#19 神様は私の欠陥を治してくれなかった
(1224字・この記事を読む所要時間:約3分 ※1分あたり400字で計算)
私は、心に欠陥を持った状態で生まれた。
考え方から感覚まで、何もかもが周りと違い過ぎた。
幼い頃から叱られては叱られ、「もっと普通になさい!」と要求されて育った。
その要求に必死に応えようとした。
でも、具体的にどうすれば良いか分からなくて、色々な人に聞いたり本を読んだりした。
それでも、やっぱり理解出来なかった。
見よう見まねでやってみても、ついていけなかった。
ビリッカスだった。
精神を常に張りつめていて、毎日クタクタだった。
寂しかった。
悲しかった。
皆のことが知りたかった。
そして、自分のことも皆に分かって欲しかった。
ある日、教会で牧師先生がこう教えてくれた。
「今の悩みを、神様に祈ってごらん。
人間ではどうしようもない問題も、神様なら必ず解決してくれる」
その次の日から、私は毎日にひざまずくようになった。
私を「普通」にして下さい。
欠陥が無い心を下さい。
私という「間違い」を、治して下さい。
そう祈り続けて、1年、2年、5年、10年……
長い年月が経った。
どんなに待っても神様は私の欠陥を治してくれなかった。
その間、私は10代の少女から30代の女性へと育っていた。
学生時代が終わり、学校を卒業し、社会に出た。
「普通」にはなれなかった。
その代わり、私は「普通らしく」装う術をたくさん身に付けた。
言葉の裏を考えるようになった。
「空気」の読み方を研究した。
コミュニケーションでの受け答えの「パターンノート」を脳内に作った。
おかげさまで無事就職し陽気な仲間達に恵まれ、趣味の習い事教室でも仲良くなりたいと言ってくれる友達が出来た。
(ずっとずっと『普通』の練習をしてきて良かった)
(このまま『普通の人間』っぽく生きていけば上手くいくんだ)
そう思っていた矢先ーー
「竹子は、不思議ちゃんだな」
「そうそう、独特な雰囲気あるよね」
「個性的というか、なんか特別な感じがする」
仲間達に口々にそう言われた。
「しまった」、と思った。
皆と仲良くなり過ぎたせいか、私は自分をさらけ出し過ぎたのだ。
「普通」で自分を覆い隠すことをおろそかにしてしまった。
過ぎ去った1つ1つの辛い出来事が、傷が、どうしようもなさが脳内をよぎった。
悲しみで心がいっぱいになった。
(頑張っても、何も変わらなかったんだ)
(結局私は、可笑しくて、異質な存在だったんだ)
(また、嫌われてーー)
考え終わらぬうちに、仲間達が続けて言った。
「素直でピュアで、真っ直ぐでさ、いつも一生懸命で申し分ないよ!」
更に、こう付け加えたーー
「素敵だね!」
嗚呼!
こんな私でも、受け入れてくれる人がいたんだ。
愛してくれる人は、いっぱいいたんだ。
私は素敵だったんだ。
愛されても良かったんだ。
たくさん泣いた。
大声を上げてわんわん泣いた。
どんなに待っても、神様は私の欠陥を治してくれなかった。
でも神様は教えてくれたんだ。
君に欠陥なんてない。
そのままの君でいていい。
私は、間違いなんかじゃなかったのだ。
そして自分を受け入れることが、何よりもの「癒し」だったんだ。