どうすれば、キャラの「出オチ」を防げるのか?|『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック
名作アニメを研究して、創作に活かそう!
本記事では、「妹さえいればいい。」に【キャラの「出オチ」を防ぐ方法】を学びます。
※「妹さえいればいい。」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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「変態ドSキャラ」をどう描くべきか?
「変態ドSキャラ」っているじゃないですか。
相手を辱め、その恥ずかしそうな表情やしぐさを見るのが大好きというキャラ。
「荒川アンダーザブリッジ」のマリア、「ガヴリールドロップアウト」のラフィエルあたりがわかりやすい例でしょうか。
ああいうキャラって……いいですよね!1人いるだけで物語の幅が広がります。
しかし、なかなかどうして取扱いが難しいという側面もある。というのも、変態ドSキャラは「出オチ」になりやすいですからね。
初登場時こそインパクト大、物語が盛り上がりますが、2回目以降は「あー、またやってるな」「はいはい、今日もその流れね」というマンネリ感が漂ってしまう。初回ほどの驚きはなく、「あのキャラ、初登場シーンが最大の見どころだったよね」ということになりかねない。
変態ドSキャラの「鮮度」を保つには、どうすればよいのでしょうか?
大野アシュリーの初登場回に注目!
本記事で取り上げるのは、「妹さえいればいい。」の変態ドSキャラ・大野アシュリー。
※大野アシュリー:出版関係に強い税理士。女性。
彼女が初登場する第4話のBパートは、注目に値します。
というのも、そこでは、彼女の「ドSっぷり」が6段階に分けて描かれているのです。
そして段階を追ってドSっぷりが明かされていくため、アシュリーには出オチ感がない!
詳しくご説明しましょう。
シーン①
第4話のBパートでは、伊月の確定申告をサポートするために、アシュリーが伊月の部屋にやってきます。
※伊月:主人公。男性、20歳。ラノベ作家。
伊月は、初対面のアシュリーにギョッとする。彼女は、税理士とは思えぬ外見(幼い容貌、金髪碧眼、ロリータ服)をしていたのです。
アシュリーは伊月の部屋に上がり、仕事を開始します。まずは、ざっと資料をチェックしたり、簡単な質問を投げかけたり。
外見こそ奇抜ではありますが、この段階では、アシュリーの言動に違和感はありません。税理士として、ごく普通に仕事をしているように見える。
ところが……ここでご注目いただきたいのは、伊月の態度です。
椅子に座って資料をチェックするアシュリーに対して、なぜか気まずそうに突っ立っている伊月。アシュリーがそれに気づいて声をかける「あら、遠慮なく座っていいわよ」。すると伊月は……なぜか、かしこまって正座した。
これです!
ここは伊月の部屋です。そして、伊月はアシュリーの雇い主。当然ながら伊月の方が立場は上。それなのに、彼はなぜかビクビク、オドオドしているのです。
「おっ、何事だ?」と興味をかきたてられるシーンですね。
後から振り返って考えてみると、おそらく伊月は、アシュリーの未だ明かされぬ本性(ドS!)を無意識の内に察知し、そわそわしていたのでしょう。
シーン②
アシュリーが、伊月にいくつか質問を投げかけます「住民票はこの部屋?」「車は持っているの?」。
続けて、「去年まではどんなものを経費扱いにしていたの?」と問うた。
伊月は、必要最低限のもののみ申告していたと回答。
それに対してアシュリーが言った「そう、いい子なのね。そんないい子ちゃんを邪悪に染めるのが、私、大好きなの」。
伊月が戸惑う「……えっ?」。
アシュリーはニッコリと微笑む「何でもないわ」。
この短いやりとりを通じて、多くの鑑賞者が察するでしょう「こいつ、ただの税理士ではない!間違いなく……ドSキャラだ!」。
さぁ、どんなドSっぷりを見せてくれるのか?
俄然面白くなってきました!
シーン③
続いて、アシュリーのヒアリングが始まります。
まずは、フィギュアについて。
※補足:伊月は「妹/妹もの作品」を愛しており、彼の部屋には多くの「妹もの作品」(小説、フィギュア、エロゲームなど)が並んでいる。
棚に飾られたフィギュアを見て、アシュリーが言った「このフィギュアは見たことがある気がするわ」「このいかがわしい姿の幼女は何?」。
伊月が熱く語る「『俺妹』のメインヒロインで、主人公の妹の高坂桐乃神です!税理士の先生にまで知られているとは、さすが桐乃神!」。
話を聞いたアシュリーが頷いた「つまりこのフィギュアたちは、『妹もの作品』を書くための資料ってわけね。経費扱いにしましょう」。
「経費」という言葉に伊月はショックを受ける。そして猛反論「ダメだ!この子たちは純粋にオレが愛でるために買ったものだ!『資料』なんて無粋なカテゴリに入れたくない!」「妹を穢すことはできない……!」。
伊月の「妹への愛」が炸裂したわけですね。
しかし、アシュリーはあくまでも冷静に、そして論理的に「経費にすれば、返ってきたお金でまた新しい妹フィギュアが買えるわよ」。
伊月の心が揺れる。かくして言った「……このフィギュアたちは正真正銘の資料です。よろしくお願いします!」。
アシュリーは満足げに微笑んだ「ふふふっ。任せておきなさい」。
その笑顔には、嗜虐的なものが感じられる。そう、彼女は伊月を「屈服」させたことに喜びを感じているのです……!
