![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/55359737/rectangle_large_type_2_a0026f3a315da1296620b3e41247f681.jpg?width=1200)
アニメ「咲-Saki-」第17話を5つの視点から分析する👀
※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第17話。第16話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
【ポイント①】絶望と希望を繰り返す構成
<1>
まずは、本話のストーリーをざっくり整理してみよう。
・Step 0(前話):衣が無双をかます。咲ら3人はコテンパンにやられる。
・Step 1:休憩時間。咲ら3人はそれぞれのパートナーと過ごし、英気を養う。特に咲。彼女は愛する和に激励され、目に殺気が宿る。
・Step 2:後半開始。相変わらず衣の無双だ。
・Step 3:しかし……咲の目は死んでいない!さらに、赤いオーラが立ち昇る!
・Step 4:だが、その後も衣の無双が続く。
・Step 5:衣が点数調整して、咲らの心を折ろうとする。状況は最悪だ(①衣の尋常ならざる強さ、②衣の底意地の悪さ、③あまりにも大きすぎる点差、④咲は得意技を封じられた、⑤対戦相手たる華菜をかばってやる必要もある)。
・Step 6:そんな中、咲が予想外の手を打った!さすがの衣もギョッとする。
<2>
さらに、もっとギュギュっとコンパクトにまとめてみよう。
・Step 0(前話):衣が無双して絶望。
・Step 1:咲らが百合成分を補給。「ここから逆転か?」と希望が生まれる。
・Step 2:でも、やっぱり衣が無双して絶望。
・Step 3:咲の覚醒っぽい演出で、わずかな希望が生まれる。
・Step 4:しかし、またもや衣が無双して絶望。
・Step 5:さらに衣の点数調整が明らかになり、すべての希望が失われる。
・Step 6:と思いきや、咲が覚醒!希望!!
<3>
ここまで抽象化すれば、もう明確だ。
そう!本話は【絶望 → わずかな希望 → 絶望】の連続、「次こそいけるか!?……あー、やっぱりダメか」の繰り返しなのだ。
鑑賞者をハラハラドキドキさせる絶妙な構成と言えるだろう。
【ポイント②】ゆみと華菜はなぜ同じ役であがったのか?
<1>
まず思い出していただきたいのは、第15話の【大将戦が始まる → 咲がスタートダッシュ。嶺上開花の連チャンだ! → ノリノリの咲は、3度目の嶺上開花を放とうとする → しかしその直前、ゆみがあがった】というシーンである。
この時、ゆみは槍槓(チャンカン)であがる。
<2>
続いては本話の終盤、【咲が華菜をあがらせてやったシーン】にご注目いただきたい。この時、華菜はどんな役であがったのか?
そう、ここでも槍槓だ。
<3>
華菜は、なぜ槍槓であがったのか?なぜ第15話と同じ役なのか?ただの偶然……のはずがない!
制作者の視点から事情を整理してみよう。
・【第15話】ゆみが槍槓であがるシーン:これは、単に咲がやられるシーンではない。<嶺上開花 = 成立直前に槍槓で妨害されやすい>と鑑賞者に示唆するシーンだったのだ。
・【本話】華菜が槍槓であがるシーン:これは、単に咲があがらせてやるシーンではない。咲が<嶺上開花 = 成立直前に槍槓で妨害されやすい>という性質を逆手にとって見事に立ち回るシーン、咲の強さを示すシーンだったのだ。
つまり、第15話は本話の伏線なのである。
何しろ、第15話の示唆(嶺上開花 = 成立直前に槍槓で妨害されやすい)があるからこそ、本話の咲の立ち回りがいかに巧みなものか理解できるのだから。
よく練られた構成ですよねー!
【ポイント③】百合成分を補給せよ!
<1>
続いては【休憩時間、咲らがそれぞれのパートナーと過ごし、英気を養うシーン】に注目してみよう。
これ、要するに<百合成分補給シーン>である。
咲は和と、華菜は美穂子と、そしてゆみは桃子と言葉を交わし、時に肉体的に接触することで、英気を養っているのだ。
<2>
特に印象深いのは、咲と和である。主役カップルの面目躍如、2人のやりとりはたっぷり描かれている。
ここでは、和の言動をざっくりとまとめてみよう。
・【1】「あなたの強さはこんなものではないはずだ!」と激励する:彼女は咲にボコボコにやられた経験がある(第1話 etc.)。その上、誰よりも咲を愛し、咲を目で追ってきた。だから咲のことはよく知っているのだ。
・【2】手を握る:会話の最中に和は咲の手を掴み、ぐっと引き寄せる。かくして咲の手が和の胸に触れる。咲は赤面する。……これ、<和が自分の胸を触らせたように見える>という有名なシーンだ。
・【3】小指をからめる:第3話(咲と和が互いを認め合い、「一緒に全国に行こう」と共通の目標を立てたシーン)、第8話(決勝戦前夜、2人が改めて県予選突破を誓ったシーン)に続いて、3度目の指切りである。2人はここぞという時に指切りするのだ。
・【4】手を繋いで対局室に向かう
こうした和の言葉、和との接触を通じて、咲は過去のあれこれを思い出し、そして覚醒に至る!
<3>
なお、咲が過去を思い出すシーンだが、そこに登場するのは和だけ。久らは一切映らない!
