もう一度見つめなおす自分「憂うつの根本的な原因(暗黙の仮定を見出す)」『いやな気分よ、さようなら』第十章
さて、十章です。今まで学んだことを実践したあなたは、もしかしたら憂うつな気分が消える経験をしているかもしれません。それは人生を楽しみ、肩の力を抜く絶好の機会です。ではうつ病は本当に治ったのでしょうか?
僕は一度目の回復期に症状が消えるこの手の経験をしました。とある出来事をきっかけに、スイッチが切り替わったように憂うつな気分が消えました。とても単純な出来事だったのですけれど。
しかし、ご存じのように僕は再発しました。つまり、治ったような気がしていたのです。治ったような気がするのと、本当に治ったこととの間にはいくつかのちがいがあります。治ったような気がするときはよくない兆候がちょくちょく表れます。だから今一度自分を見つめなおしましょう。
本当に治るために自分をもう一度見つめなおすチェックをしよう
今日のポイントはこれです。
では、本当に治った場合とはどんな状況でしょうか?以下にの四つの項目に当てはまるならそう言えるでしょう。
①どうして憂うつになったかその原因を知っている。
②なぜ、あるいはどうやったらよくなるかがわかる。
このことは自分自身にだけ効く特別な立ち直り術を体得して、それを必要に応じて再度適用し、効き目を発揮いできることを意味する。
③自信と自負心を持つこと。
自信というのは、人間関係の中で、また仕事において、自分に見合った成功を得るだけの良い機会に恵まれているということをわきまえてこそ生まれる。自負心は、自己愛をできる限り感じ、成功しようがしまいが人生をどんなときにも楽しめるということ。
④もっと深く憂うつの原因を探ること。
今までは①と②に到達するための助けをしてきました。これからは③と④についてです。
暗黙の仮定
今まで学んできたことを通じて、否定的考え方は憂うつな状態から抜け出した後、ほぼなくなったかあるいは一掃されたかもしれません。しかし心の中には自分では気が付かない小さな「暗黙の仮定」がそのままになっています。これは、なぜうつになったのか、いつまた傷つくのかを前もって知れる手助けになります。
暗黙の仮定とはいったいなにか。それは以下のようなものです。
①誰かに避難されると、自分がどこか間違っているような気がして惨めに感じる。
②本当に完璧な人であれば愛されるはずである。もしひとりぼっちだとしたら、寂しく惨めになる覚悟を決めなくては。
③人間としての価値は、自分の成し遂げてきたことに比例する。
④もし完全に行わなかったら、感じなかったら、あるいは振舞わなかったら、私は失敗したことになる。
こういった非理論的過程によって、あなたは台無しになり気分の動揺をきたしやすくなります。あなたの心理的アキレス腱です。
この章の目的は暗黙の仮定を確認し、評価することを学ぶということです。
暗黙の仮定を確認する二つの方法
ここでは暗黙の仮定を確認する二つの方法を紹介します。
一つ目は「矢印法」です。
矢印法
これは、第四章で紹介したダブルカラム法をなぞっていくもので、その中にいかに自分の狼狽の気持ちを書き表すか、また道理にかなった答えにすり替えるかを学びます。上司に仕事上のミスを指摘された部下の例を見てみましょう。まずは図のように自動思考の真下に向けて小さな矢印を書きます。
そしてこう自問しましょう。「もし自動思考が真実だとしたら、どんな意味があるのか。なぜ、自分は動揺するのか」と。これを繰り返すうちに問題を引き起こしている暗黙の仮定へとたどり着いていくのです。
そのあとはもうわかりますね。今度は合理的な反応を↓のように書いていくのです。
気が付いた人も多いと思いますが、この「矢印法」はいつものやり方と正反対です。この方法は歪められた思考を正しいと仮定することで問題の核心に迫ります。
※注意事項
間違ってはいけないのは、自動思考に、つらい、苦しい、耐えられないなどの感情をかくのではなく、その感情に至った否定的な考えを描くことのです。なぜつらいのか、なぜ苦しいのか、なぜ耐えられないのか、その原因を描くのです。あなたを動揺させる状況がどういう意味を持つのかということを意識しましょう。
態度の歪み発見スケール(DAS)
さて、二つ目は「態度の歪み発見スケール」です。「態度の歪み発見スケール」は、アーリーン・ワイズマン博士が開発した方法です。これは、情緒障害を起こす傾向のある人100人のリストに基づくものです。次にあげる35の質問に答えてください。実際はもっと長いので、これは簡易的なものですが、きっと役に立つはずです。
