雪よ降るな!
東京在住なので、雪が降ることは少ない。先だって東京にも雪が……という報道蛾流れたが、やれやれ、ハッキリ言って、雪は御免である。
……と言うのも、ガキの頃、北海道出身の祖母から、必ず雪かきはしろ……と厳命されていたのだ。
まあ、子供時代などは、家族がやっていたし……時に手伝ったこともあったが、案外遊びの一貫と心得ていたようである。
確かに、雪が降ると、子犬みたいにち訳も無くワクワクしたものであった。
しかし、成人を過ぎてからは、雪かきなど単なるコ面倒な重労働でしかない。特に我が家は角地なので、玄関のある面と、側面も雪かきが必要なのだ。
案外、家の近所で雪かきを励行しているのは我が家だけで……たぶん、雪国出身者が不在なのだろう。
取りあえず、家の前を全うに通れるように整えるわけだが、他の家はそこに自宅玄関からのちょっとしたバイパスを刻むくらいなのだ。ちゃっかりしたものである。
note仲間にはたぶん雪国に住まう人もおられるとは思うが、恐らく東京人の雪に対する無頓着には呆れかえることだろう。
思えば、雪が楽しかったのは中学生位までだったと思う。確か、当時、東京にもかなり雪が積もって……さっそく雪合戦という段取りであった。
とはいえ、その時、僕はアイススケートで横転して右の鎖骨を骨折していて、切歯扼腕した記憶がある。
なんとか左手だけで雪玉を投げたはずだが、てっきり、雪を楽しいと思った最後であった。
その後は、先の億劫な雪かきと同時に、雪道をチャリで走ったときの恐怖心は今でも思い出す。
ちょうど坂の上の友人のカフェに行った帰りで、なんとかチャリの走れる道を下っていた時だ。後ろから車がやってくる。たぶん、僕をからかいたかったのだろう。
確かにちょっと危険を覚えて……全速力でチャリを走らす。スピード恐怖症とあって気が気では無い。雪の積もった左右どちらかに、ぶっ倒れそうになるのを、懸命にバランスを取って下る。
なんとか難は免れたが、かかる恐怖は二度と真っ平である。
もとより雪かきも、雪道をチャリで下るような難業もなく、炬燵にぬっくりと暖まりながら、窓の向こうに降る雪を眺めるは一興だろうが、そんなことは旅行者か貴族様にしか叶わぬだろう。
香炉峰の雪いかならむ……なんぞと嘯いてもみたいのだが、とても叶いそうにはない。
願わくば、今季、東京に雪の積もらぬことを祈るばかりである。