MMS180井本さん

「人類学を学び世界中がつながる未来を志す」教育人類学者 井本ゆきさん

●ご挨拶と出演者紹介

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三木:マインドフルマニュファクチャリングストリーミング第180回本日も始まりました。本日はZen2.0で色々お世話になった逗子の井本さんにお越しいただきまして、井本さんの色んな活動とか研究されてることを伺っていきたいと思います。本日はありがとうございます。

井本:ありがとうございます。


●enmono三木との出会いについて

三木:井本さんと私はこの番組にも出ていただいたスタンフォード大学の重松先生の本の出版パーティでお会いしたんです。

その時にこれからスタンフォードに行って1年間研究するという話をされていて、次にサンフランシスコのWisdom2.0(世界最大のマインドフルネス関連国際カンファレンス)でまたお会いして、その時は重松先生のラボにいたんでしたっけ?

井本:そうですね。2017年から。

三木:ちなみにどんなことを研究していたんですか?

井本:重松先生は『スタンフォード大学マインドフルネス教室』っていう本を2015年に出版されてますが、

それを読んで重松先生の教育のアプローチにすごく関心を持ったので、実際に1年間留学期間中スタンフォードの重松先生の授業に参加して、自分も学生の身になってマインドフルネス教育とはどういうものなのかを体験的に学んできました。


●井本さんのご経歴について

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三木:井本さんはその前にどういったことに興味を持って色々活動を…特に教育なんですよね?

井本:教育人類学が専門で多文化教育とか外国の教育とか、私自身帰国子女で色んな国の教育を受けてきたので、移動する人々とか越境する人にとっての教育とは何なのかをテーマにずっと研究しています。

三木:もうずっと海外にいたんですよね?ヨーロッパが主でしたっけ?

井本:ヨーロッパ、イギリスが長いですね。

三木:何歳ぐらいから?

井本:生まれたのはシンガポールで、その後幼稚園が日本で小中がイギリスで高校大学が日本で、またイギリスに行ってその後色々グルグルしていて、今は逗子です。

三木:自分としてはナショナリティっていうのはどういう感じなんですか?日本人?

井本:ナショナリティは海外が長かったからこそ日本人とは何かとか日本文化とは何かということにすごい関心があって、大学院でも専攻は教育人類学で日本について知りたいっていうのがあって、日本の教育について勉強していました。

三木:ヨーロッパとか他の国にいると日本のことを聞かれるのが多いんですか?「日本の歴史とかってどうなの?」みたいな。

井本:聞かれることも多いし、自分は常にみんなと違うマイノリティなので。

三木:そういう違いを感じながらここの中にいるという感じですか?

井本:そうですね。いつも端っこで見てる感じで、だから人類学がすごい性に合うんです。

三木:そういうことなんですね。いつもクラスの中でもあまり…

井本:中心ではないです。

三木:一応会話とかあるけど少し外れて見ているみたいな。

井本:そういう立ち位置が心地よくなりました。そういう育ちのおかげで。

三木:それで人類学というところに目覚めて?

井本:はい。人類学はまさに“ボーダー”という何かと何かの狭間にいる人達がする学問だったり生き方なのですごい自分には合うなと思って。重松先生もそういう狭間を生きてきた方なので、そこでもすごく共感できて。

三木:さっきおっしゃってた教育学と人類学を合わせたカテゴリーがあるんですね。それはどういうアプローチというか実際にそういう場に自分が参加していくんですか?

井本:人類学なので体験が一番重要なんです。だからいかにその場のコミュニティに入り込んでそこの一員になりきって、同じ体験をしてそれを言葉にできるかっていうのが人類学の肝だと思って、教育以外のある部族の研究をする人とかもいるんですが、私は現代社会の教育っていう現場に入り込んでその内側の視点を獲得してそこから学ぶことをやっています。

三木:すごい面白かったのは、アメリカのフィールドワークの発表の場に行ったんですが、すごい入り込んでるなと思いつつ、ちゃんと冷静にそれを分析して言葉にしていくっていう。普通の人間だったらその中にどっぷり入っちゃったら客観的に見れないけど、さすが研究者の目線なんだなって。でもかなり楽しんでた風でもありますよね。

井本:そうですね。私は結構入り込んじゃうタイプなので、一生懸命研究してるんだって自分にリマインドしないとっていうのはあります。


●スタンフォード大学での研究について

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三木:アメリカでの研究はどういうコミュニティに入って行ったんですか?

