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靈韻抄 風雅

雲は山の峯を越え
遥かなる空へと消ゆ
風の囁き、草を撫で
自然の律に耳を澄ませ

梢の音、鳥の羽ばたき
風の渡る川の流れ
谷間を抜けて廣がりぬ
蒼き大地に響き渡る

月の光、夜の帳
靜寂に包まれし庭
石疊に落つる露
冷やかなる風、身を吹く

花の香り、春の訪れ
櫻の花びら、風に舞ひ
ひとひらの儚き命
空を仰ぎて消え行く

星明り、森の奧に
鹿の足音、遠く響き
水面に映る月の影
靜けさの中に漂ひぬ

燈籠の光、揺らめきて
庭の片隅、影を描く
苔むした石に落つる影
時の流れに滲み込む

竹林に響く風の音
葉の擦れ合ふさやけき聲
自然の律、世の中の
無限の調べに繋がりぬ

巖の上に咲く花一輪
人知れず、強く生き
其の美しさは靜かに
時の移ろひを忘れしごと

夏の夕暮れ、蟬の聲
日暮れに染まる山の端
稻穗の波、風に揺られ
黃金の大地、廣がりぬ

川のせせらぎ、涼しき音
冷ややかな風、頬を撫づ
風雅の中に身を浸し
心はただ穩やかに

秋の夜、月は滿ちぬ
紅葉の色、燃ゆるごとく
山々を彩る景色
風の中に舞ふ落葉

冬の山、雪の靜寂
白き世界に響く聲
凍てつく大地、足跡消ゆ
すべては無音に沈みぬ

一杯の茶、温もり抱き
火鉢の炎、柔らかに
圍む人々の笑みの中
心もまた暖かし

遠き鐘の音、風に乘り
彼方より響き渡りぬ
靜けき寺の庭先に
風雅の香り漂ひて

山は四季を纏ひゆき
流るゝ雲、風に運ばれ
移ろひゆくは自然の律
永劫に續くこの道

人はただ風に委ね
この大地に根を張りぬ
風雅の美しさを感じつつ
靜かなる日々を歩み行く

風に乘り、時は進み
草は伸び、花は咲き
其の一瞬の輝きを
ただ見守る者の心

雅なるものは形にあらず
風の音にこそ隱れたり
見えぬものにこそ在りぬ
其の心を探りてゆく

自然の中に溶け込みて
ただ一人、心靜かに
風の道を歩み續け
風雅の響きに耳を澄ます

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眞名井 宿禰(眞名井渺現堂)
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