相手の言葉の「含意・ニュアンス」をわざと無視することで、まともに取り合う気がないと示唆する ~映画「アナライズ・ユー」の場合
◆概要
【相手の言葉の「含意・ニュアンス」をわざと無視することで、まともに取り合う気がないと示唆する】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「アナライズ・ユー」
▶1
本作の主人公は、ベン(50歳頃の男性)。
彼は善良な一般市民である。
ところがひょんなことから、
・Step1:ベンは、ポール(巨大マフィアの大ボス)と縁ができてしまった。
・Step2:それだけではない。ポールを自宅に泊めてやることになった。
滞在初日の夜、
・Step3:客間からものすごい喘ぎ声が聞こえてきた。
・Step4:売春婦と思しき女性を無断で連れ込み、ポールが性交に及んでいるようだ。
・Step5:ベンは頭を抱えた。冗談じゃないぞ!うちには子どもだっているんだ!教育に悪すぎる!
というわけで、
・Step6:ベンは客間のドアをノックした「ポール、話があるんだ。ドアを開けてくれ」。
・Step7:間もなくドアが開き、ポールが顔を出した「何だ?」。
・Step8:ベンが言った「うちには17歳の息子がいるんだ……」。――「教育に悪いから声を抑えてくれ」という意味だろう。
・Step9:ところがポールは、部屋の中をチラッと見てから「貸してやろうか?」。
・Step10:ベンは悲鳴を上げた「そういうことじゃない!」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「うちには17歳の息子がいるんだ……」というベンのセリフ、そして「貸してやろうか?」というポールのセリフである。
上述の通り、「教育に悪いから声を抑えてくれ」とベンが頼んでいるのは明らかだ。
無論、ポールだってそんなことはわかっている。
しかし彼は「(お前の息子にあの女を)貸してやろうか?」とボケてみせた。
なぜか?
まともに取り合う気がないと示唆するためだろう。彼は言外に「うるせぇな。いまいいところなんだから邪魔すんなよ」と言っているのだ。
要するに【相手の言葉の「含意・ニュアンス」をわざと無視することで、まともに取り合う気がないと示唆する】という技法である。