井本:アメリカでは色んなコミュニティに入って行ったんですが、もちろん1つはスタンフォードの重松先生の授業を受けている学生達のコミュニティで、それ以外にもより広くスタンフォードのベイエリアの文化を知るためにベイエリアの色んな若者のコミュニティに入って行って、一緒に生活したりとか一緒に瞑想会に行ったりとかして仲良くなってきました。

三木:僕もWisdom2.0に行くたびに周りの禅センターに行ったりとかして、かなり日本のお寺とは違うし来てる人達も若い人が多いなと思っていて、1回グリーンガルチファーム禅センターに行った時に、ほとんど20代ぐらいの若者達と一緒に座りました。

日本の日曜座禅会とか円覚寺に行くと、みんな僕より年上でだいたい60、70代ぐらいで、それがまずカルチャーショックだったし、あと座禅が終わった後のQ&Aセッションも、人種差別のこととか環境問題とか老師と対話しているのがすごいラジカルというか、日本の老師との対話ではなかなかそういうのは…文化が違うから一概には言えないんですけど…、個人的なことは結構多いんだけど、そこがある種開かれたお寺という感じはしていて、かつグリーンガルチの一番位の高い老師様は黒人の女性ですごいなっていうか、周りに色んな人種の方がいらっしゃって対話をしている。その方をZen2.0にもお呼びしたいなと思って何回かアプローチしているんですが、毎回スケジュールが合わなくて、今年も残念ながら。

井本:そうなんですね。

三木:多様な文化が禅のレイヤーだけでもサンフランシスコ周りにあるなと。僕が知ってるのは禅センターのレイヤーしか知らないんですが、他はどういうところに入って行った感じですか?

井本:私も禅センターの他にシェアハウスみたいなインテンショナル・コミュニティに住んでたので、そういうシェアハウス自体も瞑想の場になっていることが多くて、そういうところでまず瞑想してその後何か対話する、それこそ社会問題について話し合ったりとか、誰かの研究について聞いてそれについてディスカッションするとか…

三木:割とそういうのってバークレーの周りが多いんですか?

井本:はい。バークレー、オークランド、サンフランシスコは多いです。

三木:僕もバークレーの近くの本屋さんに入ったら仏教の本がいっぱいあってびっくりしたんですが、仏教学が盛んなんですね。

井本:盛んですね。もちろんそこはカウンターカルチャーの発祥の場所なので、今の20代ぐらいのミレニアル世代の人はヒッピー文化っていうのに憧れというか回帰があって、瞑想したりコミューンみたいな形で暮らしたりとかしてるんだと思うんですが、ベイエリアはすごくオープンだしコミュニティに入りやすいです。

三木:ふらっと行って住んでいいみたいな感じでいけるんですか?

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井本:そうですね。色んな人がいるし、ホームレスの率がすごい高いので、自分の家を持たずに友達の家を転々として暮らす若者とかも多いです。だからそういう人が出たり入ったりみたいな感じで暮らしてました。アメリカはすごく個人主義っていうイメージがあるので、そういう共同生活をすることに皆さん抵抗があるんじゃないかとか思ったんですが、ああいう経済状況ですから、もう助け合わないと経済的にサバイブできない。

三木:ああいう経済状態っていうのは貧富の差が激しいっていうことですか?

井本:貧富の差が激しくて物価も高くて1人で部屋を借りて住むっていうのができないので、みんなでシェアしないと家に住めないっていう状況です。

三木:みんなシリコンバレーと言うとものすごいリッチな人がいっぱいいるっていう、経済も良く回ってるからそんなにホームレスの人とかいないってたぶん日本人の多くの人はそういうイメージだと思うんですが、実際結構いらっしゃる。

井本:そうですね。マインドフルネスも限られた裕福な人だけのためのマインドフルネスではなくて、そういうホームレスの人も含め精神的に苦しい状況にある人達のためのマインドフルネスっていうのが今ベイエリアではすごく注目されてるし、より開かれた、人種だけじゃなくてそういう階層とか経済状況の…

三木:重松先生もおっしゃってたんですが、そういう競争が激しいスタンフォードとかシリコンバレーだから逆にマインドフルネスが非常に流行っているという側面もありますよね。日本はそこまでではないから爆発的に広まってない。日本とアメリカの違いはそこなのかなと。

井本:そうですね。日本では広まってないですかね?

