」。そのリアルすぎる「喪女(モテない女性)っぷり」から海外のネット掲示板で火がつき、大ヒットに至ったことで有名。2013年にアニメ化された。
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#22
三葉「それでは張り切ってまいりましょう!」
清水「承知しました。早速ですが……自信作を!」
三葉「ほぉ!」
三葉「おー!『桑島法子』というのは、声優の桑島さんのことですよね?」
※桑島法子:「くわしま・ほうこ」。声優。様々な作品でご活躍だが、とりわけ三葉が好きなのは『CLANNAD』の坂上智代!初登場シーンからして最高にカッコよかった。
清水「そうそう!」
三葉「ふむ!」
清水「ご存知の方もいらっしゃると思いますが……『桑島法子さんが演じるキャラは高確率で死ぬ!』というジンクスがあります。まぁ、冗談半分のジンクスなんですがね」
三葉「なるほど」
清水「つまりこのタイトルは、それを逆手に取っているのです。桑島さん演じるキャラが『私がいま死にそうなのは……私の声が桑島法子だから!』と叫ぶ。視聴者としては、『あっ、あのジンクスのことか!』とピンときて思わず笑ってしまう……という寸法です」
三葉「『内輪ネタ』というか『楽屋オチ』というか、そういう類の笑いですね」
清水「そうそう。そこがちょっとアレかなとは思いますが……」
三葉「いやいや。いまの時代、世間一般に広くウケようとすると、全員からそっぽを向かれることになりかねません。『わかる人にだけわかればよい』くらいのスタンスでちょうどよいと思いますよ」
清水「ふむ」
三葉「特にこういう声優さんネタは、大好きな人が一定数いますからね。私自身も含めて、マニアやオタクというのは『解説したい欲』、『<オレ、知ってるぜ>と言いたい欲』が……強い!」
清水「確かに」
三葉「したがって、こんなユニークなタイトルを見かけたら黙っていられませんよ!条件反射的にSNSで発信してしまう。そして広く世の中に知られていく……私はコレ、そういう意味で非常に引きの強いタイトルだと思いました!」
#23
清水「では類似作をもう1つ……コチラ!」
三葉「『石田彰』というのは、声優の石田さんですよね?」
※石田彰:「いしだ・あきら」。声優。様々な作品でご活躍だが、特に三葉が好きなのは『エヴァンゲリオン』の渚カヲル!そして、『銀魂』の桂小太郎(っていうかカツラップ)!
清水「おっしゃる通りです。そしてコレは、『石田さんが演じるキャラは、一見善人に見えてもじつは黒幕!』という有名なジンクスを元ネタにしています」
三葉「なるほどねぇ!先ほどのタイトル同様、『メタフィクション』っぽい感じがよい!昨今の有名作でいえば、『ポプテピピック』のファン層が強く反応しそうですね」
清水「あー、確かに」
三葉「また、このタイトルの場合、マンガやラノベ、あるいはアニメというよりも……ドラマCDですかね!企画ものとして、第1弾が『私に死亡フラグが立ったのはどう考えても桑島法子が悪い!』、第2弾が『俺が黒幕なのはどう考えても石田彰が悪い!』。以降、様々な声優さんにも登場していただく……うーむ!面白そうだ!」
#24
清水「では、石田彰さんでもう1つ!」
三葉「ほぉ!」
清水「上述のものよりもさらに変則的なタイトルでして……コチラ!」
三葉「えーと……何だって?」
清水「つまり、石田さん演じるキャラは被害者。このタイトルは犯人のセリフで、被害者の墓に向かって『確かにオレがお前を殺したけど、だってお前の声……石田さんなんだもん!絶対黒幕じゃん!正当防衛!!だよ!!』と自身の正当性を訴えているのです」
三葉「なるほど……コレはユニーク!」
#25
三葉「さて、ここで少し発想を転換してみましょう」
清水「ふむ」
三葉「『ほのめかす系』とでもいいますか……」
清水「ほぉ」
三葉「コチラです!」
清水「『古泉一樹』ということは……コレは『涼宮ハルヒの憂鬱』ですね」
※『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ: 谷川流氏のラノベ、そして京都アニメーションによるアニメ。我が国の00年代のポップカルチャー界における神。
清水「つまり、コレは……ああ、『古キョン』か!」
※「古キョン」:「古×キョン」とも。『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズの主要キャラである古泉一樹とキョンのカップリングのこと。
※「カップリング」:主に同人創作の領域で使われる言葉で、「キャラ同士の恋愛関係」を意味する。なお、基本的には同性キャラ同士に用いる。また、「キャラA・キャラB」と表記した場合には、前者が「攻め」、後者が「受け」となる。つまり上述の「古キョン」の場合、「古泉攻め/キョン受け」となる。
※「攻め」、「受け」:カップリングの内容を説明する言葉で、前者は男性側、後者は女性側を指す。元々は性行為時のポジションを意味していたが、現在は広義に使用している人が多い印象。すなわち「『攻め』は積極的にアプローチする側。『受け』は恥ずかしそうに従う側」という具合。
※さらに補足:上述の「古キョン」を描いた作品で、昨今最も有名なのが以下のマンガ。「古キョン」と聞いてこのマンガを想起する人も少なくないと思われる。ご一読をオススメします★
三葉「『古キョン』を知らない方からすれば、『<こんな風>ってどんな風だよ?』と意味不明なタイトルでしょうが……」
清水「ええ、知っている人からすると、『あっ……(キョンが陥落したのか)』とピンときますね」
三葉「そうそう!この意味深な感じが、マニア層・オタク層の『発信したい欲』に火を点けると思うんですよね」
清水「確かにそれはあるかも!」
#26
三葉「またまたガラリと方向を転換しまして」
