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「間違ったスパルタ式指導で仲間を傷つけてしまったキャラA。Aは自分の過ちに気づき、激しく落ち込む→しかししばらく後、Aは再び仲間を𠮟咤できるようになった」という展開を通じて、Aがトラウマを乗り越えたこと、「もしまた私が間違えても、いまの仲間ならそれを指摘し訂正してくれるだろう」という仲間への信頼が芽生えていることを暗示する ~アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の場合

第3話のせつ菜「スクールアイドルが大好きなんでしょ!?やりたいんでしょ!?こんなパフォーマンスではファンの皆に大好きな気持ちは届きませんよ!」

第10話のせつ菜「一体何をしているんですか!おふざけにも程があります!!」

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」(第3、10話)




◆概要

【「間違ったスパルタ式指導で仲間を傷つけてしまったキャラA。Aは自分の過ちに気づき、激しく落ち込む→しかししばらく後、Aは再び仲間を𠮟咤できるようになった」という展開を通じて、Aがトラウマを乗り越えたこと、「もしまた私が間違えても、いまの仲間ならそれを指摘し訂正してくれるだろう」という仲間への信頼が芽生えていることを暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」(第3-10話)

▶1

本作の主要キャラの1人・優木せつ菜(高2女子)。

彼女は、スクールアイドル同好会の部長――だった


せつ菜は情熱の人である。

・Step1:特に、大好きなスクールアイドルのこととなると歯止めが利かない

・Step2:ライブを前に、トレーニングに力が入る。同好会メンバーへの指導も熱を帯びる。ついついスパルタ式になっていく。せつ菜は𠮟咤した「スクールアイドルが大好きなんでしょ!?やりたいんでしょ!?こんなパフォーマンスではファンの皆に大好きな気持ちは届きませんよ!」

・Step3:ところで――「アイドル」と一口に言っても様々なスタイルがある。例えば「かわいいアイドル」「格好いいアイドル」「皆から愛されるアイドル」「皆を元気にするアイドル」などなど。どれが正解というものではない。各人が理想のスタイルを追求すればいい。だがせつ菜は、いつの間にやら自分好みのスタイルを同好会メンバーに押しつけるようになっていた。

・Step4:かくして、同好会メンバーの1人がブチ切れた「私がやりたいのはこんなアイドルではありません!!」

・Step5:その言葉に、せつ菜はハッとする。ショックを受ける。……嗚呼、私は自分の<大好き>を追求するあまり、皆の<大好き>を否定してしまっていた!私にはスクールアイドルをやる資格はない。私は皆にとって害悪だ。私なんていない方がいい!

・Step6:というわけで、せつ菜はスクールアイドル部を去った


しかしその後いろいろあって、

・Step7:スクールアイドル部に復帰したせつ菜

・Step8:今後は皆で協力して、「各人の<大好き>を追求できる同好会 = 様々なスタイルのスクールアイドルを許容する同好会」を作り上げていくことになった。


そして第10話、夏休み合宿でのことだ。

・Step9:「ヤッホー、合宿だ!」とはしゃぐ同好会メンバーたち。夜遅くまで肝試しをしたり、メイクで遊んだり……。

・Step10せつ菜は、浮かれる面々に一喝した「一体何をしているんですか!おふざけにも程があります!!」。


▶2

せつ菜はかつて、情熱のあまり皆に自分のスタイルを押しつけてしまっていた。己の過ちに気づいた時、彼女は頭をガツンと殴られたような衝撃を受けたに違いない。

嗚呼、何ということだ!

私は最低だ!

せつ菜にとってはトラウマになる出来事だったと言えるだろう。


したがって、作中では明言されていないものの――同好会復帰後も彼女は皆に厳しいことを言えなくなってしまったのではないかと思う。同好会メンバーに対して「それは違うんじゃないかな?」「もっとこうした方がいいんじゃないかな?」と思うことがあっても、「……あっ、いけない!私はまた自分の考えを押しつけようとしている」と思いとどまることがあったと思うのだ。

その証拠に、第4話以降、せつ菜が皆を叱咤するシーンは長らく登場しない


ところが――そう、第10話(上記Step9-10)。せつ菜が皆を叱るシーンが久々に描かれた。第3話以降、じつに7話ぶりである。

このシーンを見て、「よかったなぁ、せつ菜」と嬉しくなった鑑賞者は少なくないと思う

だってこれはせつ菜がトラウマを乗り越えたこと、「もしも私がまた暴走してしまっても、いまの私にはそれを指摘し訂正してくれる仲間がいる!」と同好会メンバーを信頼していることの証なのだから。


つまり、【「間違ったスパルタ式指導で仲間を傷つけてしまったキャラA。Aは自分の過ちに気づき、激しく落ち込む→しかししばらく後、Aは再び仲間を𠮟咤できるようになった」という展開を通じて、Aがトラウマを乗り越えたこと、「もしまた私が間違えても、いまの仲間ならそれを指摘し訂正してくれるだろう」という仲間への信頼が芽生えていることを暗示する】というテクニックである。


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