母だけど、イタリアに一人旅してきた。
「ぷはは!古代ローマ人が日本の銭湯にタイムスリップするなんて最高!!」
息子を寝かしつけ後、きのこの山を食べながら、尻もぽりぽり掻きながら、テルマエロマエを読んでいた。
当時、慣れない育児に追われる日々。
現実逃避をさせてくれて、子供のことをシャットアウトできる漫画やドラマを好んで見ていた。
「子育て終わったらイタリア行こうかなぁ〜」
そんな私の独り言に、夫がご飯の残りをラップに包みながら反応した。
「先なんてどうなるか分からないし、今行けば?半年後にまとまった休みとれるから、子供は預けないで、ずっと見れるし」
「え?いや・・・母だけで海外旅行なんて普通はありえないでしょ!?」
だって子供はまだ乳児だ。1週間近く可愛い盛りの我が子と離れて、全てをパパに託すなんて心配で心配で海外旅行するなんて前代未聞!そして、罪悪感も半端ない!!
「こんな事言ったら怒るかもしれないけど、はるちゃんは最初から普通じゃないじゃん」
夫がケラケラ笑いながら言う。
あぁ、確かに。私は変人な一面があると妙に納得した。私は最初から普通じゃない。
だったら、最初から素敵なママなんて目指さなくていいのだ。
息子にできる範囲の愛情を与えていれば。最低限の衣食住と清潔さを提供していれば。習得できるかは別として、躾やあらゆるルールを伝え続けていれば。
そして、この時期はネガティブな思考になっていたので、夫なりに気を使ってくれたようだった。
夫の言葉に甘えて、独身時代の貯金を使うことを約束のもと、9月にイタリアに行くことにした。こんな風に有言実行するのが、やっぱり変人だなと自分でも思う。
ちなみに、イタリアのスケジュールはこんな感じ。
過去に一人旅で訪れたNY、フランス同様に、わたしのこだわりでもある個人手配にした。 国内移動は全てイタロ。(日本でいう新幹線)
バチカンには立地がいい所にB&Bがあったので、ホームページから直接予約して事前決済した。オーナーの住まいの数部屋を民泊にしてるようだった。
ただ、困ったことに、数日待ってもリコンファームがこない…
心配になった私は、チャットでオーナーに連絡をることに。すると、彼女がとてもいい人で空港からバチカンまでの行き方など手取り足取り教えてくれた。
もちろん私の英語力は幼児レベルなので和訳アプリを使って。
*
待ちに待った旅行の前日。
再び彼女に「明日はよろしくお願いします」と連絡を入れると、返事が来た。
ん、なんだろう?さてさて、Google様で訳してみましょうかね。
えっ!?おっ怒ってる!?ナンテコッターーーーー!!!!
こえぇぇ、何を書かれるんだ。私しつこくチャットしすぎた?愛想つかした??
再び 調べてみると、infuriation=激怒、憤激とでてきた。
普通の怒りじゃなくて、激怒って、わたしゃ誰かを怒らせる天才か!?
少し涙目になる。どうしよう、急遽違うホテルに泊まろうかなと思いながら、 恐る恐る、激怒?と聞き返す。
すると、返信が来た。
なんだよインフォメーションかよーー!!
よかったぁぁと、一安心。
このように前日からプチ事件があっけど、無事に日本を飛び立った。夫よ、ありがとう。この感謝は一生忘れません。
飛行機内は20代くらいのカップルが多め。新婚旅行かな?
チャットでプチ事件があったけど、B&Bのオーナは本当に素敵な人で、バチカン博物館の近くにあり観光に最適でした。
翌日はバチカン美術館を観光。
午後からは、フィレンツェへ。
ホテルはドゥオモの近くにあり、バルコニー付きの4つ星ホテルだけど、朝食込み1泊3万円と比較的リーズナブル。
チェックインしてからは、街をブラブラ。
そして翌日はサンジミニャーノに日帰りで行くことに。
ツアーではなく、フィレンツェから出てるローカルなバスを乗り継いで2時間ほど。意外と問題なく行けてほっとする。
世界遺産にも登録されているサンジミニャーノはあらゆる所に塔が並んでる中世の街。
この素敵な街に圧倒されて、日帰りがもったいなく感じた。急遽ブッキングコムで宿泊先を探して一泊することに。
そして後にこの決断に後悔する・・・。
まず受付をしようとするとスキンヘッドでマッチョのコワモテのおじさまがいた。
先ほどネット予約して支払済の旨を伝える。
そしたら彼は、キャンセル、キャンせル!と連呼しているのだ。
いや正確にいうと、キャンンセルしか聞き取れない。自分の英語力の低さにげんなりする。
なんやねん。さっき確実にネット予約して18000円支払ったよ!