答え方は簡単です。全部で35の設問があります。自分に最も当てはまると思われるものを選ぶのです。計算方法は以下の通りです。
得点計算方法
「強く同意する」 -2点
「少しは同意する」-1点
「どちらでもない」 0点
「少し違う」 +1点
「非常に違う」 +2点
1~5、6~10というように5問ずつ得点を合計してください。
それでは5問ずつひとまとめにして質問を挙げていきます。
1.人は批判される事によって明らかに動揺するものである
2.他の人を喜ばせるためには自分の興味あるものを一切捨てるのが 一番良い方法だ
3.幸福になるためには他人の賛同が必要だ
4.誰か自分にとって大事な人が何かを期待してきたら、 それに沿うようにするべきである
5.自分の人間としての価値は、他人が自分をどう思うかによって 決まる事が多い
合計点=
6.誰にも愛されていないのに、幸福であるはずがない
7.誰かに嫌われたら、幸福感が損なわれる
8.自分が世話をしている人に拒絶されたら、非は自分の方にある
9.愛する人に愛されていないのなら、自分には愛されるだけのものがないのだ
10.人々から孤立したら不幸になってしまう
合計点=
11.価値ある人になるためには多くの点で目立つものがなければならない
12.役に立ち、生産的で、創造的な人間でなければならない。さもなければ 人生は無意味になってしまう
13.何か良いアイデアを持っている人はそうでない人よりも価値がある
14.人と同じようにできないという事は、自分は人よりも劣っている事を 意味する
15.仕事で失敗したら、人間としても失格だ
合計点=
16.上手にできないくらいなら、やらないほうがましだ
17.弱点を人に見せることは恥ずかしいことだ
18.引き受けたことは何でも全力をつくすべき
19.もし失敗したら動揺するだろう
20.もし自分を高い水準に置く事ができなければ、二流の人間で終わってしまう
合計点=
21.もし自分が何か受けるに足るものであれば、当然それを受ける理由がある
22.障害があって欲しいものが得られない時は、 欲求不満になるのもやむをえない
23.先に人の要求を聞き入れてあげたら、 何かしてほしい時にその人に手助けを要求するのは当然のことだ
24.私が良い夫(妻)なら配偶者は愛してくれるはずだ
25.誰かに良いことをしてあげればその人に尊敬され、 私がしたと同様な扱いを受けられると思う
合計点=
26.自分に近い人に対しては、 その人の感じ方や振る舞い方に責任を持つべきだ
27.人のやり方を批判した時、その人が怒るかふさぎ込むかしたら、 それは私がその人を動揺させたからだ
28.善良で、価値のある、道徳的にも優れた人になるためには、 助けを求めている人があればその人を助けようと努めなければいけない
29.子供が情緒的に、或いは行動的に問題のある場合、 その両親が大事な点で失敗をおかしたことを示している
30.私は皆を喜ばすことができなければいけない
合計点=
31.何か悪い事が起きた時に自分がどう感じるか コントロールできそうにない
32.動揺する気持を変えようとすることは意味がない。 それは正当な、日常生活の避け難い一部分なのである
33.私の気分はまず第一に大半が自分でコントロール出来ないような 要素つまり過去の出来事や体の生化学的性質、ホルモンサイクル、 バイオリズム、或いはチャンスや運命といったことから作り出される
34.幸福の大半は自分の身に何が起こるかによって決まる
35.成功者の証を持っている人々(美貌、社会的地位、富、名声)は、 それを持たない人より幸福になる可能性が高い
合計点=
各5問の設問にはそれぞれ、「承認依存度」、「愛情依存度」、 「業績依存度」、「完全主義度」、「報酬依存度」、「全能感」、 「自立性」といった価値基準に対応しています。その価値基準ごとに合計点を 計算してグラフを作成してみましょう。
価値基準 態度(設問) それぞれの点数 合計点の価値基準
1~ 5 →承認依存度
6~ 10 →愛情依存度
11~15 →業績依存度
16~20 →完全主義度
21~25 →報酬依存度
26~30 →全能感
31~35 →自立性
各項目が、プラスの得点なら、その分野においてあなたが心理的に強いことを表しています。マイナスならば、そのことに対して傷つきやすい面があることを表します。
DASスコアの解釈
それでは各項目の解釈を見ていきましょう。
①承認依存度(1~5)
