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儘・詠叢 艶女

闇夜に浮かぶ月の光
麗しき女の影を映し
黒髪は風にそよぎながら
静寂に染まる宵のひととき

蝋燭のほのかな灯に照らされ
白肌に薄紅宿る頬
紅薔薇の如き唇には
甘き言葉が秘められて

潤む瞳に映る影は
儚き夢の続きながら
今宵限りの幻と思い
身を委ねる悦びに溺れる

燃ゆる想いを胸に抱き
艶めく肢体をそっと晒す
舞は狂おしくも妖しく
男の心を虜にする

匂い立つ色香の袖の裾
優雅に舞う扇子の先
手元の小槌を打つ指に
女の矜持と魂宿る

紅に染まりし頬と唇
熱を帯びた肌に汗光り
乱れる息の音は高まり
欲のままに身を委ねる

深き闇に二人溶け込み
秘めた想いを曝け出す
虚ろなれども儚くとも
ただ求め合う今だけを

夜明けが訪れゆくにつれ
名残惜しさに胸軋む
だがこの逢瀬の跡だけは
心の深くに焼きつける

幾千の夜を共に過ごせど
やがて別れは訪れるもの
宿命と知りながらもなお
抱き合う瞬間を乞い願う

束の間の恋と知りつつも
心の全てを捧げて愛す
女の矜持を深く知りて
一夜の悦びを甘んじる

艶女として生きる道は
愛に酔い愛に滅びること
そう決めてこの世に生を受け
今日まで生き抜いてきたのだ

可憐な姿に惑わされ
男は女の罠に落ち
されど女もまた欺かれ
愛に溺れ身を焦がす

朧月夜に立つその影
儚き夢に身を委ね
今宵限りの恋と知りつつ
燃ゆる口づけ交わすのみ

艶めく肢体重なり合い
蕩けるばかりの悦楽に
身も心も全てを委ね
極楽浄土へ誘われる

真昼の陽射しが眩しくとも
艶女にとっては仇である
闇夜の帳に包まれてこそ
真の姿を露わにする

花魁道中の艶姿も
遊女屋の奥にひそみ
その奥にある真実の顔
知る者はただ男のみ

客の前では品良く振る舞い
座敷では艶態を見せながら
一人になればため息交じり
夢の続きをただ思う

女の生涯は水の如く
淀みなく流れゆくもの
されど時折岩にぶつかり
静かな波紋を広げるのだ

艶女と称されし女たちよ
その宿命を呪うことなかれ
この世に生を授かる以上
精一杯に生き抜くのだと知れ

澄みし瞳に映るものは
魂の片割れである
如何なる男も手にできぬ
たった一つの純愛を

羽織の襟をわずかに崩し
覗く白き肌は誘いの合図
秘められし想いをそっと現し
ただ男を惑わせる

扇子の先で示すものは
灯り消す燭台の火
闇に紛れて交わす息
それは男と女の契り

絢爛たる衣をまといて
妖艶な媚態を売り物にする
女の商いと知りながら
男はその惑いを買い求める

張り付いた紅の香りには
一夜の夢の余韻が宿る
戻れぬ現実が苦くとも
女は今日を生き抜くのだ

月明かりに濡れる姿で
孤独に佇む女の影
その孤独な魂を映し出し
ただひとり夜に溶けていく

狂おしき恋に身を焦がし
刹那の歓びを夢見つつ
女の宿命を胸に秘め
その生き方を貫きたい

明日を望むことなくして
ひたすらに今を生きる
艶女と称されし者たちよ
その生きざまを誇りに思え

儚き夢に酔いしれながら
儚き生を謳歌する
刹那の美学を抱きしめて
それもまた女の美徳なり

艶女の生き様を想えば
儚き夢に身を委ねて
一夜の恋に命を燃やす
女の誇りと美学であろう

見果てぬ夢を追い求め
女は命をかけて生きる
その生き様こそが美しく
男の心を虜にするのだ

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眞名井 宿禰(眞名井渺現堂)
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