三木:言葉としては知ってる人も増えてるけど、実際に「毎日プラクティスしてます」みたいなのはあまり多くない。僕らの周りはたまたまそういう人が多いんですが、この間もある若い経営者が集まるところに行って、「この中で瞑想している人?」って言ったら100人で2人ぐらいで、1人はお坊さんだったので(笑)。マインドフルネスとは何かっていう話をそこでしたんですが、まだそういう世界ってすごいマッチョな世界なので、地方の青年経営者が集まるところってなかなかいらっしゃらないです。でも自然が豊かなところなのでそんなにみんな疲弊してる感じはないので、必要もあんまりないのかもしれないです。まだまだ日本ではそんなに市民権を得てないのかなという感じはあります。

井本:そうですね。これから広まるといいなとすごい思います。

三木:僕もそうです。


●マインドフルネス・シアターワークについて

三木:この間シアターワークのワークショップで井本さんがやってらっしゃるのに参加したんですが、とても新鮮な体験で良かったです。僕もちょっとだけ演劇をかじったことがあって。

井本:そうなんですか?

三木:インプロビゼーションをやってたんですが、それとは全然違う感じだったので、内観と組み合わせるのがとても良くて、実際にスタンフォードの学生が来て同じワークショップをやったと思うんですが、すごいそれも評価が高くて。

井本:ありがとうございます。

宇都宮:シアターワークって何なんですか?

井本:ぜひ体験していただきたいんですが、なかなか言葉にするのが難しいんです。

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宇都宮:シアターって劇場のシアターですか?

井本:シアター、演劇を手法とした心と体のワークなんです。

宇都宮:演じるんですか?

井本:そうですね。でも何か役を演じるではなくて…

三木:状況も特に設定してないですが、心のままに何か声を出してみましょうみたいな。

宇都宮:普段と何か違うんですか?

井本:「日常全てをシアターと捉えましょう」っていうことをシアターワークの専門家の小木戸(利光)さんはおっしゃってますが、

シアターワークの場合は普段よりももっと自分の心の声に寄り添って、自分が本当に声に出したいこととか、本来の自分の声とか体の動きとかに戻っていくようなプロセスです。

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三木:まず瞑想をやって内観をやって、それに基づいたシアターと3段階なんですが、瞑想でも結構体と心もほぐれるんですが、さらに内観っていうワークをやると本来自分は重要だなと思ってたことをもう1回思い出したりとか、特に母親に関するワークなので、「お母さんごめんなさい」みたいになり…

井本:三木さんあの時大変でしたね(笑)。

三木:それで3日後にお母さんに会いに行きました。花束を持って。

宇都宮:悪いことがあったんですか?

三木:いやいや。あまりにも母親に会ってなかったので、それでとても涙が出てきて。母もすごい喜んでたのでとても良かった。ある種の安全な場づくりでセットされてるので、そうすると自分をより出せる。ほとんど初めて会ったような人が多いので、なかなかそういうのは安全が担保されないんですが、そのワークの中でそういう雰囲気、場を作ってやると本来の自分を出せるみたいな。とても素晴らしかったです。3人でやってらっしゃいますよね?

井本:はい。私と内観療法がご専門の手塚千鶴子さんと

シアターワークがご専門の小木戸利光さんと3人で、Contemplative Learning Network(CLN)って名前を付けて最近各地で内観×シアターワークのワークショップをやっています。

三木:どういうことがきっかけでそういうのをやろうみたいな?

井本:手塚さんとは私はもう10年ぐらい前から一緒に三田の家っていうコミュニティスペースの運営に関わっていて、

そこで手塚先生が内観ワークをしてくださってたんです。私も自分の授業にも取り入れたりしてたんですが、2年前ぐらいに小木戸さんのシアターワークにたまたま出会って、私はシアターワークも素晴らしいし、それを内観とくっつけたらより深いものが出てくるんじゃないかなっていうことで、それを大学の中でやったり逗子でやったりして、今プログラムをさらに有効的なものにしていこうとしてるんです。

三木:今の大学の中でそれを広めようっていうのはどういう目的で?何か教育の中で少し足りない部分を補おうと思ってそれをやられようとしてると思うんですが、どういうところがゴールというか…