シーン④
次にアシュリーは、エロゲームについて質問を始めます。
ズラリと棚に並んだゲームを見て、彼女が言った「ふーん、ゲームもいろいろあるのね。この『お兄ちゃんのことが大好きな妹は、お兄ちゃんのパンツをかぶって毎日○○しちゃうの』というのはどんなゲームなのかしら?」。
伊月は赤面し、言葉を詰まらせる。さすがの彼も恥ずかしいようです。
伊月「おっ、お兄ちゃんのことが大好きな妹が、お兄ちゃんのパンツをかぶって毎日○○しちゃうゲームです……」。
アシュリーは引き続き冷静に問う「『ダメ。兄妹なのにそんなこと!禁断の関係にハマっていく美しき妹妻』というのは?」。
伊月を頬を紅潮させて「禁断の関係にハマっていく美しき妹妻のゲームです!」。
アシュリー「『妹妻』というのは何?」。
伊月は最早ヤケクソな感じで「妹で妻ということです!」。
アシュリーは、じっと伊月を見つめて一言「ふーん。複雑そうな概念ね」。
アシュリーは常時平静、ニコリともしません。しかし内心では、赤面した伊月を見て舌なめずりしているに違いない。そう、これは間違いなく「言葉攻め」です。
シーン⑤
続いて、話はソシャゲに移ります。
伊月が問う「もしかして、ソシャゲのアイテム購入に使ったお金も経費になるんですか?」。
アシュリー「そのゲームは、あなたの作品に活かされているのかしら?」。
伊月「いえ、まったく」。
アシュリー「だったら活かしなさいな」。
そしてアシュリーが提案する。曰く、主人公がソシャゲにハマっていることにすればいい。
伊月はひっくり返った「オレが書いているのはファンタジーですよ!そんなことをしたら作品が台なしになる!」。
しかしアシュリーは気にしない「だったら、悪役がソシャゲにハマっていることにすれば?」。
伊月が頭を抱える。
要するにこれ、アシュリーが伊月に意地悪をしているシーンですね。
彼女は相変わらずニコリともしませんが、心の中では、伊月が動揺し、困り果てる姿を見てニヤニヤしているに違いない。
シーン⑥
以上でアシュリーのヒアリングは終了。
話は数日後に飛びます。伊月の部屋で、伊月と春斗(伊月の作家仲間)が仕事をしている。
すると……アシュリーがやってきました。そして、ついに本性が明かされる!
すなわち、アシュリーが春斗に向かって嬉しそうに言った「あら、春斗くん。去年のあなたとの税金対策、とても楽しかったわ。伊月くんの時もそれなりに楽しめたけれど、やっぱりあなたには負けるわ」。
春斗が動揺する。
アシュリーはさらに嬉しそうに「春斗くんの場合は量がすごかったのよねぇ。エッチなゲームだけで、100本くらいあったかしら?」。
アシュリーは一段と饒舌になって「うふっ。春斗くんはメイドさんが好きなのよねぇ。特に控えめな性格で、常に自分を陰からそっと支えてくれるような従順な女の子が」
春斗は頬を紅潮させ、言葉を失います。
アシュリーの言葉攻めは止まりません「そんな風に献身的に自分を支えてくれる女の子に、己の欲望をぶつけて白く汚すのが好きなのよね?ふふっ」。
アシュリーは自らのスマホを取り出して、読み上げた「『白濁の緊縛巨乳メイド4』『お尻に下さいご主人様。無垢なる雌奴隷純愛編』『○○させちゃうぞ(限定版には、女性キャラの立ち絵がメイド服になる特別ご奉仕パッチのダウンロードコード付き)』」
春斗がひっくり返る。
アシュリーはニヤニヤ笑いながら「あなたが持っているエッチなゲームの内容を、日が暮れるまでとっぷりねっとり聞かせてもらったあの日は本当に最高だったわぁ♡」。
春斗はがっくりうなだれる。そして、「もう2度あんな思いはしたくないので、今後、アシュリーには仕事を頼みたくない」とこぼした。
それに対してアシュリーが囁いた「私がメイド服を着てあげると言ってもダメかしら?」。
春斗が目を見開く「……えっ!?」。
アシュリーはグッと顔を近づけて「何ならエッチなご奉仕もしてあげましょうか?」。
春斗が妄想を拡げる。
すかさずアシュリーが「あなたいま、私のいやらしい姿を想像したわね?メイド服をはだけた私が、小さな口で貴方の○○を咥えている痴態を頭の中で想像したのでしょう?真面目なあなたはそれに罪悪感を覚えながらも、小説家の豊かな想像力はイメージすることを止められない!」
まとめ
以上、アシュリーが初登場する第4話のBパートを詳しくご説明してきました。
アシュリーのドSっぷりが6段階に分けて描かれていることをご理解いただけたと思います。
もしもアシュリーが初っ端からドS全開だったら、つまり「シーン⑥」から始まっていたら、彼女は出オチキャラになっていたでしょう。
ところが実際には、彼女のドSっぷりは段階を追って明かされた。
これがポイントです。
段階を追って本性を明らかにすることで、キャラの「鮮度」を保つテクニック……みなさんも試してみてくださいねー!!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)