彼は苦笑しながら、和訳アプリの読み上げ機能を使った。
「ブッキングコムをキャンセルしなさい」
「ホテルで直接決済すれば10ユーロ安くなります」
「キャンセル料はかかりません」
なるほど、ブッキングコムのマージンを払わなくていいから、安く済むということか。このおじさんいい人じゃん!正直10ユーロだし、面倒だなぁ思いながらキャンセルすることにした。
そして部屋に案内される。想像より素敵なホテルと部屋!窓からの景色が最高だった。
きゃー!
憧れのトスカーナの田園風景だーー!
街ブラした後は早めにホテルに戻り、19時過ぎには就寝することにした。
20時のサンジミニャーノは観光客がいなくなり、街が静寂に包まれた。
バンバンバーーーン!!!!
突然、とてつもなく大きな音が響き渡った。そして叫び声も聞こえた。
何事だ!?布団からむくっと起き上がった。え、も、もしや拳銃!?テ、テロ!?
この時、あまりに驚いて、私は冷静な判断ができなかった。イタリアの田舎に英語を喋れないアジア人が1人。一気に不安と緊張感が高まった。
ど、どうしよう…。むかし映画で見たアンネの日記を思い出して、とにかく音を立てずにベッドの下に隠れた。
本当は受付に行って、大きな音は何かと聞きたかったのだけど、なんせ、受付は強面マッチョのスキンヘッド。犯人はヤツかもしれないとなんて思ったからだ。
そういえば、チェックインにキャンセルと大きな声で言っていたのも、他の意図があったとか?
ホテルも外もやたらとシーンとしていた。不気味なくらいの静寂さが余計に怖くなった。そして、我慢していたけど・・・トイレが限界だ。
そーっと、トイレに行ったけど、水は流せなかった。音を立てるのが怖くて…
そして、再び銃声のような音が聞こえてきた。
昔の人ってこんな気持ちで隠れてたんだ・・・。
私は朝まで祈りながら、家族の写真を時には見ながら、一睡もせずに夜を過ごした。
朝、おそるおそる、受付に降りてみる。一階が戦いの場になって血だらけになってるかもしれないと思いながら。。
そうするとスタッフさんが朝食の準備をしながら爽やかなか「goodmorning!」と声をかけてきた。
誰かに会えた安堵で、体が崩れ落ちそうにった。
和訳アプリにて、昨日の大きな音について聞いてみると、「NO!」と彼女は首を傾げてる。
そして、強面スキンヘッドも丁寧に私を朝食会場に案内してくれてコーヒーを注いでくれた。
なっ、何もないのね!よかったーーーーー!!!
この日ほど心の底から安堵しては、生きていることに感謝したことはなかった。
だけど、昨夜の大きな音と叫び声はなんだったのだろう?
外に出るとホテルの隣の家に救急車が止まっていたので、その家のトラブルとか?爆竹とかかな。
そしてサンジミニャーノでは日中は観光客が多い為、夜と早朝に車の通行許可が下りてるそう。その車の開け閉めとかエンジンの音?
なんか、本当に取り越し苦労で、自分の勘違いってヤバイレベルだなと反省した。夫に電話で報告したら「はるちゃんって、妄想の世界で生きてるんだね」と言われてしまった。そう言われてもしゃーない。 幻聴かも(笑)
*
それからは無事にフィレンツェに戻ったけど、ホテルに戻る途中に豪雨になり、びしょ濡れになった。そして、昨夜一睡もできなかったせいか、寒気が止まらない。
顎がガクガクブルブル。窓からドゥオモを見ながらどんべぇを食べて持参していた薬を飲む。くぅー!どんべぇウメェ!!
夕方にウフィツィ美術館の予約をしていたけど、行けなかった。しょーがない!
