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靈韻抄 芳醇
春はしづかに訪れぬ
山の麓、薄紅の花
朝露に濡れ、風に揺れ
芳しき香、天へと昇る
野に咲く花、やがて實り
風が傳ふ香を孕みて
其の息吹、地を潤し
萬の命、力を得ん
青葉繁り、梢の影
鳥の囀り、溪を巡り
水の音は靜かに谿流れ
深き緑、幽谷へ消ゆ
里の果て、田に實る穗
黃金に染まりぬ
其の彩り、豐かなる手
土を養ひ、力を滿たす
夜の帳、星の光
一瞬の輝き、永遠に
其の光、夢を誘ひて
心の底、靜かに照らす
夏の宵、夕凪に
蟬の聲、木々を通ひ
蒼空は果てしなく
地に根ざす香、重ねらる
川のせせらぎ、巖を滑り
涼しき音、風を呼び
涼風となりて心を吹く
人々の胸、穏やかに包む
秋はまた、實りの時
黃金の田、風に揺るる
秋の實り、豐かにして
大地は息づき續けぬ
稻穗は頭垂れ
その重さ、歲月の證
人は手に取りて敬ひ
芳醇の惠、共に享く
紅葉は山を彩り
風に舞ひて、天を渡る
其の儚き姿こそ
芳しき時の賜物
冬は靜けき足音にて
白雪、音もなく降りぬ
大地を包み、しんしんと
冷たき風、心に沁み渡る
圍爐裏にて手を温め
茶の湯の香、胸を満たす
炎の揺らめき、穏やかに
冬の寒氣、和らぎぬ
その間にて、年は巡り
四季の流れ、また始む
芳醇の刻は常に續き
大地は香を放ちて語る
人の歩みもまた香り
時を重ね、潤ひを得
其の道、芳醇なりし
大地と共に息づきて生く
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![眞名井 宿禰(眞名井渺現堂)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/151159027/profile_3b39a77900f42001630fa0a4f459707f.jpg?width=600&crop=1:1,smart)