フランダーの名前も知らないアラサー男が観た、実写版「リトル・マーメイド」感想
一本の映画としての完成度は高かったです。
まず前提として、僕はアニメ版の「リトル・マーメイド」を一度も観た事がありません。
幼い男子って、人魚とかリカちゃん人形とかに興味を持つのはダサいって思っちゃうんですよ。
同い年の女の子がアリエルに憧れている頃、僕は仮面ライダーやウルトラマンに熱くなっていました。
だから、この年齢まで「リトル・マーメイド」に触れる事なく生きてきたんですね。
知っているのはアリエル、エリック王子、アースラ、トリトン王の名前のみ。
あとはカニと魚のサブキャラが有名だよね、ぐらいの知識量。笑
ディズニーシーのアリエルのショーは観た事があるっていう程度の激浅な見識です。
そんな男に、実写版「リトル・マーメイド」はどう写ったのでしょうか。
全女子が憧れるシンデレラストーリーは◎
本来「リトル・マーメイド」のストーリーなんて多分誰もが知っているんでしょうけど。
僕のような非モテ逆張りアラサー男子は知らないこともあるので一応。笑
種族を超えた恋、親からの自立、一人の女の子が夢を叶えていくというストーリーは単純ですけど良かったですね。
これはもう、ひとえに原作が素晴らしいからなんでしょう。
まあ、観たことないんですけど。
この間テレビでやってたの録画しとけば良かったなぁ。原作を観てみたくなりましたね。
ちなみに、僕はアリエルが声を奪われることも実写版を観て初めて知りました。
なので、「マジかよ!声取られたら絶対キスするのなんて無理じゃん!」とハラハラしました。
初見ならではの楽しみ方ができたのは得だったかもしれません。笑
映像&音楽は非の打ち所がない
「リトル・マーメイド」といえばやはり海の映像と音楽の美しさがポイントだと思うんですが…合ってるよね?
ここはもう完璧でしたね。
海の中の映像は、どこを切り取ってもフォトジェニックな美しさ。
序盤はしばらくずーっと海中のシーンですが、まったく飽きません。
サメから逃げるシークエンスも引き込まれる。
ここまでちゃんとしたアクションもあるんだ、と思いました。
エリック王子が乗った船が沈没するシーンも迫力凄かったし、後半のアースラの巨大化も映像技術の進歩を感じました。
音楽は言うまでもないですが、本当偉大ですね。
アラン・メンケンはやはり天才です。
多分、アレンジも結構原曲に忠実ですよね。
聞き覚えのある曲がたくさんあって感動しました。ディズニーの音楽って、本当遺伝子レベルで刻み込まれてるんですねぇ。
特に、「Under the sea」の水中パレード感は圧巻。あのシーンだけでもIMAXで観る価値があります。
キャラの立て方がちょっと雑では
ただ、キャラを立てるための描写の露骨さには少々疑問も残りましたが。
まず、トリトン王。
こいつの教育方針、乱雑過ぎない?笑
アリエルが大切に集めた人間グッズを焼き払うという、夫のフィギュアを勝手に捨てる妻みたいなことをしてましたけども。
こんなことやったら夫…いやアリエルも廃人になりかねないぞ。
セバスチャンに対する態度もモンペそのもの。
僕だったらこんな上司に従うぐらいなら早期退職しますけどぐらいのブラックさで。
最後は可愛いところ見せてたけど、全編通してとても7人の子供を育て上げたとは思えないぐらいの親っぷりを見せてましたよね。
マジでコイツには尾木ママの教育ビデオとか見せた方が良いと思うよ。
あとは、アースラの行動も謎。
アリエルに嘘をついて人間の足を与える訳ですが、その嘘の内容がよくわからん。
「3日以内にエリックと愛のあるキスができなかったら人魚に戻る」っていう契約なんですけど、アリエルは同時に「キスをする」っていう部分の記憶だけ消されちゃうんですよ。
これが僕には解せなくて。そんなややこしいことするなら、最初からキスできても人魚に戻るようにしとけば良いじゃん。
聞いたところ、「キスをしないといけない」っていう部分の記憶が消されるのは実写オリジナルの設定なんですね。これがあるからややこしい。
契約の内容に追加要素が付与できるなら、なんぼでも嘘つけるでしょうと。
この改変がなければ変なツッコミどころが生まれることもなかったのに。
賛否が割れたキャスティング、アラサー男はどう観るか
本作は、主人公にハリー・ベイリーがキャスティングされたことが良くも悪くも話題を呼んでいました。
で、原作未履修のリトマメ初見男がどう思ったかですけども。
正直、違和感しかありませんでした。笑
原作を知っていてファンであればあるほどこのキャスティングに違和感を持つものかと思ってたんですけど、多分逆です。
むしろ、「リトル・マーメイド」のストーリーを全く知らない人の方が違和感を感じると思います。
なぜなら、僕らにはストーリーの予備知識がないから。
ストーリーを知っていればそれで「リトル・マーメイド」であることを認識できるんですけど、我々の頭の中には「リトル・マーメイド」=アリエルというイメージがあるので。
だから、余計違和感を覚えます。
ただ、フォローするなら歌は抜群に上手いです。
もうちょっと信じられないレベルで。
なので、抜擢された理由はわかります。
しかしながら、原作フル無視は頂けないですよねぇ。なんでドレッドヘアなのよ。
というか、そもそも彼女アリエルに全然似てないよね?
もし「SLUM DUNK」が実写化されるとして、「バスケが上手いから」っていう理由で桜木や流川に外国人が抜擢されたら、みんな怒るよね。
日本人の感覚からすると、その時点で結構アウトなんだよなぁ。
あと、最後の色んな人魚たちがアリエルとエリック王子を見送るシーン。
もはやググりもせず言いますけど、あのシーン絶対原作にないだろ?笑
もう本当、今のディズニーの悪いところを全部詰め込んだようなシーンでした。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」の不必要な女性ヒーロー大集合シーンとか、「スターウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け」で女性同士のキスシーンを観た時と同じテンションになりました。
しかしながら、一本の映画としてのクオリティは高いだけに本当に勿体無い。
「リトル・マーメイド」のスピンオフとしてハリー・ベイリー主演で映画を作ってみました、みたいな立ち位置なら絶対絶賛されていたし、主演をアリエルそっくりな女優にしていればそれもまた大絶賛だったでしょう。
国策のせいで大傑作になり損ねたな、という印象です。