京都を舞台にしたラノベを執筆するあなたのためのパーフェクガイド★|「国内の地名」が付くタイトルの研究(7)
3秒でわかる本記事の要点
・「タイトルに『京都』が付くラノベ」(54冊)の歴史やトレンドを解明する。
概要
本記事は、1975~2018年の44年間に刊行されたラノベの内、「国内の地名」が付くタイトルをピックアップ★徹底分析する特集「『国内の地名』が付くタイトルの研究」の……第7回である!
※注:「『国内の地名』が付くタイトル」とは、例えば以下のような作品を指します。
<特集全体の目次>
第1回:タイトルに「都道府県」が付く作品と、「妹」が付く作品、どちらが多いと思う?
第3回:「北海道」ラノベは(大体)Eat or Fight !!
第4回:「全47作★全ての都道府県を網羅したご当地ラノベシリーズ」っていかがでしょう?
第5回:ニンジャ v.s 絶世のブス……あなたはどちらがお好み?
第7回(本記事):京都を舞台にしたラノベを執筆するあなたのためのパーフェクガイド★
第8回:「奈良」ラノベを志すあなたには、「京都」ラノベが参考になるかも
第9回:【総まとめ】「タイトルに『国内の地名』が付くラノベ」のススメ
第1回からご覧になることをオススメします★
「京都」タイトルに迫る★
三葉「前回は『岐阜・大阪』が付くタイトルについてご説明しましたが……」
清水「はい」
三葉「今回は……『京都』!『タイトルに<京都>が付くラノベ』を取り上げます」
清水「承知しました」
三葉「ちなみに、『京都』タイトルは54冊あり、これは『東京』(222冊)に次いで2番目に多い刊行数です」
清水「さすがは古の都ですね!」
三葉「ただ、『54冊』と言っても……」
清水「ええ」
三葉「その内20冊は、とある作品が占めているんですよ」
「京都探偵局」シリーズの圧倒的存在感★
三葉「以下のグラフをご覧ください」
三葉「54冊中20冊……すなわち、およそ4割が『京都探偵局』シリーズ!」
清水「おー!すごい存在感ですね」
三葉「もう少し詳しくご説明すると……」
三葉「『<京都探偵局>シリーズが20冊あり、全体の4割近くを占めている』というのは既にご説明した通りですが……」
清水「ええ」
三葉「もう1つご注目いただきたいのは……『2冊以上のシリーズもの』が28冊、つまり全体の半数程度しかないということです!」
清水「『シリーズものが半数程度』というのは……少ないんですか?」
三葉「『東京』タイトルと比べてみましょう」
三葉「『京都』タイトルでは、『<シリーズもの>の占める割合が少ない』ことがおわかりいただけるかと思います」
清水「なるほど。圧倒的に少ない」
三葉「先日、『東京』タイトルについてご説明する中で、
・「東京S黄尾探偵団」シリーズ(全28冊)
・「東京ANGEL」シリーズ(全25冊)
・「東京レイヴンズ」シリーズ(既刊20冊)
・「東京皇帝☆北条恋歌」シリーズ(全13冊)
・「東京タブロイド」シリーズ(全12冊)
……といった長編シリーズをいくつかご紹介しました」
清水「ふむ」
三葉「ところが『京都』には……『京都探偵局』しか長編シリーズがない!」
清水「なるほど。『京都探偵局』の一強というわけですね」
三葉「まさに」
清水「ふむ。……そういえば」
三葉「ええ」
清水「そもそも『京都探偵局』ってのはどんな物語なんです?『推理もの』ですか?」
三葉「確かに『推理もの』ですが……」
清水「ふむ」
三葉「前回、『幽霊事件』という長編シリーズをご紹介したことを覚えているでしょうか?」
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ざっくり復習★『幽霊事件』シリーズ
女子大生の水谷麻衣子が、恋人の千尋や親友の美奈子とともに殺人事件に挑む推理もの。
全44冊で2001年に完結。シリーズの一部がテレビドラマ化されている。
なお、『ガンパレード・マーチ』シリーズ、『BOYSサイキック・アクション』シリーズとともに、『わが国のラノベ界を代表する<タイトルに地名が付くシリーズ>』である。
詳細は以下の地図をご覧ください。
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清水「ふむふむ」
三葉「じつは『京都探偵局』シリーズは……この『幽霊探偵』シリーズの続編なんですよ」
清水「ほぉ!」
三葉「『幽霊事件』シリーズの主人公は、女子大生・麻衣子でしたが……彼女が卒業し、探偵局を立ち上げる……すなわち、これが『京都探偵局』です。前シリーズに引き続き、恋人の千尋や親友の美奈子も登場します」
清水「なるほど」
三葉「『幽霊事件』+『京都探偵局』シリーズは、まさに『わが国のラノベ界を代表する<タイトルに地名が付くシリーズ>』といえるでしょう」
「京都」タイトルのルネッサンス★
