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DV相談のお仕事12

DV被害者支援をする際は児童相談所と連携をするように言われるが、難しいのはなぜか?

母を助ければ子どもも助かると前回書きました。子供の目の前で父親が母親を殴ると、児童虐待とみなされて、通報を受けた警察署は児童相談所に虐待通告をする義務があることもお伝えしました。

その結果どうなるか。

児童相談所の職員が家庭訪問する。「暴力はいけませんよ。虐待ですよ。やめましょうね」と言って帰って行くと相談者はみなさん言います。

やめましょうと言ってやめられないからDVなんだろうと、突っ込みたくなりますが、あまりにも御粗末で短絡的な「指導」がまかりとおっています。

児童虐待の増加で職員を急いで増やしても、すぐに一人前になるわけでもなく、新人職員が一生懸命仕事してくれるけど、知識と経験不足は否めないのです。

でも、問題はそこではないのです。DV支援と児童相談所が連携できないのには、決定的な考え方の違いがあるからです。

DV支援者は、母が被害者、父は加害者なので両者は対等な関係ではない、力で支配する父、支配される母と捉えてます。

一方の児童相談所はと言うと。

父も母も親権を持つ対等な関係、子供への虐待がある以上、両者は同じ加害者と見ます。その結果、けんか両成敗のように「お父さん、お母さん。DVはいけません」になってしまうのです。

児童相談所とは、これまで数えられないほどやり取りしてきました。子供を守るために連携をはかってきました。喧嘩腰のやり取りも数知れず…(母と子供を守るためですから、譲りませんよ。おかぴは!)

うまくいったことも、もちろんあります。「さすが児童相談所」と感じたこともあります。婦人相談員と違って児童相談所に与えられている権限はすごいのです。職員の踏ん張りに頭がさがることも多々あります。

でも母に対する見方がまったく違うのです。

「力の無いお母さん」

と言う表現を児童相談所はします。どういう意味かと言うと、「子供にうまく関われない。子供を育てる力がない」と言うのです。

私たち、婦人相談員はDV被害を受けた母が、力を奪われて、金も渡されず、駄目なやつと言われ続けた経緯を知っています。

言葉や身体暴力、経済的な締め付けで気力も体力も判断力も奪われたと考えています。

DVがある夫婦は決して対等ではないこと、子供の親権を持つものとしては対等でも実態は上下関係、支配する者とされる者の関係性です。

父親や継父からの虐待で亡くなった心愛ちゃんや結愛ちゃんも母へのDVが背後にありました。助かる命を救いたい、母をDVのある環境から救いたい、そうすれば子供の命も助かると思ってます。そして、母の回復する力を信じています。

追伸

もちろん力があまりないなあと思う母もいます。(実際のところ少なからず)でも完璧な母もどこにもいないのです。「普通このくらいはできるでしょ」とか言う人もいるけれど、普通とか当たり前を取っ払って、力が無い母は無いなりに力を発揮して回復していくものです。そこを支援するのが婦人相談員の仕事です。力を信じる、力がないと決めつけないことが大事だと思っています。




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