多くの鑑賞者は「えー!他の面々のことは思い出さないの!?だって、久のアドバイスはかなり役立ったじゃん!優希やまことの交流だって大切な思い出だよね?藤田プロとの対局も糧になったはずだよね?」と仰天したと思うが……まぁ、これぞ「咲-Saki-」と感じる演出であることは間違いない。
「さすがは『咲-Saki-』!百合百合である!(笑)」と噴き出さずにはいられない。
【ポイント④】衣の孤独
<1>
【休憩時間、咲らがそれぞれのパートナーと過ごして英気を養うシーン】についてもう1つ。
上述の通り、咲のもとには和が、華菜のもとには美穂子が、そしてゆみのもとには桃子がやってくる。
では、衣は?衣のもとには誰がやってきた?
正解は、藤田プロ!
つまり……透華らはやってこないのだ。
<2>
これ、<透華らが衣を大切に想っていない>ということではあるまい。衣は圧勝している。ゆえに激励なぞ不要なのだろう。
が、しかし。
<強すぎるがゆえに孤独>という衣の立ち位置がくっきり浮かび上がる象徴的なシーンだと思う。
【ポイント⑤】嗚呼、おトイレ!!
<1>
前話序盤(大将戦前半の東三局)、衣が強烈なオーラを放った時に、咲は泣きべそをかいた。そしてこう言った「おトイレ行っとけばよかったよぉ」。
「いやいやいや!あんた高校生でしょ?『おトイレ』って!」とツッコまずにはいられぬシーンだ。
なんとまぁ、あざといのか!じつにかわいらしいではないか!
<2>
そして、この<おトイレ>ネタは本話でも継続されている。
まずは序盤、咲は「おっ、おトイレ行ってきます!」と言って対局室を後にした。
対戦相手にわざわざ「おトイレ」を宣言しなくてもいいと思うのだが……うーむ!おっちょこちょいである!かわいいな♥
<3>
その後、咲は迷子になる。
嗚呼、高1の女子が!おトイレを探して!迷子になる!そんなシーンを!大切な大将戦の合間に描く!!
多くの鑑賞者は「制作者は徹底的に<おトイレ>ネタを描くつもりだな?その意気や良し!」と感服したに違いない。
少なくとも私は感服した。本作に匹敵し得る<おトイレアニメ>といえば、「妹ちょ。」(特に第1~2話)くらいなものではなかろうか。
<4>
迷子の咲。そこに和がやってくる。そして和は咲を激励した(この辺りの事情は上述した通りだ)。
で、やる気を取り戻した咲。和はそんな咲の手を掴んで「さぁ、対局室に急ぎましょう!」。
しかし……咲は慌てる「私、まだおトイレ行ってないよ!」。
出ました、<おトイレ>!
和が呆れる「試合前に行かなかったんですか?」。
咲は顔を赤らめてもじもじしながら、「だっ、だって……ずっと原村さんの試合を見ていたから」。
咲の言葉に、和も顔を赤らめた。
和は「とっ、とにかく急いでいきましょう!」。かくして2人は顔を真っ赤にしたまま、手を繋いで走り出した。
走ったら漏れてしまうのではないかと心配になるのだが……まぁそれはともかくとして。このシーン、<おトイレ>と百合の複合技である!すごい!ニヤニヤせずにはいられない。
続きはこちら!
関連記事
・この<王道感>溢れるオープニングよ!!|【第1局:出会い】「咲-Saki-」に学ぶ
・主人公が覚醒するには、<強く美しいライバル>と<鋭い観察眼を持つ先輩キャラ>が必要!!|【第2局:勝負】「咲-Saki-」に学ぶ
・説教が始まるかと思いきや百合展開!!|【第3局:対立】「咲-Saki-」に学ぶ
・浮かれるな!現実を見ろ!地に足をつけろ!……そして強化合宿へ|【第4局:翻弄】「咲-Saki-」に学ぶ
・いま、ついに、主人公たちの足並みが揃った!!|【第5局:合宿】「咲-Saki-」に学ぶ
・鑑賞者に今後の展開を予想させ、期待を膨らませ、「あー、早く続きを見たい!」とワクワクさせるテクニック!!|【第6局:開幕】「咲-Saki-」に学ぶ
・風越女子と福路美穂子の<ギャップ>の魅力♥|【第7局:伝統】「咲-Saki-」に学ぶ
・<百合>と<ちょいエロ>を使って、重すぎず軽すぎない絶妙なバランスの物語を作る!!|【第8局:前夜】「咲-Saki-」に学ぶ
・構成の妙!鑑賞者をミスリードしまくれ!!|【第9局:開眼】「咲-Saki-」に学ぶ
・鑑賞者が思わず<下世話な妄想>を膨らませてしまう展開や演出をぶちこむ!!|【第10局:初心者】「咲-Saki-」に学ぶ
・久はジョセフ、ネテロ、カイトに匹敵する曲者キャラである!!|【第11局:悪戯】「咲-Saki-」に学ぶ
・隙あらば百合!でもやっぱり主人公カップルが最高だと思う!!|【第12局:目醒め】「咲-Saki-」に学ぶ
・透華はあまりにも格好いい!なぜこれほどに魅力的なのか?|【第13局:微熱】「咲-Saki-」に学ぶ
・アニメ「咲-Saki-」第14話を7つの視点から分析する👀
・アニメ「咲-Saki-」第15話を7つの視点から分析する👀
・アニメ「咲-Saki-」第16話を5つの視点から分析する👀
---🌞---
関連
---🌞---
最新情報はTwitterで!
アニメ「咲-Saki-」第17話を5つの視点から分析する👀
— 100%ツールズ@創作の技術 (@100_tools) June 25, 2021
★見てね🀄→ https://t.co/MSkYtnubT1#アニメ #咲 #創作 pic.twitter.com/bI9cFuants
---🌞---
最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
いいなと思ったら応援しよう!
![100%ツールズ|創作の技術](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8856280/profile_0f634dd305ebc556e2a2748fd1974145.png?width=600&crop=1:1,smart)