どちらかが間違いって訳じゃない。
相手のことがどんなに好きでも、どうしようもないような価値観のズレが生じることもある。
25歳の頃、めちゃくちゃかわいい子に恋をした。
多分、今出会っても見た目で好きになってると思う。
それぐらい、タイプの子だった。
でも、その子とは価値観が合わなかった。
気付いたのは、付き合い始めた後。
最初に違和感を覚えたのは、僕の部屋に二人でいた時だった。
出かける直前、彼女に「カーテン閉めた方が良くない?」と言われた。
出かける格好に着替えた後だった僕は、靴下のままベッドに乗って隣にあるカーテンを閉めた。
すると、そこから彼女が目に見えて不機嫌になった。
「靴下のままベッドに上がる人、理解できない」
彼女曰く、それは非常に汚い行動で理解に苦しむらしい。
まあ、理解できなくもなかった。
確かに、靴下のままでベッドに上がるのは良いことじゃない。
ただ、僕だって帰宅してすぐの靴下でベッドに上がった訳じゃない。
その時は家を出る直前だった訳で、靴下も洗い立てのやつだ。
それでも、彼女に理解してもらうことはできなかった。
次に揉めたのは、外でデートをしている時だった。
電車を降りた後、手を繋いだ。
すると、彼女は僕の手を振りほどいた。
「誰が握ったかも分からない電車の吊り革は汚い。
吊り革を握った手で手を繋ぐのは理解できない」
これだって、分からない訳じゃない。
確かに、電車の吊り革は汚いだろう。
ただ、僕の価値観からするとそこまでイヤなことじゃない。
それだけだ。
でも、これこそがどうしようもない”価値観のズレ”というやつで。
相手の考えが理解できるからこそ、余計にそれを感じた。
白を白、黒を黒だと思っていても。
どこからが白で、どこからが黒か。
その判断基準が違うと、一生分かり合えない。
結局、僕と彼女は2年半で別れた。
多分、最後までお互い好きなままだったけど。
どうしようもない考え方の違いは、埋めようがなかったから。
あの時のことを、時々思い出す。
今考えても、どちらかがはっきり何かを間違えていた訳じゃない。
きっと、それで良いんだと思う。