井本:たくさんあるんですが、大学教育って机があって教師が前に立ってひたすら話して、それを学生がこうやって聞いてるみたいな場の設定があり、割と一方的な知識の伝授が大学教育の典型だと思うんですが、私はそれは常に壊したいなっていう欲求があったんです。アクティブラーニングとかディスカッションベースのラーニングをやってたんですが、ただ議論するんじゃなくて体と心での対話を教室という場でやりたいと思うようになって。それにはどういう仕掛けが必要なんだろうって思った時に、まず重松先生のところから学んだマインドフルネスを教室に取り入れるっていう方法と、あと手塚先生から学んだ内観(リフレクション)を教室でやることによってよりパーソナルな話ができるような環境を作っていくということと、あとは小木戸さんから今学んでいるもっと体を動かして体で感じ合ってお互いのエネルギーのやり取りをしてそれで対話をするっていう、色んな方法で心と体を含んだ大学教育、排除しない大学教育っていうのを模索してて。

三木:とても重要なことだと思います。


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●シアターワークの今後の展開と安心、安全な場所づくり

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 三木:引き続き今のシアターワークという新しい学び方についてお話を伺っていきたいんですが、安心、安全な場所を作って本当に言える空間を作るという、今まさにビジネスマンが最も重要なこと、大学だけじゃなくて実は社会人…

宇都宮:社会人が鎧を着て戦ってるので。

三木:社会人の方々、特にzenschoolに来られるような大企業の課長さんとか部長さんとかいう方達に本当は受けてもらいたいと思っていて、

日本の企業って今色んな意味で頭打ちの状態なんです。色んなデザイン思考とか海外のものをどんどん取り入れて「じゃあこのステップを入れればうまくいくんだね」ということで一生懸命イノベーションを起こそうとしてるんですが、方法論の前に心の部分の土台ができてないというか、何でも言い合えるような環境ができてないので、いくら方法論を海外から取り入れても言いたいことが言えないのでイノベーションが起きないということに気がついたんです。僕らのzenschoolでまさに書面上のNDAを結んで、あとは自己開示ということで自分の人生をホワイトボードに全部書き出して、お互いにそれを1日ずっとやるんです。その後で初めてビジネスのアイデアを考えるとすごいお互いに協力し合う関係ができて、本当にイノベーティブなビジネスがどんどん出てくるので、安心、安全な空間を作るっていうのが本当に重要だなということで、シアターワークはすごい興味があったので参加したという。

井本:ぜひ会社員の方、社会人の方に受けてほしいですね。

三木:そうなんです。だから今の教育自体が社員研修として非常に有用だと思って、そういうオファーとか来ないですか?企業のほうから「やってほしい」みたいな?

井本:小木戸さんは会社向けの研修とかもやってるみたいですし、今後そういう展開はしていきたいと思っています。

三木:たぶんユニットが結構パワフルなので、瞑想と内観と体のワーク自体が企業に提案できるものだと思うんです。

井本:はい。zenschoolともご一緒できたらおもしろそうですね。

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三木:そうですね。一緒に。僕らも日々ビジネスの現場の色んな話を聞いているのでそれをすごい感じるんです。日本の企業の組織の限界というか、言いたいことが言えないっていうのがあって、今やってらっしゃる活動とか研究が非常に有用だなと。

井本:私もゼミの中で今はできることをやっている状況なんですが、自分事として研究を進めていくために、まず自分の人生を振り返って自分が一番興味があるものは何なんだろうって探って、それを自分の卒論のテーマとしてフィールドワークをして研究をしていくことをやっているので、たぶんすごく近い観点でやってると思います。

三木:近いと思います。企業のニーズも今まではどっちかって言うと「こういう型があってその通りにやるような研修をお願いします」っていうのが多かったんですが、MBAでさえ体感ワークショップを入れようとしていたりとか、アートを感じるようなアート思考っていうのを入れようとしてたりとかしてどんどん変わってきています。たぶん今の教育現場の課題と企業の課題って結構似たようなものがあるような気がしてるんですがどう思いますか?

井本:そう思うんですが、ゼミの4年生がちょうど今就職活動中で、私は3年生を1年かけてじっくり内省をして個々人の一番関心が持てる好きなことを追求することを大事にしているんですが、春休みになって就活がはじまると、みんな表情もガラッと変わって。服装も話し方も、、みんな同じふうになっていくんです……

三木:型通りの…

井本:そう。それはどうやって変えていけばいいんですか?

三木:難しいですね。1回そこの門を通る形になっちゃいますからね。

井本:一度通ってまた崩していくっていう感じなんですか?

