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優れたタイトルをタイプ分け → タイトルを付ける際に役立つ図を作る(後編)|「妹」の研究(6)

 妹である!

 何はなくとも妹である!!


 本記事は、1975~2018年の44年間に刊行されたラノベの内、「妹」が付くタイトルをピックアップ★徹底分析する特集「『妹』の研究」の……第6回(最終回)である!


※注:「『妹』が付くタイトル」とは、例えば以下のような作品を指します。


<特集全体の目次>


第1回:「妹」タイトルが2010年に爆発的に増加したのはなぜか?

第2回:目立ちたい?それならこのタイトルで決まり★

第3回:妹は万能!神にも魔王にも、廃ゲーマーにもなる★

第4回:最短の「妹」タイトルを考える★

第5回:優れたタイトルをタイプ分け → タイトルを付ける際に役立つ図を作る(前編)

第6回(本記事):優れたタイトルをタイプ分け → タイトルを付ける際に役立つ図を作る(後編)


第1回からご覧になることをオススメします★


 それでは、早速分析を続けよう!


タイプ③


三葉「続いて取り上げるのは、以下の4作です」

・「ウルトラマン妹」

・「イモート・オブ・ザ・リング」

・「真・三国志妹 俺の妹が刑道栄に転生するはずがない」

・「超妹大戦シスマゲドン (1)」


三葉「さて、本記事ではこれらを『<パロディ>風タイトル』と呼ぶことにしましょう

清水「ほぉ」

三葉「まず、『ウルトラマン妹』。言うまでもないでしょうが……このタイトルを目にすれば、誰もが『ウルトラマン』シリーズを思い浮かべるはずです」

清水「ふむ」

三葉「また、『イモート・オブ・ザ・リング』は……」

清水『ロード・オブ・ザ・リング』をベースにしたタイトルでしょうか」


三葉「ええ。これまた明々白々ですよね」

清水「はい」

三葉「そして3つ目は、『真・三国志妹 俺の妹が刑道栄に転生するはずがない』

清水「これは『三国志演義』が元ネタですよね。『真』の一字が付くところは、コーエーのゲーム『真・三國無双』シリーズを意識している可能性もありますが……まぁ、全部まとめて『<三国志>をベースにしたタイトル』と言ってよいでしょう」


三葉「さて、ここまで取り上げた3作に共通しているのは……たいていの人が一瞬で元ネタを想起できるという点です」

清水「確かに」

三葉「一方、『超妹大戦シスマゲドン (1)』はいかがでしょう?」

清水「ふーむ……」

三葉『<ロボットもの>のタイトルだ』と感じた人は多いと思います。ただ、他3作と比べるといかがでしょう?……個別具体的な作品との結びつきは弱いといえるのではないでしょうか

清水「なるほど。私も、ざっくり『<ロボットもの>っぽい』と感じました。考えてみれば『スーパーロボット大戦』シリーズ、あるいは『伝説巨神イデオン』『新世紀エヴァンゲリオン』なんかに似た響き、字面をしていますが……確かに他3作ほど『絶対にコレ!』という強い結びつきは感じませんね」


三葉「さて、以上を図に整理してみましょう」



三葉「上図を踏まえて、例えば……うん!妹を主役に据えた『魔法少女もの』のタイトルを考えてみましょう

清水「ほぉ」

三葉『ウルトラマン妹』のような個別具体的な連想が働くタイトルとしては……『魔法使いサリー妹』や、『ひみつのアッコちゃんシスターズ』なんてものがあり得るでしょう」

清水「なるほど」

三葉「念のために申し上げますと……前者は『魔法使いサリー』、後者は『ひみつのアッコちゃん』を元ネタとしています」


三葉「一方、『超妹大戦シスマゲドン (1)』のように、個別具体的な作品というよりも、ジャンル全体を想起させるものとしては……うむ!『魔女っ娘戦士ぐまい☆ぎまいちゃん』なんていかがでしょう?」

清水「……ん?『ぐまい☆ぎまい』?

三葉漢字で書くと『愚妹☆義妹』ですね」

清水「……攻めたタイトルですね……」

三葉「手前味噌で恐縮ですが、なかなかどうしてよいタイトルではないでしょうか。これは、『魔法少女まどか☆マギカ』『美少女戦士セーラームーン』を筆頭に、『ミラクル☆ガールズ』『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』『マジカルパティシエ小咲ちゃん!!』など、様々な『魔法少女もの』をミックスしたタイトルです」


三葉「そしてミックスしたことで、『<魔法少女もの>というジャンル全体を元ネタにした風のタイトル』になったといえるでしょう」

清水「あー、確かにごった煮感が強くて、具体的な作品はイメージしづらいですね……」


タイプ④


三葉「最後に、以下の5作を取り上げます」

・「俺が好きなのは妹だけど妹じゃない 1」

・「株式上場を目指して代表取締役お兄ちゃんに就任致しました~妹株式会社」

・「俺の彼女は飼主様、妹はご主人様」

・「ロボット妹 改め人類皆兄妹! ~目醒めよ愛の妹力~」

・「マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア」



清水「これはまた何というか、濃くて……うん、濃いタイトルが揃いましたねぇ……」

三葉「この5作はこう呼ばせてください。すなわち……『<情報量が多すぎて意味不明ながら、何やら楽しそう>系タイトル』!」

清水「なるほど。確かに意味不明なタイトルだ……」

三葉「さて、最初にお断りしておきたいのは……ここでは、『意味不明』という言葉を悪い意味では使っていないということです」

清水「ほぉ」

三葉「既に別の箇所でも申し上げましたが……私たちは、あくまでもワクワク・ドキドキな時間を過ごすために小説を読むのです。すなわち……『よいタイトル』とは何か!それは、『ワクワク・ドキドキの時間を過ごせそうだ♥』と読者が感じてくれるタイトルのことである!」

清水「ふむふむ」

三葉「したがって、意味が伝わるかどうかなんて二の次!意味不明でも、『楽しそう♥読んでみようかな!』と読者が感じてくれるならば、それは名タイトルなのです!