承認依存度はあなたが自己評価をどの程度他人の反応で測っているかを探るテストです。端的に言えば、どの程度「自分」というものをもっているのかです。
スコアが+10に近づけば近づくほど、あなたは、批判にさらされても自分自身の価値観をもつ自律的な人間であることを表します。
反対に-10に近ければ近いほど、他人の目を気にし、あなたが依存的であることを表しています。自分がどう思われているかにい所に敏感で、人の意見で自分の行動をすぐに変えてしまう人です。
②愛情依存度(6~10)
愛情依存度ではあなたが自分の価値を人に愛されているか否かで判断する傾向があるかどうか評価します。
プラスの点なら、あなたが愛情を望ましいものととらえているか、ほかに満足感や充足感を味わえるような対象を幅広くもっていることを示しています。
マイナスの場合はあなたが愛情中毒者であることを示しています。愛情がなければ生きていけないし、こうふくにもなれない「必然」ように見る傾向があります。嫌われるのが怖いから自分の意志を抑えてしまうため、結果人からは尊敬されないし、重荷になってしまいます。
③業績依存度(11~15)
業績依存度はこれまでとは違うタイプを測る目安になります。
マイナスの点数がでたら、あなたはワーカホリックです。-10に近づけば近づくほど自分に対する価値や楽しむ能力は、自身の生産性に依存します。経済不況=情緒的うつ病というわけです。
プラスの点数は反対にあなたが創造性や生産性を楽しんでいることを示しますが、だからといってそれが自負心や満足を得るための究極の、あるいは必然的な方法と思わないでください。
④完全主義度(16~20)
完全主義度のスコアがマイナスならばあなたは完全主義者です。非現実的で実現不可能な自分だけの標準をもっているので、たとえ何かを達成しても満足することはありません。
プラスの点数は、あなたが柔軟で適切な標準を想定する能力があることを示しています。
⑤報酬依存度(21~25)
報酬依存度はあなたの「報酬」に対する感覚を測ります。
マイナスならあなたは成功や愛情や幸福などの報酬を受ける資格があると考えています。一生懸命な自分は他人や世の中が自分の欲求を十分満たしてくれるのが当然だと期待し、要求します。自分の思い通りになると思っているタイプです。
プラスの点数ならあなたは様々なことに対して、自然と権利を有しているなどとは思わないことを示しています。ほしいものがあれば交渉し、たいていはそれを得ることができます。
⑥全能感(26~30)
全能感は自分自身を個人的世界の中心と見なし、自分の周りで起こっていることの大部分に自分の責任を感じる傾向があるかを測ります。
マイナスの点数は第三章と六章で扱った個人化の間違いを犯していることになります。すべてを自分のせいにしてしまうのです。
プラスの点数は、自分が世界の中心ではないという考えにより、人生に楽しみがもたらされることを知っているということを示します。他人の管理下にないわけなので、自分自身の責任を取りますが、他人の責任は背負いません。人を管理しようという考えを捨ててしまっているために逆に人が近づいてきます。影響力のある人間として迎えられるのです。
⑦自律性(31~35)
自律性は、あなたが自分自身の中に幸福を見出す能力があるかどうかを測ります。
プラスの点数は気分はすべて自分の考えや態度から作り出されたものだということを示しています。
マイナスの点数はその逆で、自分の楽しみや自負心は外の世界から与えられるものだという考えにとらわれていることを示します。
以上です。
次の章からは、こうした態度や価値体系を細かく検証していきます。そのひとつずつについて次のように自問してみてください。
①この独自の信念を持ち続けることは自分にとって有利なのか。
②この信念は本当に正しくて価値があるか。
③自己防衛的で、非現実的な態度から解放されるために、また、より客観的で自分を向上させるようなほかの態度に帰るために、どんな段階を踏めばいいのか。
以上十章でした。僕のDASは、順に10、0、0、3、-2、2、4でした。まったく耳が痛いことです。
とはいえ、ここで気になったのは、僕が初めてこのスケールをやった時とは明らかに点数配分が変わっているということでした。僕がこの気分を少しでも克服できたということかもしれません。
次章は、いつも認められたい承認中毒の話です。SNS依存などにもかかわりそうですね。引き続き耳が痛い話が続いていきそうです。
チョコ棒を買うのに使わせてもらいます('ω')