三葉「さて、ここからは少し話題を変えまして……」
清水「ええ」
三葉「『<京都>タイトルの刊行数の推移』(タイトルに『京都』が付くラノベが、毎年何冊刊行されているか?)を見てみましょう。これがなかなか興味深いことになっているんですよ」
清水「ほぉ」
三葉「こちらです!」
三葉「2000年以前、『年1冊刊行されるかどうか』の『空白期』が続いていました。それが……01年から急増!」
清水「ふむ」
三葉「しかし、直後に急落!」
清水「ふむふむ」
三葉「そして14年に再登場し……再び急増!」
清水「グーッと上向いていますね」
三葉「とまぁ、随分アップダウンが激しいんですよ」
清水「ふーむ。何があったんでしょうね」
三葉「まず、01~05年に刊行数が増加した理由……これは明確です」
清水「ほぉ」
三葉「この時期に刊行された『京都』タイトルは22冊ありますが、その内19冊が『京都探偵局』シリーズ!」
清水「圧倒的!」
三葉「そもそも『京都探偵局』シリーズは01年に第1作が登場し、06年に完結します。つまりこの『急増期』というのは、『京都』タイトル全体が盛り上がっていたのではなく、『京都探偵局』シリーズがたった1作で底上げしていたというわけです」
清水「なるほど」
三葉「こう考えると、06年以降の『暗黒時代』の原因も明確でしょう」
清水「つまり、『京都探偵局』シリーズが完結したからですね?」
三葉「おっしゃる通りです」
清水「ふむふむ」
三葉「でね」
清水「ええ」
三葉「今回特にご注目いただきたいのは、14年から始まる『復興期』です。まずは、14年以降に刊行された『京都』タイトルの一覧を見てみましょう……こちら!」
清水「ふむふむ……あー、なるほど!01~05年の『急増期』が『京都探偵局』シリーズ1作の底上げであったのに対して……」
三葉「そうなんですよ!14年以降は特定のシリーズに依存しているわけではない!」
清水「ふむ」
三葉「これぞまさに、『<京都>タイトルが盛り上がりつつある(かも)』と言えるのではないかと」
清水「うーむ!確かに!」
三葉「以上、『京都』タイトルの歴史でした。年表に整理しておきましたので、よろしければご参照ください★」
「京都」タイトルのトレンドをチェック★
三葉「さて、2014年から『<京都>タイトルの波が来ている(かも)!』と申し上げましたが……」
清水「ええ」
三葉「続いて、昨今の『京都』タイトルのトレンドを見てみましょう」
清水「ふむ」
三葉「トレンドに乗るにせよ、敢えて外れるにせよ……トレンドを押さえておくことは重要です」
清水「確かに」
三葉「そこで、14年以降に刊行された21冊の『京都』タイトルを整理してみました……こちら!」
※本記事最下に、上図についての補足を掲載しています。ご参照ください。
清水「14年以降に刊行された『タイトルに<京都>が付くラノベ』は、
・妖怪、神
・料理、カフェ
・骨董品
・ミステリ、謎
……という4つの要素に整理できるのではないかということですね」
三葉「まさに」
清水「ふむ」
三葉「例えば、『京都あやかし料亭のまかない御飯』のストーリーをざっくり見てみると……『幼馴染とともに、あやかしたちに料理をふるまう料亭で働くことになった主人公・遥香の人情物語』です。まさに『妖怪、神』カテゴリと、『料理、カフェ』カテゴリにまたがった作品と言えるでしょう」
清水「ふむふむ」
三葉「また、『京都左京区がらくた日和 謎眠る古道具屋の凸凹探偵譚』は……『女子高生・雛子が、風変わりな骨董屋の店主とともに様々な謎を解決するミステリ』です。『骨董品』カテゴリと、『ミステリ、謎』カテゴリにまたがる作品だということがご理解いただけるかと思います」
清水「なるほど」
三葉「以上、昨今の『京都』タイトルのトレンドをご紹介しました。今後『タイトルに<京都>が付くラノベ』を執筆する際に、上記ご参照いただけますと幸いです★」
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「『京都』タイトルの類型」図についての補足
2014年~18年に刊行された「タイトルに『京都』が付くラノベ」の内、
・「ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 」
・「人なき世界を、魔女と京都へ。」
・「京都の心臓 鴨川からはじまる恋と冒険」
……を除く全作品をマッピングしている。
上記3作品は、いずれにも該当しないと思われるため除外した。
なお、「京都の心臓 鴨川からはじまる恋と冒険」は「妖怪、神」カテゴリに該当する作品ともいえるが、同カテゴリに属する他の作品とはだいぶテイストが異なるため、含めなかった。
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)