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靈韻抄 綠陰 

木立(こだち)の影に涼風(すずかぜ)渡り
葉末(はなへ)の滴(しづく)、光を宿せり
微(かす)かに揺らぐ其(その)影は
靜けき命の詩(うた)となれり

鳥の囀(さゑず)り遠く響き
溪(たに)の流れと和(わ)をなせり
綠の帳(とばり)に隱れたる
悠久(ゆうきう)の聲、耳を澄ませよ

茂る葉蔭に木洩れ日躍り
其(そ)の光、柔らかに大地を照らす
冷たき風の觸れし處(ところ)
清らかなる息吹(いぶき)を感ず

苔むす石の間(あひだ)を流るる
細き小川のせせらぎぞ
聲なき聲に耳を傾け
天地の律(りつ)を胸に響かせり

日の盛りには葉影を賜り
夕暮れ迫りて凉を得る
命の交はり、調和の道
そを目覺(めざ)むれば心安らふ

靜寂(しじま)の森に響く步み
人の氣配に鳥が隱る
其(そ)の間(あひだ)を風が過ぎゆきて
葉擦(はす)れの聲、語り掛く

古き幹(みき)の疵(きず)をなぞり
年輪の數を想(おも)ひぬる
其(そ)の深き影の下(もと)に
幾千(いくち)命、息を繫げり

草葉の露が朝日に光り
目覺(めざ)むる日を迎ふる調(しらべ)
花の薫(かを)りがひそかに揺れて
木々の庇護(ひご)を尊びぬ

茂る梢(こずゑ)の間(あひだ)に鳥影
一瞬の閃(ひらめ)き目に宿す
羽音(はおと)の餘韻(よいん)、森に沈み
綠の息吹と調和せり

溪流(けいりゅう)の音、遠く聞こゆ
耳を澄ませば花の氣配(けはひ)
其(そ)の優しき香(か)に心動き
手折(たを)らぬままに步を進む

光と影の交(まじ)はる處(ところ)
其(そ)の不定(さだめ)に命を學ぶ
ひととせごとに積る時
綠陰の中に宿るもの

雨上がりの樹々の香(かをり)
其(そ)の芳(かんば)しさ心に滿つ
命を繫ぐ其(そ)の氣高さ
何人(なんびと)も知るを得ず

木洩れ日に濡るる葉陰
露の滴が滴り落ち
其(そ)の透明の瞬間に
天地の繫がり見る如(ごと)し

深き森の奧に步み
小徑(こみち)の隅に咲く白花
人知れず咲き、薫(かを)り漂ひ
靜けき命を讃ふもの

夕闇迫り、影深まり
森の響きが聲を變へる
其(そ)の變幻の調(しらべ)に心寄せ
大地の息吹に身を浸す

月の明かりが葉陰を撫で
綠の影に銀を宿す
其(そ)の幻(まぼろし)の如き姿
人の想(おも)ひに靜かに刻む

朝靄(あさもや)の中、木々が揺れ
霞む影に息吹を感ず
其(そ)の瞬間(またたき)の儚さぞ
永劫(えいごう)の詩(うた)を告ぐるもの

夏の日盛り、木蔭に憩ひ
涼しき風に癒されぬ
命の巡りに抱かれつつ
天地の調和を胸に知る

古木(こぼく)の根元に寄りて佇めば
土の匂ひに心安らぐ
命を育む大地の力
そを感じつつ默(もく)すれば

溪谷(たにや)の響き、風の囁き
綠陰の中に織り成され
目に見えぬ聲の調べ
命の繫ぎを秘めるもの

葉擦れの音に耳を澄ませ
其(そ)の律動(りつどう)に心を委ね
深き綠の中にあれば
全ての煩ひ忘れゆく

野邊(のべ)の端(はし)に揺るる梢
人の步みに影を落す
其(そ)の庇護(ひご)に恩を感謝しつつ
自然の巡りに胸打たる

山路(やまじ)に佇むひとつの幹
古き傷跡、靜かに語る
年月を越えて命を繫ぎ
人の暮らしを見守りぬ

風吹く日にも靜かなる
其(そ)の樹々の影に守られて
命を育む其(そ)の力
時の流れに揺るがざる

秋の夕暮れ、金の光
其(そ)の輝きが葉を染めて
綠陰の中に潜み居る
命の調(しらべ)を靜かに映す

足音を忍び、森を步む
小徑(こみち)の隅に咲く草花
其(そ)の姿に心癒され
人は其(そ)の恩を胸に抱く

冬の霜にも耐へし樹木
枝に殘る葉が聲を發(はつ)す
其(そ)の靜けさに耳を寄せ
自然の呼吸を肌に感じぬ

山裾(やますそ)の木々に寄せる風
其(そ)の凉しさに命を知る
深き綠の影に隱れ
天地の息吹に身を浸す

朝露に濡るる草の上
靜かに揺るる命の聲
其(そ)の瞬間(またたき)を胸に刻み
人の步みを守り行かむ

夜露が降りて木蔭を濡らし
葉の滴が音を奏づ
其(そ)の繊細なる調べの中
自然の息吹を感じつつ

山の谷間に響く音
木々の薫(かをり)が空氣に滿つ
其(そ)の優しき香(かをり)ぞ
人の魂に深く響かむ

綠の庇護(ひご)の深き中
小鳥の聲が響き渡る
其(そ)の清らかなる音色(ねいろ)ぞ
心を潤す雨の如し

霧立つ朝の山の景(けしき)
微(かす)かに揺るる葉陰の影
其(そ)の神秘なる佇まひに
靈(れい)の息吹を知る如し

夕暮れ迫りて月昇れば
梢(こずゑ)の影が光を映す
其(そ)の幽玄(ゆうげん)の美を見守り
人は大地に詠(えい)を捧ぐ

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眞名井 宿禰(眞名井渺現堂)
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