
【21年秋アニメ研究】「世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する」の分析【1:鑑賞者の体験の分析】
※本記事では、2021年秋アニメ「世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する」の第1話を分析します。
本記事全体のまとめ
※本記事全体をレポート形式にまとめました。本記事後半の文章と同内容ですが、レポート形式の方が見やすいと思います。お勧めです!
鑑賞者の体験の分析
本話を鑑賞した複数のアニメファンの感想を整理・類型化した。本話が鑑賞者に対してどのような<体験>を提供したのかを把握するのが目的である。
▶構成(前世パートがしっかり描かれている)
・本話の第2幕前半~第3幕には、主人公の前世が描かれている。つまり、第1話のおよそ4分の3が前世パート。これはなかなか珍しい構成である。
・というのも、異世界転生ものでは転生後こそがメイン。ゆえに前世パートは手短に、荒っぽく描写されることが多いのだ。前世パートがまったく描かれない作品すら存在する。
▶構成(前世パートが面白い)
・本話は、前世パートが面白い。「もう少し前世パートが続いてもいいのになぁ」「いっそ転生しなくてもいいのでは?」なんて思った鑑賞者も少なくないと思うが……これ、考えてみればすごいことだ!
・だって前述の通り、異世界転生ものでは転生してからが本番なのだ。ゆえに多くの鑑賞者は「いつ転生するの?」「まだなの?」と、前世パートには厳しい目を向けている。そんな厳しい目で見てもなお面白い。前世パートがいかによくできているかわかるだろう。
▶構成(前世パートが面白いから期待が膨らむ)
・繰り返し申し上げるが、異世界転生ものでは転生してからが本番だ。前世パートはおまけに過ぎない。ところが、そのおまけが存外に面白い。
・ゆえに膨らむのだ、「転生後もきっと面白いに違いないぞ」という期待が!そして「早く次話を見たいなぁ」とワクワクする!鑑賞者の心を鷲掴みにする見事な第1話と言えるだろう。
▶演出(説明ではなく描写)
・ここまで申し上げてきた通り、本話は前世パートが面白い。では、前世パートのどこに魅力があるのだろうか?
・魅力はたくさんある。例えば「作画がよくてアクションシーンに迫力がある」「セリフがクール」などだが……ここでは特に、<主人公の描き方>に注目したい。
・すなわち、主人公は「一度ドローンに捕捉されたらもう逃げられない。だから○○すべし」とか「夜は移動してはならない。なぜなら□□だから」とか、嘘か本当かはわからぬがしかし非常に説得力のあることを言う。そして、それを見事に実行してみせる。かくして私たち鑑賞者は、「なるほど、これは確かに凄腕の暗殺者だ!」と納得できる。
・そう、周りのキャラが「わぁ!××様は世界最高の暗殺者ですね♥」なんて持ち上げたりはしないのだ(安っぽい作品でよく使われるテクニックである)。
・つまり、【説明】ではなくて【描写】!<主人公 = 世界最高の暗殺者>ということが描写を通じて伝わってくる。だから安っぽくない。物語にしっかり没入できるのだろう。
▶構成(現世パートと前世パートのつなぎ方)
・本話は、現世(異世界)パートから始まる。そして第1幕の終わり(ファースト・ターニングポイント)と共に、主人公の前世の話に移る。
・ここでご注目いただきたいのは、<現世パートと前世パートのつなぎ方>だ。これがなかなかどうしてスタイリッシュなのである。
・すなわち……【闇オークションの主催者に向けて主人公が引き金を引く】というシーンの直後に、【主人公が引き金を引き、ターゲットを暗殺している】という前世のシーンに切り替わるのだ。引き金を引くシーンから、引き金を引くシーンへ……これ、マッチカットと呼ばれる技法である。
▶構成(ハードなアクションと萌えの邂逅)
・【主人公が死亡 → 気がつくと神や女神の前にいた】というのは、異世界転生ものでよく見かける展開である。ここに驚きはない。というかマンネリだ。「またこれか」と思わざるを得ない。ところが本作はこのシーンが面白いのだ。
・というのも、本作は冒頭からずっとハリウッド映画風のアクションシーンの連続だった。また、主人公は死してなお初老の男性だ。声も表情も渋い。そして落ち着き払っている(さすがは凄腕の暗殺者!)。それに対して女神は……田村ゆかりさんが甘ったるい声で「ちなみに私は女神です。エッヘン!」「あなたには選択肢があります。1つ、魂を漂白されて見知らぬ誰かに生まれ変わること。オギャー!」。
・不意打ちである。<ハードなアクションと萌えの邂逅>とでも言おうか。このギャップに思わず吹き出してしまった。ここで田村ゆかりさんを使うのはずるい。
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今日からは、21年秋アニメ「世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する」の分析です!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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