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全うな日本茶が飲みたい
何時ごろからだろうか……急須で淹れる全うな「茶」からすっかりと遠ざかってしまった。
飲んでいるのは専ら、ペットボトルの奴である。冷蔵庫に保管しているわけで……要は春夏秋冬、冷たいお茶ばかり飲んでいることになる。
はっきり言って「お茶」として飲んでいるというよりは、水代わりの……単なる水分補給に他ならず、茶を喫しているというイメージは皆無である。
お茶は好きなのか? ……と問われれば、当然「好き」と答えるのだが、僕の場合お茶に関してはかなり奥手で……少なくとも中学あたりまでは、お茶の味など全く判っていなかったと思う。
中学の京都への修学旅行の時……そこそこ高価なお茶を家族の土産として、結構喜ばれた記憶はあるのだが……本人はサッパリであった。
あまり確かな記憶ではないのだが……お茶の味をそこそこ分かってきたのは、時期的にコーヒーと同じで、たぶん大学に入ってからだろう。
思えば、子供時代……僕にとって「お茶」といえば、「紅茶」一本だったと思う。
確かに紅茶は、今でも好きなのだが……子供時代は、ミルクティーやレモンティーが日常の飲み物であった。
今でも覚えているのだが、カツオの煮付け(実は安いナマリ)で晩飯を終えた後、家族は全員日本茶で一服なのだが……僕一人、紅茶を飲んでいたものである。今考えると、なんとも呆れた組み合わせではあるが……
家族全員と言ったが……実は、お袋は僕が小学生の頃まで「茶断ち」を断行していたのだ。
なにせ、幼児期は何時死んでもおかしくないほどの病弱で……この子が無事に成人しますように、との願掛けで、大好きだった茶を絶ったらしい。
代わりに飲んでいたのが「麦茶」で……今、思い出したのだが、これに砂糖を加えたのは子供の頃よく飲んでいたと思う。
ついでに、ちょっと似ていたのか……日本茶でも「ほうじ茶」は案外飲んでいたかも知れない。
いずれにしても、全うな「日本茶」の味を覚えたのは、ほぼコーヒーと並行していて、……温めの湯で淹れるちょっと甘めの日本茶、そしてコーヒーの方は酸味の強いキリマンという取り合わせであった。
以来、日本茶は俄然好きになって、それにも増してコーヒーにハマり、つい最近にまで至っているのだが……
もう五、六年前になるのだろうか……長年働いていた仕事を不当解雇になり……本来の怠け癖もあって、やや時短のバイトに切り換えてから、経済状況も悪化……一時など月収六万という状況で、日本茶どころかコーヒーなど高嶺の花になってしまったのだ。
気がつくと、コーヒーは言うに及ばず、日本茶もペットボトル以外は飲めない状況に追い込まれてしまった。
まあ、人間なんぞ、飲めなければ飲まないまでのことで、なんとか辛抱してきたのだが……今年から幾分は給料もいいバイトにありついたので……まずはコーヒー(インスタントだが)で人心地。
そしてここに至って、俄然、急須で淹れた「日本茶」が飲みたくなってきたのだ。
所詮、貧乏人のこと、高価な茶葉など望むべくもないが……それでも気に入っていたガラスの急須で、ちょっと温めのやや甘味のある「日本茶」喫してみたいと思う、今日この頃である。
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