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鈴木亮平の役者人生が集約された作品。Netflix実写版「シティーハンター」感想

期待を裏切らない快作に仕上がっていました。


数ある実写化作品の中でも、最も原作愛を感じる

漫画の実写化において、最も必要不可欠な要素は何か、と聞かれたら。
僕は、一番大事なのは『原作愛』だと思っています。

『原作愛』は、好きだから原作を忠実に映像化しました、というものとは全く違います。
原作のテーマや重要なエレメントを理解し、実写化に当たって何を活かし、何を省くか。
それを俯瞰的に見て、ファンから見ても一般の視聴者から見ても最も受け入れやすい作品を制作する。

原作と真摯に向き合い、一番良い実写化の形を探るという姿勢。
それこそが漫画の実写化における『原作愛』に他ならないのです。

最近の実写化作品は『原作愛』のあるスタッフが制作を手がけることが多くなってきたので、昔ほど酷いモノが減ってきたと思っています。

今回の「シティーハンター」も、間違いなく『原作愛』に満ち溢れていた作品。
実写化の成功例の一つとして数えられるでしょう。


スタッフ・キャストの圧倒的なこだわりが垣間見える

本編を観ると、ストーリーや小道具、キャスティングに渡るまで製作陣の細かいこだわりが詰まっていることがよく分かります。

本作のストーリーは原作の開始前を描いたエピソード0的なものになっていますが、これもよく考えられています。
いきなり原作の話を映像化するよりもオリジナルストーリーの方が実写化に合った話を考えやすいし、原作ファンの抵抗も少ない。
冴羽獠と香のキャラクターを知らない原作未読勢にとっては、こっちの話の方が自然ですしね。

衣装や小道具、ロケーションやストーリーに隠された伏線等も原作の設定にかなり準拠しています。

例えば、獠の衣装一つをとってもよく考えられていることが分かるのかこの動画。

冴羽獠といえば、アニメ版で着用しているスカイブルーのジャケットと赤いTシャツのイメージが強い。
2021年に公開されたフランス版の実写映画でも、主人公はその服装を着用していました。

しかし本作では、令和の新宿ではコスプレ感が強くなるだろうということでそのファッションをオミット。原作に立ち戻り、ベージュのコートを羽織ることにしたと言います。
このようにキャラクターのファッションひとつとっても、原作・アニメの要素をしっかり拾いながら丁寧に実写にチューンナップしているのが伝わり非常に好印象。


こだわりの”リロード”は必見

冴羽獠と言えば、超がつく銃の名手。
原作やアニメでは、銃一丁で大体なんでもこなしてしまうイカれっぷりを発揮しています。

実写版では、不可能と思われた拳銃の取り扱いを完全再現。これはもう、本当素晴らしいです。

特に素晴らしいのが、戦闘中の爆速リロード。
要は弾丸を撃ち尽くした銃に新たな弾薬を装填する動きですが、これの早いこと早いこと。
演じた鈴木亮平の手捌きはもちろん、カメラアングル等の演出、リロードの方法論までこだわりが垣間見える。
リロードの手法については、下記記事の対談が非常に興味深かった。

https://armsweb.jp/report/5251.html

鈴木亮平は実銃を撃つトレーニングを行い、冴羽獠のようにリボルバー式の術を連射するとシリンダーが熱くなってしまうことを知った。
その結果、劇中のように手を振った反動でリロードしたシリンダーを戻す、という方法に辿り着いたという。
拳銃の扱いがここまでしっかり考えられているアクション作品は邦画だと他にあまりないんじゃないだろうか。


冴羽獠になるべくしてなった男・鈴木亮平

本作のキャスティングは全体的に素晴らしいんですが、その中でも群を抜いているのがやはり主人公・冴羽獠を演じた鈴木亮平。

彼は元々、冴羽獠を演じるために俳優になったと公言するほどの「シティーハンター」の大ファンである。
本作にかける熱い思いは、なんと13年前に書かれた彼自身のブログにも綴られている。

この話の13年後に、夢を叶えてるんだからすごいよなぁ。
しかも、Netflixというビッグバジェットをかけられる場所で。

このブログの中では「31歳ぐらいで冴羽獠を演じたい」の書かれているんですけど、彼は現在41歳。
夢を叶えるまで10年の時間を要しましたが、その間に積んだ彼のキャリア全てが冴羽獠という役を演じるために必要な要素だったと言っても過言ではないと思います。

2013年・2016年の「変態仮面」シリーズでは、カメラ前で躊躇いなく裸を出す度胸と肉体づくり、コメディリリースとしての立ち回りをモノにし。
2015年の「俺物語‼︎」では彼にしかできない身体を使っての役へのアプローチと現実離れしたキャラクターに魂を宿らせるテクニックを身につけた。
近年は「孤狼の血 LEVEL2」「エゴイスト」で役の幅を広げ、「エルピス-希望、あるいは災い-」ではデキる大人の男を演じ、新たな魅力を放ち。
そして、「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」をドラマ版・映画版共にヒットさせ、主演俳優としてのオーラと箔を手に入れた。

全てのピースを手に入れた鈴木亮平は、シリアスとコメディの演じ分けはもちろんアクションシーン、全裸でのダンスシーンに至るまで冴羽獠を完璧に演じ切っていました。

ここまで完璧に冴羽獠を演じれる俳優は、鈴木亮平をおいて他にはいない。断言できます。

かくして、ほぼ理想通りの最高の体制で映像化された「シティーハンター」は、少年漫画の実写化作品としては最高品質のクオリティを提供してくれています。

GWも間も無く終了しますが、いまだにNetflixのランキングは第1位。
この勢いでヒットを続け、続編の制作が決まってくれれば嬉しいなーと思います。

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