三木:就職するのじゃなくて、方法論としては自分で起業するっていう可能性もあるかなと思います。

宇都宮:起業をいずれするつもりで就職するのだといいんでしょうけど、好きなことを見つけるよりその先にあるものを見つけるっていうか、実現したい具体的なものを見出すとたぶん就職することも1つの選択肢になれればいいと思うんですが、就職がゴールになっちゃうとフォーマットが決まってるので合わせるしかないですよね。ゴール設定がちょっと違うかもしれない。

井本:そう思います。皆さん大学生になるまでもまずは中学受験して、大学受験して、今度は就活して大企業に入ってって…

宇都宮:フォーマットに合わせることに慣れてるから、一旦崩しても戻りやすい状態ですよね。小さい頃から内省してるとたぶん違うんですかね。小中高と叩き込まれるじゃないですか。

井本:そうですね。私自身結構そういうタイプだったんです。ゴールは例えば学校で良い成績を修めてとか、母親に認められてとか、良い大学院に入ってとか、Ph.D.を取るとかそういうゴール設定で来たんですが、「Ph.D.取ってじゃあ何なの?」みたいな壁にぶち当たった時期があって。

宇都宮:何が起きたんですか?壁が押し寄せてきたんですか?

三木:表面の自分と本当の自分の乖離があったっていう感じ?

井本:そうですね。壁なのかな?

三木:今はそれは統合しつつある?

井本:今は統合されてきてるんです。

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三木:たぶん色んなワークを自分でも体験したりとかしてるから?

井本:体験して内省して内観することによって、こうあるべきとかここに行かなきゃいけないっていうような生き方じゃなくて、いかに自分らしく自由にいられるかっていう方向にベクトルが変わりつつあって、もちろん完全に自分らしくありのままではまだ全然ないんですが、徐々にやってることと自然体の自分っていうのが統合されてきてるようには感じます。

三木:時代が変わってきてマインドフルネスが少しずつ広まってきてるし、やってらっしゃる研究は逆に時代が求め始めてきていると思っているから、よりやっていることを尖らせていくと時代がようやく追いついて。企業のほうがもう限界なんです。今のピラミッド式の組織を維持するとか、そこで生み出される価値がどんどん下がってきているので。

宇都宮:企業が必要とする社員像でずっとやってきて、40過ぎたら今リストラ対象になってるわけです。それってかわいそうじゃないですか。言う通りにやってきたら「いらない」って言われるのって。「えー!?」みたいな。

三木:僕もリストラされた経験者で、その時は本当に組織人間っていうかKPIばかりを追いかけてきていて、1回全部壊されて本当の自分じゃなかったっていう。禅と知り合うことができて、禅をベースに色んな瞑想をすることで「本来の自分はこういうことをやりたかったんだ」と。それを他の人にもお伝えするお仕事ってなると自分のやりたいこととお仕事が一致できて、今心のほうはかなりヘルシーな感じで、給料は何分の1になりましたけど、心はすごくやりたいことをやってるという感じです。

井本:きっとこれからは心の豊かさが一番の資本になってくると思うので。

三木:いいですね。


●マインドフルシティ鎌倉の可能性について

三木:マインドフルシティの話をしていきたいんですが、

この鎌倉には色々な経験を積まれた方がどんどん集まって来ていて、先週ゴング瞑想というのを体験しまして、シンガポールでバリバリ働いていたキャリアの女性がちょっと違うかもということで全部それを捨てて、ゴング瞑想というのを鎌倉で起業された方がいて、とても素晴らしい瞑想法なんです。

色々経験して「何か違うな」って言ってそれをお仕事にトランスフォームした人が集まって来てるという町に段々なってきていて、マインドフルシティというところで鎌倉をよりバージョンアップさせていきたいなと動いてるんです。こういう考えに何かご意見があれば。

井本:私もこの鎌倉のお隣ですが、マインドフルシティに仲間入りさせていただきたいとは思ってるんです。

三木:マインドフルシティ逗子。鎌倉と一緒に。

井本:この土地について今すごく感じてるのは場の力というか、自然が本当に豊かで流れる時間も都心とは違って、鎌倉とか逗子の空気を吸ってこの場を感じるだけですごく心が豊かになると思うんです。生活するにしても仕事をするにしても、まずは場の豊かさっていうのが重要だと思うので、マインドフルシティっていうのは鎌倉っていう場があるからこそできる素晴らしいプロジェクトだなと思っています。

