見出し画像

#434 新入社員が教えてくれた!ライティング・ラーニングがもたらす強いチームとは?

現在私は、IT企業で完成まで数年かかる大規模システム開発プロジェクトの業務アプリケーション開発のマネージャーをしています。昨年から私のチームに参画した新入社員がおり、彼女から最近学ぶことがありました。

それは、「ライティング・ラーニングの可能性」です。「書くこと」による育成の効果を見ていて、とても面白いのです。
新入社員の他にも2年目社員のメンバーもいますが、彼女もまたこの2年弱で、最初に会った時とは全く別人だと感じさせるくらいの成長を見せてくれています。
この2人のメンバーから私が教えてもらっている「管理職から見たチームビルディングの面白さ」について、皆さんにもご紹介します。

「書く」ことによる人材育成とは?

私自身は、2023年から毎日3,000字程度の記事を投稿することを通じて、「書く」ことによる学習の効果を自分の体験として実感してきました。
例えば、とあるテーマについて、仕事でまとまったレポートを作成しないといけなくなった時に、他の方が1週間かけてもなかなか進まなかった文章であれど、2時間程度あればある程度形にできるようになる、みたいな話です。

これは、文章が上手・下手というよりも、ある程度書くことが自分の頭の中でまとまっているか、という要素の方が強いです。
私も別に文章が上手ではないものの、様々なテーマに対して「何を言いたいか」を決めて、構成を考えて、それぞれの構成に肉付けをしていく、みたいな「書く型」が自分の中で出来つつあります。
書くことへの心理的ハードルが下がっているという面もありますし、様々なテーマに対して、ある程度自分の中で考えがまとまった状態で書き始めることができる。ここが、書くスピードが上がる理由です。おそらく、文章を書くのに時間がかかってしまう人は、「何を書くか」を決めたり「構成を考える」ところで、時間がかかってしまうのだと思います。私も「書く」練習をする前はそうだったので、想像できる話です。

で、昨年新入社員が自分のチームに入ってきたばかりの頃、「早く仕事を覚えたいです!」と意欲的な姿勢を見せてくれたので、「じゃあ、毎日少しでもいいから、今日は何を学んだか、文章にして発信してみたら?」と提案しました。
私自身も日々書くことを通じて、「ライティング・ラーニング」の効果を身を以て実感していたからです。彼女は「あまり文章が得意ではないし、皆さんの方が業務に詳しく、自分のレベルの低さを晒すようで恥ずかしいですが、やってみます!」と前向きに捉えてくれました。

それから彼女は、文字通り仕事がある日は毎日業務日報を発信してくれるようになりました。ちゃんと数えてないので分かりませんが、大体毎日500〜800字くらいですかね。うちはチャットコミュニケーションツールはTeamsを使っているので、私のチームが全員入っているチャットグループに毎日その日の学びを投稿してくれています。配属されたばかりの頃だけでなく、今も続いている取り組みです。

私が担当しているシステムは、世の中的にはかなりニッチな業務フローのBPR(Business Process Reengineering、業務本来の目的に向かって、既存の業務フローやプロセスをデザインし直すこと)案件です。そのため、私自身も業務理解に苦労する領域の難易度が高い仕事なのですが、彼女は1年目ながら、その新業務システムのお客様向けプロトタイプを作る仕事のリーダーを担ってくれるまでの成長を見せてくれています。私自身も「ライティング・ラーニング」による後輩育成は初めてですが、これは他のメンバーにも広めたいと感じるほど、彼女の成長に寄与している取り組みになりました。何がポイントになると思いますか?

「強制」でなく「自主的」なのが良い

まず感じるのは、彼女が自主的に書いているということです。
もちろんきっかけは、私が面談の時に「書いてみたら?」と言ったところにあるものの、その後は特に何も言っていません。続けばいいし、続かなければそれでもいいか、くらいの気持ちでの提案でした。

私自身も、もう15年前になる新入社員時代には、配属当初に「日報」がありました。配属されて数週間だけ取り組んでいたものですが、Wordファイルにその日に実施した業務を書いたものです。ただ、これはかなり義務的なもので、それ自体に効果があったのかと問われると、全くなかったと感じます。笑

当時の新入社員受入担当の先輩から「この様式で書きなさい、書いたものを所定のフォルダに格納しなさい」と指示があって書いたものですが、まずこの時点で業務的になってしまうのですね。そして、フォルダに格納されたWordファイルは、自分で見返すこともなかったですし、自分の上司や先輩から見られることもありませんでした。つまり、フィードバックがゼロなのです。
今思えば、この営みは、新入社員がサボっていないか確認するため、あるいは、業務報告書を提出させること自体が目的化した形骸化した営みだったように感じます。

一方で、彼女の業務終了前の「学びの報告」は、彼女の自発的なルーティンになっています。そして、私以外のチームメンバーも「いいね」をしたり、コメントバックするのが習慣になっています。おそらく、彼女はこのリアクションが楽しくて書いているのでは?と感じます。私が書くのが楽しいのも、一つには「読んでくれる人がいる」、「フィードバックをくれる人がいる」、「定期的にサポート(チップ)をいただく人がいる」ところにあるので、何となく気持ちが分かります。

チームの「形式知」に繋がっている

さらに良いと感じているのが、「チーム力強化」に繋がっている点です。
単なる「メンバー一人の人材育成」ではなく、書くことによる「コミュニティ・ラーニング」の可能性を実感し始めています。

というのも、彼女が「学んだこと」に書いてくれる話は、私自身も知らないことを多分に含んでいるからです。
私自身もマネジメント関連の仕事を持っているため、なかなかシステム仕様の細かなところまで全てを理解するところに割ける時間は限られています。しかし、彼女が書いてくれる日報には、この辺りを解明してくれる話が多く含まれており、私自身も色々と教えてもらっています。

彼女の伸び代が大きいと感じている要素の一つは、「分からないことを分からないままにしない」ことです。打ち合わせで出てきた業務仕様の細かな話について、決して分からないままにしないのです。打ち合わせが終わったら、フロアが異なる協力会社さんのデスクまで早速出向いていって、その話に詳しい人に聞きに行ってくれます。そして、教えてもらった内容について、その日の日報で必ず報告してくれます。
だから、私自身も打ち合わせの中で「ここどうなっているんだろう?」と気になりながらもキャッチアップできていなかったことについて、事後に彼女のレポートで学ぶ、ということが出来るのです。これって実は結構すごいことだと思いませんか?
そのレポートを見て分からないことがあれば、チャットで質問返しします。彼女がすぐ分かればチャットで返してくれますし、分からなければ翌日に再度調べて教えてくれます。「理解する」とは、「自分の言葉で説明できること」ですが、日々のチャットコミュニケーションを通じて、明らかにチームとしての形式知が溜まっているのを実感しています。

「ライティング・ラーニング」を日々のチーム内コミュニケーションに取り込めると、強いチームができるのを実感しつつあります。他にも、色々とその効果を実感しているので、また別の記事でもご紹介しますね!

いいなと思ったら応援しよう!

林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
もし面白いと感じていただけましたら、ぜひサポートをお願いします!いただいたサポートで僕も違う記事をサポートして勉強して、より面白いコンテンツを作ってまいります!

この記事が参加している募集