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エッセイ【お立ち寄り時間1分】雨の日には冷えたスプーンを―ミルクがおむつを背負って来る―

160mlのミルク瓶がちょっと寂しそうに座っている。
今日は、プラスチックの回収の最終日で、お別れするか迷って、一本だけ残した。早くも息子が、私たち夫婦を選んでくれて半年が経過した。

『育児は楽しまなきゃダメよ』
『私は誰にも頼れなかったよ』
『ママなんだから頑張らないと』

真綿で首を絞められる言葉に、心が鎧みたいに重くなって、キシキシと体は、穏やかに蝕まれていった。涙の出どころが分からなくなるくらい泣いた。

それでも。

初めて笑った日
初めてあくびした日
初めてミルク瓶が大きくなった日
初めて寝返りが出来た日
初めて抱っこひもを卒業した日
初めて『ママ』と呼ばれた日

沢山の初めてをもらった。
これまでの、死にたいほど辛かったことが帳消しになるくらい、腹の底からこみ上げてくる感情。言葉なんか、最初から無かったのではないかと疑うくらい。

もし、タイムマシンがあるなら、不安で押しつぶされてぺしゃんこになった過去の私に言いたい。

『育児を楽しもうとしなくていい』
『たくさん頼っていい』
『パパと支え合っていい』

『嫌なこと』は後回しにしていい。
全力で『好きなこと』をしていい。

大丈夫だよ。
赤ちゃんが『笑顔』を連れて来てくれるから。

我慢しなくていいんだよ。
完璧にこなそうとしなくていいんだよ。
全部、自分1人で抱え込まなくていいんだよ。

自分に優しくなれた、そんな1年だった。

昨日、家族3人でお礼参りに行った。
牛さんが神様の神社で、息子がおうし座なのは、はたまた偶然なのか。

社から出て、空を仰ぐ。
そよそよと青が流れていた。

明日は新年だ。
さて『うざい』って言われるくらい、また愛してやるんだ。
丸ごと全部、すっからかんに。


✳︎ご挨拶とお礼
本当に、たくさんお立ち寄りいただきましてありがとうございました!

心の垢が、体の周りを吹きすぎる風が、どうしようもなく身動きが取れなくなった時、辿り着いたのは『書くこと』でした。

皆さまのスキやコメントが明日も書こう、という気持ちに繋がり、心が洗われていました。

本当に素敵な1年をありがとうございました!
良いお年をお迎えください。

それではまた、うそうそ時に。


✳︎ホシワカシイタケ作品
これまでの主な作品たちです

エッセイ『雨の日には』シリーズ↓

短編集『背中に恋』シリーズ↓

週間まとめ『週末』シリーズ↓

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