三木:その可能性みたいなものは感じているものがあったら教えていただきたいです。

井本:可能性は色々感じてるんですが、ここに集まる人がすごい面白い人が多いと思うんです。どういう風に面白いかと言うと、オルタナティブな視点を持っていて、でも東京ともつながっているっていうことですごくイノベーションを起こすには最適なポジションだなと思うんです。人類学の狭間とか境目にいる立場っていうことだと思うんですが、2つの世界を行き来するみたいなスピリチュアルとかオルタナティブな世界ともっとど真ん中の(リアルな)世界を行き来することができる人達が集まる場だと思っているので、そういう意味でそういう人達がどんどん鎌倉に集まって来て、私だったら研究とかマインドフルネスの実践の領域で仲間を作って新しい教育プログラムを立ち上げたりとか色んな活動ができる可能性をすごい感じています。

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三木:鎌倉に集まって来る人が色んな人が増えていて、あと体験を一緒にしようっていう人達が集まって来て、今度Zen2.0のコミュニティでも島田(啓介)さんって去年登壇いただいた方が月に1回来て瞑想会をしていただけることになったので、ぜひ参加していただいて。

井本:はい。

三木:ちょっとサンガ的な、Zen2.0も色々大変なので癒しながらかつボランティアワークに勤しんでいただきたいということで、島田さんも快く引き受けていただいて、だいたい土曜日か日曜日どちらかで参加できる人が集まってやりましょうということで、場所はまだ未定なんですが、どこかお寺を貸していただけるところがあればお寺で、あるいは大町会館のどちらかでやろうと思っていて。体験、体感を一緒にするってすごい重要だなと思っていて、Zen2.0でも色んな人が手伝っていただくんですが、一緒に座ったりとかしてるとコミュニケーションとかスムーズにいくし、この人はこんな感じだからたぶんこういう風に対応すればいいだろうとかなって、そんな感じでZen2.0も1つのサンガの中で色々活動していきたいなと思っています。

井本:すごい可能性を感じます。研究者もそうなればいいのにと思います。

宇都宮:学会に行くと結構厳しく議論し合ったりしますよね。

三木:僕もかつてはいましたけど、そもそも前提が違うとか指摘されて(笑)。

井本:そうそう(笑)。

宇都宮:マインドフルな学会?

井本:鎌倉でマインドフルな学会を作りましょうよ。

三木:いいね。

宇都宮:研究を持ち寄って研究者を癒すための学会をここで開催する。

三木:まずは一緒に座ってから。

井本:一緒に座って体を緩ませてそれから対話をする。

宇都宮:「その前提面白いね」って慰め合う。

三木:お互いに高め合う感じで。

宇都宮:ここで癒されて議論に臨むという。

井本:そうですね。それこそイノベーションはそっちのほうが起こりますよね。

三木:マインドフルシティ鎌倉自体も研究対象にと思っていますか?研究者として。

井本:はい。したいと思っています。

三木:まさに体験中だから。

井本:実際そうなんだと思います。私はアメリカでのマインドフルネスの状況を研究して、今度はそれが日本とどうつながっているのかっていうのを今は見ているので、Zen2.0とか鎌倉のエリアもそこに入りつつ研究の対象としていけばいいなと思って。ちょうど重松先生が鎌倉にいらしているので。

三木:今日本に来られてますけど、この間やったワークは先生も「良かった」っておっしゃっていただいて、おかげさまで良かったので。

井本:ありがとうございます。

三木:今度日本からスタンフォードに何人かExchangeとして行けるような流れを作っていきたいなと思っていて、鎌倉とスタンフォード大学なのか、あるいは別のエリアなのか分からないですけどつながっていくとまた面白いなと。

井本:そうですね。どんどん鎌倉から世界とつながっていきたいですね。

三木:ありがとうございます。ぜひ逗子の井本さんのお力が必要なのでどうぞよろしくお願いします。

井本:よろしくお願いします。


●井本さんの考える「日本(世界)の○○の未来」に対する想いについて

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三木:井本さんの考える日本の○○あるいは世界の○○でもいいですが、こういったものがこうなってほしいみたいな未来のことを、ご自身の関わっていらっしゃる観想教育でもいいですし…

井本:今の日本の教育とか日本人みんながつながってほしい。Zen2.0のキーワードを言っちゃったけど、心底そう思っています。壁とかボーダーとかどんどん取っ払ってつながる時代ですから。

三木:そうですよね。

井本:だから日本の未来はつながり。

三木:今年のZen2.0のテーマはつながりですから。

井本:つながっちゃった(笑)。

三木:そのままですね。素晴らしい。またZen2.0でもよろしくお願いします。

井本:よろしくお願いします。楽しみです。


対談動画


井本ゆきさん

:⇒https://www.facebook.com/yuki.imoto.73


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