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構成の妙!鑑賞者をミスリードしまくれ!!|【第9局:開眼】「咲-Saki-」に学ぶ

※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第9話。第8話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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分析メモ


■1:鑑賞者を飽きさせぬストーリーテリング

本話は、【先鋒戦で優希が翻弄されまくる】というエピソード。その翻弄されっぷりを大雑把に整理してみよう。

・Step 1:タコスが足りない → ピンチ

・Step 2:唯一のタコスを食べられてしまう → 大ピンチ

・Step 3:タコさんウインナーで補完 → 窮地を脱出 → と見せかけて、やっぱりダメ

・Step 4:タコスを補給 → ついに絶好調 → と見せかけて、またまたダメ

・Step 5:強化合宿の久の言葉を思い出す → いよいよ覚醒 → と見せかけて、またぞろダメ

・Step 6:美穂子のサポートを受ける → やっと絶好調 → と見せかけて、結局は美穂子の1人勝ち


ご覧の通り【ピンチ → 窮地を脱出 → 絶好調 → と思いきやダメ】の連続であり、鑑賞者は終始ハラハラしっぱなしだ。

鑑賞者を飽きさせぬ巧みなストーリーテリングと言えるだろう。


■2:【構成の妙】物語前半で鑑賞者をミスリードする

<1>

本話の構成には、特筆すべき点がある。


まずご注目いただきたいのは、【物語前半、「優希はタコスさえあれば勝てる。タコスがないから不調なのだ」と示唆されている】という点だ。

そしてこの示唆ゆえに、物語のど真ん中(ミッドポイント)で京太郎がタコスを持って登場した時、多くの鑑賞者は「おー!ここから大逆転だな!」と予想したことだろう。


<2>

ところがどっこい、そうではない!優希はタコスを補給した後も苦戦し続ける。

ゆえに、私たち鑑賞者は仰天するのだ。「えっ、タコスを食っても逆転しないの!?またぞろダメなの!?」と。

そう、結局のところ、優希が活躍できなかったのはタコスが足りなかったからではない。足りないのは実力だ。


<3>

つまり、物語前半の「優希はタコスさえあれば勝てる。タコスがないから不調なのだ」という示唆が鑑賞者をミスリードする仕掛けだったのだ。

これ、【物語中盤で鑑賞者を仰天させるために、物語前半で鑑賞者をミスリードする】というテクニックである。


■3:【構成の妙】物語中盤で鑑賞者をミスリードする

<1>

本話の構成には、もう1つ驚くべき仕掛けが施されている。


ご注目いただきたいのは、美穂子が開眼するシーンである。

開眼シーンを整理すると、【優希が純を相手に苦戦する → 美穂子はそれを察知して、開眼 → 優希と純の手牌をほぼ完全に読み切る → 美穂子は優希をサポートする】となる。そう、<美穂子は優希をサポートするために開眼した(ように見える)>のだ。


ちなみに……物語前半の【純が誤ってタコスを食べてしまったシーン】で、美穂子は優希を慰め、手作り弁当を分け与えてやる。私たち鑑賞者はこのシーンを記憶している。ゆえに「優希のために開眼するとは、いかにも美穂子らしいなぁ♥やっぱり美穂子は優しいなぁ♥」と認識するのだ。


<3>

ところが、これはまったくの誤りだ。美穂子は優しいから開眼したのではない。優希を助けようとして開眼したのではない。

むしろ事態は真逆で、「美穂子は純の意識を逸らすために優希を利用した」と言うべきだろう。


物語終盤、美穂子の狙いが明らかになる。

私たち鑑賞者は、ここに至って美穂子が単なる善人ではないこと、それどころか相当にしたたかな打ち手であることを知り、驚愕するのだ。


<4>

要するに、中盤の<美穂子は優希をサポートするために開眼した(ように見える)>という構成が鑑賞者をミスリードする仕掛けだったのだ。

これ、【物語中盤で「美穂子は優希を救うために開眼した」と見せかける → 物語後半で、「じつはそうではない」と明かす → これによって鑑賞者を驚愕させる】というテクニックである。


■4:美穂子はそっと開眼する

開眼シーンといえば、美穂子がじつにさりげなく開眼する点にも注目したい。

「さぁ、いよいよ開くぞ!」「開きつつあるぞ!」「開いたぞ!」といった大げさな演出は皆無。美穂子は、本当に静かに目を開くのだ。

あまりにもさりげなさすぎて、「えっ!もう開いたの!?」と驚いた鑑賞者も少なくないと思うが……考えてみれば、このさりげなさこそが美穂子らしいではないか。


■5:美穂子の恐るべき実力

純は凄腕の雀士である。優希を片手でひねるその実力、ただ者ではない。藤田プロも舌を巻くほどだ。

ところがだ。美穂子はそんな彼女を楽々とさばいてみせる。つまり、美穂子の前では純でさえも噛ませ犬に過ぎなかったのだ

恐るべきは美穂子!


■6:鑑賞者の期待を膨らませるエンディング

物語終盤、衣が初めて言葉を発する。かわいらしい声色(福原香織さん)とは裏腹に、そのセリフは「有象無象の下等生物が衣に勝てるわけもなし!」。すべてを見下す神の如き物言いである。

そして、遥か遠方から衣の気配を察知する咲……。

やがて描かれるであろう<咲と衣の化け物対決>を期待させるエンディングだ。



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(担当:三葉)

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