野菜サラダが美味い！

　溢れる情報の中でも、やはり健康とか美容に関するものが多い。

　何々を食べ続けると、云々の類いである。

　痩せる、肌のトラブル、目が良くなる、等々……これを信じて、毎日好きでも無い食い物をせっせと食べている人もいるのだろうか?

　僕は全く信じてはいないのだが……要は、一番常識的な説……すなわち、バランスの取れた食事という俗説だけは、説得力がありそうである。

　実際の所、僕はガキの頃から野菜嫌いで……これを心配したお袋が、「ハイＣ」なんぞを飲むよう強要したものであった。
　まあ、これはちょっと酸っぱいキャンデーと認識していたのだが……総合ビタミン剤の錠剤をついしゃぶってしまい……中から出てきた薬剤の苦さに辟易として、以来飲んだフリをしていたこともあった。

　いずれにしても、ビタミンCの藥が何か肉体に益を齎したのかというと、甚だ疑問なのだ。

　とはいえ、現代人の多くは、情報のままに、いろんな栄養素に神経質になって……食物のみならず、あれもこれもとサプリも摂取しているらしい。

　僕はかかる姿勢を好まない。

　何故か……

　情報というのは、一般的な平均値であって……万人に当てはまる処方ではないということだ。
　例えば、血圧が130超えると高血圧などというCMが流れると、つい本気になる人もいそうだか……これも平均値でしか過ぎず、人にによって様々なはずである。

　翻って、僕が信じているのは情報ではなく、ひたすら自らの身体の発するサインというわけだ。

　肉食の僕だが……時に魚が食いたくなる時がある。これはまさしく身体の発する、一番信じられる情報だろう。そこで、どんな魚がいいかと考える。身体は言う。そうだな……鮭のハラスなんかはどうかね……てな具合である。

　先に野菜嫌いの件を記したが……大人になってハイＣなんぞ止めてからも、特別身体に変調を感じたことはない。
　身体が欲しないのだから、これに従うまでである。

　食う量にしても……皿の食い物は完食が礼儀と言われても……やはり僕は社会的通念よりも、個たる自らの胃の腑に相談し……かなり残すことも吝かではない。

　とにかく野菜嫌いを公言してきた僕なのだが……なんと！　

　そう。昨今、やたらと野菜サラダが食いたくなってきたのだ。

　子供時代を振り返って見れば、トンカツに添えられるキャベツすら除けていた身の、ましてや野菜サラダなんぞ、まさに昆虫の餌と認識していたはず。

　そんな僕なのだが……まさに、身体がサインを突如として送ってきたのだ！

　野菜サラダを食え！……と……

　糞っ！　肉体も時には見当違いな意見を言い立てるのかと、つい反発もしかけたのだが……ここは信念ままに、エイヤっと野菜サラダにゴマのドレッシングをぶっ掛けて食ってみた。

　こんな不味いもの……と、思いきや……あれ?　……美味い。めっちゃ美味いじゃん。

　さすが、我が身体は嘘はつかなかったようだ。

　そう。明らかに今の僕の身体は、野菜を欲していたのだ。ついては、欲するところの食い物が不味いわけはない。

　面白いものである。あれほど野菜サラダ嫌いだった僕が……色々とドレッシングに懲り、毎日欠かさず野菜サラダを頬張っているのだ。

　何せ今では、メインのオカズよりも……サラダの方が楽しみで食卓についているくらいである。