清水「ふむ」
三葉「こんなのはいかがでしょう?」
清水「どれどれ」
清水「えーと、つまり主役が……トラック!?」
三葉「そう!」
清水「ははぁ……コレは変わり種ですねぇ……」
三葉「『異世界転生もの』といえば、主人公が物語冒頭で死に、そして異世界に転生するのが『お約束』になっています」
清水「ふむ」
三葉「とりわけ主人公の死因として多く見られるのが交通事故死。中でもトラックに轢かれるのが最頻パターン」
※注:このあたりの事情については、前々回(第1回)の記事でも言及しています。合わせてご参照ください。
清水「確かに」
三葉「無論これはこれで悪くないのですが……毎回毎回トラックにぶつかった人が転生していては、マンネリのそしりは免れ得ないでしょう。たまにはトラックの方が転生したってよいと思うのです!」
清水「つまり、一見主人公ふうの人は死んでそのまま。一方、トラックは異世界に転生する、と」
三葉「そう!」
清水「なるほど……意識を持ったトラックが異世界で大活躍するわけか。様々な人やモノを運搬し、そこから物語が始まるんでしょうねぇ」
三葉「いわば、ロジスティックス・物流・兵站に注目した『異世界転生もの』というわけです!」
清水「トラックに相乗りした人びとの人間模様を描くのもよいかもしれませんね」
三葉「おー!異世界転生版『駅馬車』になるかも!」
※駅馬車:ジョン・フォード監督作品。1939年の映画。不朽の名作として知られる。荒野を走る馬車を舞台に、乗り込んでくる人、あるいは途中で下車する人の抱える事情や、彼らの人間模様を描く。後に多くのフォロワーを生んだことでも有名。例えばわが国には、高倉健が主演した『網走番外地 北海篇』(1965年)がある。
#27
三葉「さて、さらにまた視点を換えまして……」
清水「伺いましょう」
三葉「『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』というタイトルは、自分にとって都合の悪いこと(「モテない」)を人のせいにする『責任転嫁っぷり』がおもしろいわけですが……」
清水「ええ」
三葉「これを『私が○○なのはどう考えても私が悪い!』にしてみましょう。すなわち……」
清水「コレは……ふむ!」
三葉「いかがです?」
清水「素直!」
三葉「やっぱり素直が1番!」
清水「いやぁ、素直で好感が持てますね!」
三葉「でしょ!まずは現実を直視して、ダメな自分を認めないとね。すべてはそこからですよ」
清水「昨今のラノベでは、特に努力することなく、なぜか物語冒頭からぶっちぎりの能力・スキルを持っている主人公が目立ちますが……」
三葉「ええ」
清水「本作は一味違う展開が期待できそうですね。主人公が自分の足で一歩一歩前に進んでいく物語というか……」
三葉「どことなく『スティール・ボール・ラン』を彷彿とさせますね」
※『スティール・ボール・ラン』:正式には『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』。従来の『ジョジョ』シリーズと比べて、主人公の成長をじっくり描いているのが特徴(本作以前の『ジョジョ』の主人公は、特に精神面において、成長余地がほとんどないほど完成された状態で登場する)。なお第2話には、「この『物語』は/ぼくが歩き出す物語だ/肉体が……/……という意味でなく/青春から大人という意味で……」と記されている。
#28
三葉「さて、最後に……また別のパターンをご覧いただきましょう」
清水「ほぉ!」
三葉「すなわち……」
清水「辛辣ー!」
三葉「コレは『お前が○○なのはどう考えてもお前が悪い!』式のタイトルといえるでしょう」
清水「……辛辣すぎません?」
三葉「新鮮でしょ?」
清水「いや、確かにそうですが……正論ってのは時として人の心を殺すものですからね……」
#29
三葉「いまと同じパターンで……」
清水「再び辛辣ー!」
三葉「ふむ」
清水「コレは電車に飛び込みたくなるなぁ!」
三葉「まあまあ、そう言わずにストーリーを考えてみましょうよ」
清水「んー……『育成もの』とか『プロデュースもの』なんて呼ばれるタイプの作品ですかね?」
三葉「ほぉ!」
清水「上述の『お前がモテないのはどう考えてもお前が悪い!』は、『兄妹もの』でしょうね。モテモテの兄が、女子力ゼロでダメダメな妹を育成する話」
三葉「なるほど!」
清水「一方、『お前がキモオタなのはどう考えてもお前が悪い!』の方は……」
三葉「コレもまた『兄妹もの』でしょ!」
清水「ほぉ……できる姉とダメな弟による『姉弟もの』ではなくて?」
三葉「無論それも悪くはありませんが……一般的には、男ってヤツは妹が大好きなんですよ」
清水「あー、なるほど」
三葉「特に、妹に叱られたい、庇護されたいという願望を持つ男はじつに多い!」
清水「歪んでますねぇ……」
三葉「確かに『歪んでいる』と言えますが、それを言っちゃあおしまいでね、歪んでいない男がどれほどいるかって話ですよ」
清水「うーん……まぁ男性に限らず、歪みのない人間なんて幻想の中にしか存在しないのかもしれませんね」
三葉「歪んだってよいじゃないか!人間だもの!」
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「超タイトル式発想術 ~『ワタモテ』編」(全3回)は以上で終了です。ご覧いただきありがとうございました★
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(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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