🇹🇼旅行記 Ep2 台北駅前でホームレスの人達と一緒に寝てみた
<前回のお話>
台北駅に着いた。
着いてすぐ行く場所は予め決めていた。
「鼎元豆漿」と言う名の台湾料理屋さん。「台北 ランチ」で調べて出てきたまとめサイトの一つとして紹介されていた。
駅から目的地までスーツケースをコロコロと引きながら、向かっていく。立ち並ぶ看板、赤や黄色を中心とした色使い、行き交う言語。「何か違う、普段と違うぞ!」興奮でニヤニヤが止まらない。歩いていく毎に、自分が異国の地にいる実感が湧いていく。殆ど寝てなく疲れているはずなのに、興奮が疲労を吹っ飛ばしていった。瞳孔に映るその「新しい世界」は、僕が19年生きてきた「世界」とは大きくかけ離れていた。「井の中の蛙」とはこのような事を言うのだろうか。
そんな事を思っている内に、お店の前に着いた。黄色を基調とし、赤色で書かれた「鼎元豆漿」の文字。お店の外にまで行列が続いていた。「注文出来るだろうか。会話が通じるだろうか。」緊張か暑さからか分からない変な汗が流れてきた。お店の中に入ると、壁に大きくメニューが掛けられていた。写真に撮って、店員のおばちゃんに写真から頼みたいものを指差して、小籠包と高麗菜肉包(野菜が入っている、ほぼ肉まん)、鹹豆漿(塩豆乳スープ)の3つを無事注文する事に成功。小籠包や肉包は日本にも馴染みのある中華料理で安定に美味しかったが、鹹豆漿は初めてで新鮮だった。少々脂っこい豆乳スープのような味は、日本料理では例えられない何とも言えない魅力的なお味。
朝食を終えた時点で、僕の睡魔は限界に近づきつつあった。無理もない。昨日日本を発ってから一睡もして無かったのだ。これ以上は歩けないと思い、Qtime(ネカフェ)で仮眠を取る事にした。僕も店員さんも英語が話せず、お互いがGoogle翻訳を駆使しながら、何とか利用する事が出来た。
3時間程仮眠して大分疲労が取れたから、また市内をぶらつく事にした。有名な観光地とかを何も調べず、ただひたすらに歩いていたら大きな公園が目の前に現れた。「二二八和平公園」という。中に入ると、大きな噴水や、いくつもの楼閣が見て取れ、おじいちゃん達が集団でラジオ体操のようなものをしていたり、路上ライブをしていたりと、そこそこ人で賑わっていた。木陰で隠れた、ちょうどいい感じのベンチで座って目を瞑ってみる。小風そよそよ、小鳥ちゅんちゅん。
公園を出た後は、台北の有名な観光地でもある「中正紀念堂」を訪れた。ここでは、有名な蒋介石の銅像を見て、それを守る衛兵の交代式を見た。特段ここでも特別な事は無かったのでさらっとだけ。入り口の自由広場門や、門をくぐった後の中正紀念堂の壮大な白亜の建築様式は圧巻だった。
問題はこの日の夜に起きた。一通り観光を終えた後の今日の夜は仮眠したQtimeで過ごそうと計画していた。再びチェックインしようとしたら驚いた。「やば、めっちゃ人並んでるやん」とりあえず並んでみるものの、案の定個室は満席。ここから長いホテル探しの苦行が始まった。
Googleマップで「ホテル」と調べ、出てきた所を手当たり次第当たってみる事にした。受付に行き、僕が知っている限りに英語で「トゥデェイ、フルオアエムプティー?」(Today, full or empty?)と尋ねる度に答えは「No」4,5回を過ぎた辺りから徐々にイライラが溜まってくる。「いや1部屋も空いてないなんて事あるかよ💢」
そんなこんなしている内に、マクドナルドが目に止まった。それもマップ上には「24時間営業」と書いてあるではないか。こりゃ助かった。ひとまずここで何か頼んで、仮眠を取る事にした。22時頃くらいだった。
2時間後の午前0時。持ってきたスーツケースを蹴られて目が覚めた。「24時間じゃなん??」。視線を蹴ってきた人に向けると、30歳くらいの店員が何やら僕に言っている。店内の様子から察するに、閉店する事が分かった。その時僕は、2度とGoogle Mapを信じないと誓った。真夜中の台北市内にスーツケースを転がしながら、またもや流浪の旅に出る羽目になった。何の気なしに歩いていると台北駅に辿り着いた。シャッターが閉まっていて中には入る事が出来ないが、駅の周りには大勢のホームレスの人達が、ダンボールを敷いて寝ていた。「もういいや、ここで寝よう」。今思い返せば、海外の危険性について何も無かった当時だから出来た事で、結果的に台湾のホームレスと同じ寝床で一晩を過ごした。パスポートと財布をパンツとズボンの隙間に入れ、駅の壁に沿って横になった。振り返ればこの時が、人生で最初の「寝床がある有り難さ」を感じた瞬間になると思う。
「風雨を凌げて、屋根がある場所で布団を敷いて寝ている事ってこんなにも幸せな事なんだなぁ」
横になりながらぼーっとしてると、一人の男性が近づいてきた。待て待て何だ何だと警戒心Maxでいると、ビニール袋に入った滷肉飯を僕に渡して去っていった。中国語で何かを言っていたが、当然理解できずただただ「Thank you」というしか無かったが、嬉しくて泣きそうな気持ちになった。「世界ってこんなにも優しさに溢れているんだ。まだまだこの世界も捨てたもんじゃないな」。泊まる場所が無くても、不思議と辛いとは思わなかった。
翌朝、特に危険な目に遭う事も無く、何か物を奪われる事も無く起床した。
今日はどんな興奮が待っているんだろう。
<次のお話>