清水「なるほど」

三葉「さて、話を進めましょう。以下の図をご覧ください」



三葉「まずは、上図の『<一見すると理解できそうだがやっぱり意味不明>タイプ』

清水「該当するのは、

・『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない 1』

・『株式上場を目指して代表取締役お兄ちゃんに就任致しました~妹株式会社』

・『俺の彼女は飼主様、妹はご主人様』

ですね」

三葉「さて、『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない 1』ですが……」

清水「ふむ」

三葉「難しい言葉も、高度なレトリックも使われていません」

清水「確かに」

三葉「したがって、パッと見た時には理解しやすいタイトルに思える……が!しかし!『妹だけど妹じゃない』って何だ!?

清水「うーむ……ストーリーを知らない人には理解できないでしょうねぇ……」

三葉「そう!一見シンプルに見えて、その実、初見では理解しがたいタイトルなのです。しかし同時に、『妹もの』好きの読者からすれば、『えっ……妹なの?妹じゃないの?えっ……?』という感じで、大いに気になるタイトルといえます

清水「確かに」

三葉まさに『<情報量が多すぎて意味不明ながら、何やら楽しそう>系タイトル』の中の『<一見すると理解できそうだがやっぱり意味不明>タイプといえるでしょう」

清水「なるほど」

三葉「次に、『株式上場を目指して代表取締役お兄ちゃんに就任致しました~妹株式会社』はいかがでしょう?」

清水「ふーむ……これ、『お兄ちゃん』や『妹』を別の言葉に置き換えるとごくふつうの文章になるんですよね。例えば『株式上場を目指して代表取締役社長に就任致しました~ABC株式会社』なんて具合です」

三葉「ふむ」

清水「それゆえに、一見すると何の変哲もないタイトルに見える。ところが……じつは『代表取締役お兄ちゃん』やら『妹株式会社』やら……意味不明!

三葉「まったくです。そして『俺の彼女は飼主様、妹はご主人様』も同様です。『俺の彼女は飼い主様』……うん、まぁぎりぎり理解できる『きみはペット』なんて作品もありましたし、そのタイプかなと」


清水「ふむ」

三葉「続いて……『妹はご主人様』。なるほど。男性主人公はドMなんでしょうかね。妹に支配されたいと考えているのかもしれない。オーケー。そういう嗜癖の持ち主もいるでしょう。承知しました……が!『飼主様』と『ご主人様』を同時に登場させるから脳が混乱する。『えーと……結局何だって?』と聞き返したくなる!……まぁ、意味不明タイプと言ってよいでしょう」

清水「同意です」

三葉「続いて、上図でいうところの『<最初から意味不明>タイプ』を見てみましょう

清水「該当するのは

・『ロボット妹 改め人類皆兄妹! ~目醒めよ愛の妹力~』

・『マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア』

ですね」

三葉「この2つは、『<パッと見たその瞬間に脳が理解することを諦める>タイプのタイトル』といえるでしょう」

清水「ははぁ……」

三葉「例えば『ロボット妹 改め人類皆兄妹! ~目醒めよ愛の妹力~』を見てみると……『ロボット妹』の時点で意味不明じゃないですか!何言ってんだ、こいつ……って感じでしょ?そして次にくるのが『改め』。いや、勝手に改められても……なんて思っていると、『人類皆兄妹!』。……はぁ?もうね、脳がかわいそう。脳が休みたいと言っているのがわかります。しかしまだ許してくれないんだな、これが。『目覚めよ』と来る。……何を?……もう勝手に目覚めてよ。そして最後にダメ押し。『愛の妹力』……わからん。何もわからん……という具合です」

清水「なるほど……」

三葉「大体ですね、1つのタイトルの中に『妹』という単語が3回も出てくるってどういうことですか!まったく正気の沙汰ではありませんよ」

清水「あー……」

三葉この意味不明っぷり!……しかし同時に、どこかワクワクしてくるタイトルでもありますよね。というかですね、こんなタイトルを付けられたら、妹好きの読者はストーリーが気になるに決まってるじゃないですか!読者の興味を惹きつける素晴らしいタイトルだと思うのです」

清水「なるほど」

三葉「最後に、『マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア』……出た、これ!」

清水「えらい情報量ですよねぇ……」

三葉「1つ1つの言葉は理解できるんですよ。『マジメ』……なるほど、主人公は真面目なのか。『妹萌え』……ほぉ、妹好きの兄が主人公ってことかな?『ブタ』……これはデブって意味だろうか?『英雄』……ふむ。異世界で活躍するタイプの作品だろうか……なんて」

清水「ええ」

三葉ところが、それが一同に会するとどうなるか?意味不明になるのである!

清水「登場するワードがすべて濃いんですよね。だから胃もたれする」

三葉「情報量が多すぎて自壊しかけているといえるでしょう」

清水「そうそう」

三葉しかし同時に……何やら楽しげな雰囲気が伝わってくる!ブッフェ的な、あるいは和洋折衷的な、もしくはカーニバル的な盛り上がりを感じる!これもまたじつに巧いタイトルだと思うのです」


最後に整理




三葉「今後、タイトルを付ける際にご参照いただけますと幸いです★」


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 特集「『妹』の研究」(全6回)は以上で終了です……が!妹だけでは終わらない!次は……姉!

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)

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