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(映画感想文/短歌)『アンデッド/愛しき者の不在』

『アンデッド/愛しき者の不在』※ネタバレなし感想文

息子を亡くした母親、アナは悲嘆に暮れていた。彼女の父親であるマーラーと暮らす集合住宅には、重苦しい空気が流れている。ある夜、墓の下から微かな音が聞こえることに気がついたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫を自宅に連れて帰ってしまう。その頃、街では理解のできない現象が他でも発生していたーー。

北欧ノルウェーを舞台にしたホラー映画。サンダンス映画祭、ノルウェー国際映画祭で賞を受賞し、独立系映画スタジオ【NEON】により、英国や北米でも公開されたとのこと。
音楽、映像共に良く、ホラー映画ながらも抑制が効いた繊細な演出で、恐怖よりは、「もし、大事な人が『アンデット(ゾンビ)』になってしまったら」という視点で、人々の混乱やかなしみを描いている。ノルウェーが物語の舞台で、いわゆる北欧的な美しい風景・映像が特徴だが、機能的で無駄な装飾のない街並みを見ていると、美しさとは、時に不気味にも見えるものだと感じる。35ミリフィルム撮影による、ざらりとした映像のせいかもしれない。

内容としては、前半の、アンデッドにかかわる人々、というか不意にかかわらざるをえなくなった人々の感情が丁寧に描かれていて良かったが、後半はやや物足りなくも感じた。ゾンビ映画に細かい説明を求めるのも野暮かもしれないが、この世界に起こっていることに対する何らかの示唆や少しの説明があれば、物語にも、より深みが出たと思うのだけれどもーー。
『アンデッド/愛しき者の不在』個人的評価:★★★☆☆

こんな人におすすめ

ホラー映画でありながら繊細な人間ドラマでもあるので、ホラー映画を普段観ない人でも普通に観れると思う。逆に、ホラー映画として期待して観ると、やや物足りなく感じるかもしれない。ショッキングなシーンもあるけれども、いわゆるグロいシーンは、ほとんどない。そういったシーンが少ない分、その数少ないシーンがより怖かったりするのだが。

短歌/『アンデッド/愛しき者の不在』

アンデットという理解できないものに対峙したときの戸惑い、混乱、そしてそれが、かつての愛する者であったならーー。湖を舞台に、ある印象的な場面があるのだけれど、そこからイメージして詠んでみました。

愛しくて哀しくてでも湖に立つ波のごと行き場はなくて

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