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読書日記(2024年9月)

保護猫を家に迎えるかもしれない(大阪の本宅で)……という可能性が急に現実になって、そわそわそわそわそわそわし続けた9月だった。そわそわし続けるだけの私の横で、夫が着々と準備をしてくれるのが情けなくも有難い。
秋が深まるころ、トライアルを開始することになりました。大人の猫なので新しい環境に慣れるのに時間がかかるかもしれないけれど、我が家で居心地よく暮らしてもらえるようにがんばるぞ。


わからない|岸本 佐知子

大事にとっておいた最新作を、ちびちびと読み……たかったのだけれど普通に一気読みしてしまった。堪え性がない。
先月読んだエッセイ集3冊はどれも『ちくま』での連載を本にまとめたものだったけれど、『わからない』は岸本さんがあちこちに書かれた文章をぎゅっと一冊にしてある。だから先行して出された本と一部内容が重なっているようで、「これ、別の本で読んだな」と思うエッセイもあった。そういうのって少し損した気になりそうなものだけれど、岸本さんの文章の場合、本の間から思いがけずいつか摘んだ花の押し花が出てきたような、懐かしくうれしい気持ちになるから不思議。
朝日新聞に連載されていたという『ベストセラー快読』からの収録作がいくつかあって、特に好きだった。カテゴリとしては書評なのだろうけれど、取り上げている本の多くがぜんぜん岸本さんと相性が良くなさそうなハウツー本や自己啓発本だからか、真面目な感想からどんどん妄想や空想に筆が横滑りしていき、もう何がなんだかわからない感じになっていて楽しい。岸本さんによりによって銀座ママがデキる男の特徴について伝授する本を読ませようと思いついた企画担当のひと、ありがとうございます。本当にありがとうございます。

起きられない朝のための短歌入門|我妻 俊樹・平岡 直子

9月はなんだか書くことについてぐるぐると考えるタイミングが重なり、少しだけ息苦しくなったのでお守り本に手を伸ばす。ページを開いて言葉を追っていると、胸の中にふうっと風が通る。読む救心。
これを読むと短歌を作ってみたくなるという方が多いのではないかと思うのだけれど、私は毎回そこまではたどり着けず、ただ「言葉が好きだなあ」と思う。伝わるとか伝わらないとか、理解できるとかできないとかの次元から一歩抜けて自由きままに並べられ、面白かったり美しかったりするかたちになっている言葉のことが、とても好きだ。エッセイや小説には、なかなかできない芸当。

物語のなかとそと|江國 香織

お守り本、もういっちょ。
久々に神戸の実家に帰る、電車内で読んだ(大阪の自宅から普通電車でゆっくり帰ると、1時間くらいかかる)。白昼夢か現実かはかりかねるような不思議な掌編(エッセイ?)や、書くことについてとつとつと語ったり、好きな本の素晴らしさについて力説する江國さんの筆致が、電車のそっけないシートや銀色の手すり、ぺかぺかした路線図といったような無機質なアイテムと妙に相性がよいことに気づく。実家の最寄り駅についても、まだ乗っていたい、と思った。

獣医にゃんとすの猫をもっと幸せにする「げぼく」の教科書|獣医にゃんとす

夫が、猫と暮らす準備をするために買ってくれた本。
猫の飼い方的な本は他にも何冊かぱらぱらめくってみたのだけれど、その中でも猫の健康や病気についての情報が充実しているところがいいなと思った。猫と暮らすというドリームを増幅するようなポジティブな内容というよりは、よりリアリスティックというか、「猫になるべく元気に、快適に生きてもらう」ことを最重要命題に設定していることが伝わってくる。仲良くなるとか懐いてもらうとかは二の次三の次で。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか|三宅 香帆

これも夫の蔵書から拝借。SNSで話題になっていたのを見て気になっていたので、これ幸いと読む。
読書と労働の関係について丁寧に解きほぐされていく過程は興味深いし、かねてからなんとなくモヤモヤしていた「読書がなぜか高尚な趣味と思われているっぽい問題」「最近のビジネス本が教養教養うるせえ問題」の理由についても合点がいくのが楽しい。
そういえば私も就職してからとんと本が読めなくなったのだけれど、noteを始めてからなぜか少しだけ読書量が回復した。アウトプットが増えるとその分脳に隙間が空いて、混沌を受け入れる余地ができるのかしら。


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