*
翌日、この日はベネチアに移動する日。
ただ、ここでも事件が起こった。
ちなみに昨夜しっかり寝たお陰で、体調はばっちし!ウフィツィ美術館をリベンジしたり、ひたすら街巡り。
そしてフレンツェのドゥオモを間近で見てうっとり。。
さーてと、ホテルに戻ってチェックアウトしますかーっと。
たたたーと歩いてると、長身の黒人がすごい形相で追いかけてきた。
彼の言い分を聞いてると、
地面に商売用の絵を置いているのを、
6枚お前が踏んだから、買い取れ!60ユーロ!!と言っていた。
げっ、しまった。フィレンツェの地面に置いてある絵に注意するのは、予習済みで初日から踏まないように気をいたが、ドォオモに見とれて少し踏んでしまった…。
でも6枚は踏んでないぞ。「NO!」と伝えても彼の形相は変わらない。絵を踏んだから買い取れと。
本当は大きな声でポリスと叫んだら良かったのだけど、チキン野郎な私は勉強代と思い60ユーロを出そうとした。
が、54ユーロしかなかったのだ(笑)
や、ヤバイ、現金使いすぎた・・・。
彼はあと6ユーロ!と銀行を指差しお金を下ろせと言い出した。
「カモン!」
そして、ATM の前まで、連れてかれた。たーすーけーてー(涙)
ベネチアへの新幹線の予約時間が迫ってる、早く解放させてーと思いながら、わたしは身につけていたグッチの時計を差し出した。これで勘弁してれと。
その時計をマジマジみると、時計はいらないようで「NO!」と返品された。いや、それ本物よ?
そして、54ユーロだけ奪っては逃げていった。 無一文になり涙目になるわたし。
まぁ、パスポートとクレカは無事で良かったけど。体も無事で良かったけど〜〜!
てかこの際、グッチの時計持っていけよなー!見る目ないんだからっ。
まぁ、それは強がりで初のボーナスで買った時計だから無事でよかった。
*違法行為なのでお金は払う必要はありません。ポリスと叫んで助けを求めてください。(しかも絵はコピーです)
こんなトラブル起きた時に、英語喋れないひとり旅はやはりリスクあるね・・・。まぁ、切り替えてベネチアに行きました。チップ払えないよーー
*
ベネチアでは特に何もせず、街歩きしたり、ホテルが素敵だったので3日間ゆっくり過ごしたり。
フィレンツェの素敵な街が忘れられなくて日帰りで再び訪れたり。
フィレンツェでは地面ばかり見て、絵を踏まないように意識した。なんせ現金ゼロ、次に絡まれたらマジでヤバイ。ずっと下向いていたよ…
そして、訪れたかったフィレンツェの乳児院へ。
そして8日目はローマに戻り、コロッセオの近くのホテルでゆっくり。
翌日は朝からコロッセオ、フォロ・ロマーノを満喫。
*
こんな感じで、色々あったけど、満喫できたイタリア旅。
帰国して思うよね、あぁ日本て本当に安心な国だなぁって。銃の心配はないし(妄想)、親切だし、ポケットティッシュ無料だし、100均のクオリティ凄いし、物価上がってるけどそれでも安くランチできるし。日本最高!
そして、母になって1人で海外行くなんて思ってもなかったから、自分でもびっくりしてる。
独身の頃のわたしは、母になったら、当たり前に色々と諦めないといけないと思っていた。小さい子がいるんだから、我慢して当たり前、楽しむのは子育てが終了してから…。
だから、自由気ままが好きなわたしにとって、20代は子について考えるのは先送りにしていた。だけど、母になっても、仕事して、自分の時間を捻出して、わたしの人生を生きている。これは嬉しい誤算だった。
ちなみに、休日は家族と公園にも行くけど、子供を交代で見ては一人時間を互いに確保するようにしている。
この時間があるから、母ちゃん業も頑張れる。もちろん、家族でもお出かけも好きだけど、1人でカフェで本を読む時間って特別だよね。
来年は夫が西表島にひとり旅する予定。
我が家では、誕生日プレゼントに欲しいのが無ければ、時間をプレゼントすることになった。誕生日1回につき3日間の時間。私は今回10日間だったので、2年分誕生日を前借りした。
なので次の誕生日プレゼントは約3年後かな。
そんな我が家はイレギュラーだと思うので、何も参考にはならないと思うけど、
これからも、わたしの時間も、家族の時間も大切にしながら、生活を楽しみたいな。
(姉には、あんたの行動ありえないと大バッシング受けました笑)
最後まで、お読み頂きありがとうございました!