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これは彼女たちの青春群像劇。Netflix「極悪女王」感想

キャストの皆さん、大変お疲れ様でした。

というわけで、今日は話題のNetflixドラマ「極悪女王」の感想をお届けします。
中々時間が取れなくて、配信開始からしばらく空いてしまいました。

キャスト陣の限界ギリギリの演技で魅せる

演出もストーリーも良いは良いんですけど、やっぱ一番に書きたいのはここですよ。

役者陣がみんなギリギリまで自分を追い込んで演技してたんだなって、作品を見るだけで充分に分かります。

地上波でさえドラマの実績がほとんどない主演のゆりやんレトリィバァは、おそらく相当のプレッシャーに苛まれたはずですが。
そんなことを微塵も感じさせないような、役に憑依した演技を見せてくれました。

リングの上の激しいアクションはもちろんのこと、千種(唐田えりか)に対する羨望の眼差しや父親の影に怯える不安な表情等の繊細な演技から、闇堕ちする際の激しい感情の起伏を表すスケールの大きな芝居も自由自在にこなしていました。

彼女を迎えうつ長与千種を演じる唐田えりか、千種の相棒であるライオネス飛鳥を演じる剛力彩芽の演技も圧巻。

特に長与はプロレスの実力が人気に追いついていなかったり、人間的に脆い部分も残るキャラクターで演じるのが難しかったはずですが、唐田えりかは難役を堂々とこなしていました。


現実とフィクションがリンクする"彼女たち"の物語

女子プロレスとかこれまでそんなに興味なかったんですけど、こんな物語があるんだなーと思いました。確かに、好きでヒールになるレスラーの方って中々稀だと思うんですけど。

ただ、いくら時代や環境に振り回されてもこれが多分彼女たちの青春なんですよね。
周りからの期待やしがらみがある中でも精一杯生きよう、前に進もうって思ってそれぞれが行動している訳です。

作中では香や千種の同期たちをはじめ、色んなレスラーが様々な道を歩んでいきますが。
彼女たちにとっては間違いなくこれが青春で、かけがえのない自分の物語なんですね。

サブキャラであるジャッキー佐藤やジャガー横田の心の動きも丁寧に描写されていて、ひとりひとりのキャラクターの機微をしっかり書こうという製作陣の気合いが伝わってきました。
松本香がダンプ松本になるまでに全5話の中で丸々3話費やすというのも中々思い切った決断でしたが、その分彼女がダンプ松本になった重み、凄みを感じることができましたね。

そして、そんなレスラーたちの物語に息を吹き込んだキャスト陣にも同じような物語があったはずなんですよね。

本作に出てる人たち、結構お騒がせ系の人が多いじゃないですか。結構背水の陣で本作に臨んでいたと思うんですよ。

そういうギリギリの状況の中で戦う運命共同体な感じが、実際の女子プロレスの物語とちょっとリンクしている感じがあったんですよね。
そこまで計算してキャスティングしたなら、ちょっとすごいですよね。


後半は視聴者に解釈を任せ過ぎ

ここまで良いところをたくさん書きましたが、ぶっちゃけ僕は「地面師たち」の方が作品としては好きなんですよ。
というのも、物語の緻密さという面で「地面師たち」の方が「極悪女王」より大分しっかりしているように見えたんですよね。

残念だったのは物語後半、とりわけ最終話で目立った感情描写の少なさ。
確かに説明過多は良くないですけど、さすがに視聴者に解釈を任せ過ぎなのでは、と思いました。

例えば、香の妹はどういう感情でまた香を応援する気になったのか、とか。本庄が香を許す展開が急過ぎないか、とか。まとめ方がどうも投げっぱなしジャーマンだった気がするんですよね。

正直最後の同期大集合は激アツだったし、ちょっと切なさも感じさせる終わり方はめちゃくちゃ好みだったんです。
で、後半心情描写を省いて試合の勢いとエモーショナルさでダイナミックに物語を描こうという演出意図も伝わったんですけども。
それでも、4話終盤から5話中盤の雑さはちょっと見逃せなかった。

これなら、4話と5話の間に一話増やしてじっくり心情描写を描いて欲しかったですね。
そこまでがめちゃくちゃ丁寧だっただけに、勿体無い印象でした。

まあ、それでも地上波のドラマと比べると抜群によくできてますし、5話通してめちゃくちゃ見応えがありました。

サクッと5話で終わるから観やすいですし、ちょっと王道を外した面白いドラマが観たいならオススメです。

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