見出し画像

”マリオ”に人格を与えた物語。「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」感想

2023年GW、一番の話題作。

結論から言うと、中々面白く仕上がっています。
しかも、全年齢・全国籍対応型の面白さ。
大絶賛されるというよりは、嫌いな人がいないタイプの映画。
世界でも大ヒット中ですが、日本でも興行収入100億円が狙えるでしょう。

個人的に、この映画の成功の秘密は大きく分けて2つあると感じました。

成功の理由① 原作を補完するストーリー


ストーリーはまさしく単純明快。
別の世界に飛ばされてしまい行方が分からなくなったルイージを、マリオが救いに行く話。
あらすじの説明が2行で終わる映画作品は「マッドマックス 怒りのデスロード」以来な気がする。

マリオを映画化する上で難しいのって、やっぱりストーリーだと思うんですよ。
なんせ、基本的にマリオのゲームってストーリーないですからね。
「ファイナルファンタジー」とか「ゼルダの伝説」みたいなRPGならともかく、アクションゲームなので当然なんですけど。

で、製作陣はどうやってここをクリアしたかと言うと。
原作ゲームの設定を補完してストーリーを肉付けするっていう方法を取ってるんですよね。これが非常にうまかった。

例えば、マリオの職業はなぜ配管工なのか。
彼の家族関係はどうなっているのか。
ただのヒゲのおっさんのはずなのに、なぜあんなに強いのか。
なぜクッパは執拗にピーチ姫を狙うのか。

ファンなら知ってるけど、なぜかはわからない設定。
それを補足しながら話を広げることで、映画として成立するストーリーを構成している。

多分、マリオの映画ってこれ以上の長さにするとつまんないと思うんですよ。だって、そもそもゲームに話がないんだから。
無理に話を広げたって面白くなるわけがない。

この映画は無理することなく原作の世界観を守り、その上でストーリーを展開している。それがすごく好印象でした。


成功の理由② マリオに”人間味”を付与する内容

突然ですが、皆さんに質問です。
皆さんは、マリオにどんなイメージを持っていますか?

『マリオのことを知っている』程度だと、多分見た目のイメージが強いはず。
赤い帽子、ヒゲ、オーバーオール、白い手袋。

ゲームをプレイしたことがある人や設定に詳しい人だと、また少し変わってくるかも。
兄弟がいる、キノコで大きくなる、配管工。

では、彼の人となりを知っている人はいるでしょうか。
陽気そう、勇敢、なんでもできる…
せいぜい、それぐらいのイメージしかないんじゃないでしょうか。

そうなんです。
ゲームでは、マリオの人格ってあまり描写されていないんですよね。

観客はマリオのことはよく知っているはずなのに、彼の中身のことはよく知らない。本作は、それを逆手にとった内容となっています。

本作のマリオには、すごく人間味があります。
基本的には勇敢で家族思いだけど、ビビる時もあるしカッコをつけちゃうときもある。
20代半ばの設定だと思うんですけど、夢を追って独立したことを家族に批判されたりもする。完璧じゃないんですよね。
でも、決めるときは決める。ピンチや逆境も、努力や頑張りで跳ね返す。

本作は、これまで愛らしいアイコン的な存在だったマリオに人間味を与えているのです。

ストーリー的には、はっきり言って子供向けです。
でも、物語終盤で兄弟や仲間のために立ち上がる姿には大人もちょっとウルっときちゃうはず。
実際、僕ちょっと泣いちゃいましたからね。情けないけど。笑


大きく分けて2個と書きましたけど、もちろん素晴らしいポイントは他にいくつもあります。

まず、世界観。ゲームの雰囲気を守りつつ、うまく映像化できています。
キノコ王国やピーチ城、クッパやドンキーの住処や海の中に至るまでイメージを何一つ崩していない。
時々、ゲームを意識した横スクロールのアングルを取り入れているのもお見事。作り手のサービス精神を感じました。

音楽も最高でしたね。
ほとんどゲームのBGMをアレンジしたものでしたけど、ちゃんと映画の劇伴に昇華できていた。時折入る洋楽のチョイスもGood。

メタ的に言うと、マリオがファミコンしてるシーンとかめっちゃ好きで。笑
映画館では誰も笑ってなかったんですけど、『お前がやるんかい!』ってめっちゃツッコミ入れたかった。

小ネタの詰め込み方もうまかったですね。
マリオの変身はもちろん、マリオカートの突っ込み方とかバナナで滑るとか甲羅投げつけるとか。
クッパの結婚式にボムキングとかでっかいテレサとかいるの、64世代歓喜だろって思いました。笑

ピーチを強い女にしたのも時代的に良い判断。
まあ、あんなに攫われる姫っていうのもめんどくさいし…
ルイージを攫われ役にしたことでサラッと『ルイージマンション』的要素を突っ込んでいたのも個人的には好印象です。

ストーリーは子供向けだしテーマ性もへったくれもないエンタメ全振り作品ですけど、僕はマリオのゲームなんてそれが正解だろと思っています。
マリオで人種差別とか経済格差とか論じられてもげんなりするわ。

というわけで、マリオを知っている人もそこまで知らない人も。
お父さんお母さんも子供も楽しめる本作は、まさしく全世代性別国籍対応型のエンターテインメント。
GW、映画館で観る映画に悩んでたらとりあえずこれ選んでおけば大失敗はしないはず。

いいなと思ったら応援しよう!