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#296 コンペや相見積もりは、ビジネスパートナーを失う可能性があることを理解する

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

今日も昨日に引き続き、沢渡あまねさんの「仕事ごっこ」を読んで着想した話をテーマに書いていきます。

皆さんは、仕事でコンペ(競争入札)に参加したり、取引先から相見積もりを取るような経験をされたことはあるでしょうか。
これらの目的は、行政のような公的機関であれば、事業の発注先に関する一定の公平性を保つ目的や、取引先同士を競わせる構図を取ることにより、できるだけ低価格で高品質な提案を受けることにあるので、全く合理性がない手段とは言いません。

一方で、あまりにも準備物が多すぎるコンペや見積取得は、徐々に「付き合いきれない」と判断する取引先を遠ざけてしまいます。結果的に、本来的な目的である、事業をやるのに必要な能力や適性を持った人や組織を寄せ付けられなくなり、何もできなくなってしまうので、やり方は常に考えた方が良いのでは?と考えています。

私自身も実体験として競争入札に参加したこともありますし、新規事業創発ミッションを担った時に出会ったスタートアップ系の関係者の方から、「時間軸が合わないので、とても自治体事業と付き合う体力はない」みたいな話を聞いたこともあります。
これは、会社での事業だけでなく、個人としても注意しておいた方が良いことと考えているので、その辺りを深掘りしていきます。


提案活動には対価が支払われないことが多い

中には提案料を支払ってくれるような、コンペ参加者の立場もよく理解してくれているケースもあるようですが、私が知る範囲だとそれはまだまだ稀なケースで、基本的には「営業活動でしょ」ということで、提案活動には一切の支払がないケースの方が多いのではないでしょうか。

発注者の論理で言えば「公平性を保つ」とか「できるだけ良い提案を安い価格で」というのは分かるのですが、よくよく考えると、これってコンペや相見積もりってかなり乱暴な手段であるとも考えられるのではないでしょうか。

企業にもよりますが、基本的には何らかのサービスや商品の見積金額を提示するということは、当然見積もるための前提情報を整理するための人の稼働が必要ですし、見積金額について担当者の気分で適当に出すわけにはいかないですから、社内決裁を回す必要があります。

つまり、見積や提案活動にも多くの稼働(=コスト)がかかっているということです。
人的供給制約で、あらゆる業界で人手不足が深刻化する中、いくら「営業活動」の側面があるとは言え、準備の稼働だけかなりかかる割にはビジネスになるか分からない、あるいは利益率が低い事業に人的リソースを持ってかれることは当然避けたいはずです。

発注先が付き合ってくれるうちはまだいいですが、発注元となっている企業側も「選ばれる立場」にあることを忘れてはならないと感じます。つまり、「1つの仕事を受注するのに、そんなに労力がかかるのか」あるいは「こんなに準備する資料が多いのか」と感じた発注先候補企業は、より提案しやすい他の取引先が現れると当然そちらをビジネスパートナーに選ぶはずだということです。

このあたり、発注者と受注者の関係性では、これまでどうしても発注者側優位となりがちでしたが、最近の「人的供給制約」の状況になって「受注者側にも発注者を選ぶ権利」が出てきたということです。
採用活動のように「採用者側に選ばれる企業」という構図は、こうした事業における取引関係のパワーバランスにも影響を与えつつあるのを感じます。

選ばれなくなっていくであろう発注者とは?

発注者として取引先から愛想を尽かされてしまうということは、本来仕事を発注することでやりたい事業ができなくなってしまうということです。
多くの場合、発注先との取引があってはじめて実現できる事業ばかりだと思いますから、発注先がいないということは、発注元の事業そのものが止まってしまうと言うことですね。

だから、自分は発注元として選ばれ続けるための行動が不可欠になっていくと考えますが、具体的にどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。いくつか私なりの考えを整理してみました。

とにかく「見積もり出して」をやめる

組織内での予算確保のためにある程度の見積もりが必要なのは理解できますが、大小問わず、何でも「すぐに見積もり出して」は、すぐにやめた方がいいと思います。

予算取りが必要であれば、発注元の責任である程度確保しておくとか、後で足りなくなったら足りなくなった理由を発注元組織で説明して追加で確保する、みたいな動きも取らないと、何でもかんでも「発注先から情報取得して」では、発注先が疲弊してしまいます。

提案料の支払がある場合は別にして、大小問わず見積もり提示の裏では、社内決裁を取ったりとコストがかかっているわけですから、発注元はそこをよく理解してあげないと、発注元組織の論理だけで発注先を振り回すのは危険なことではないでしょうか。

見積もり出せば必ず受注できるのであればまだしも、頑張って見積もり出しても採用されないリスクがあるのであれば、発注先からすると無駄なコストをかけるリスクでしかありません。この辺りもよく理解して、「見積もりを出す頻度をコントロールできる発注元」は、今後も良い取引先を離さずにいい事業に取り組んでいけるでしょう。

提案料を支払う

コンペなどで提示する企画案って、コンペ参加企業の渾身の一発だと思うんですよね。当然、コンペで選ばれたいから、というのが直接的な理由にはなるはずですが、より本質的な目的としては、そのコンペで採択されて新たなビジネスチャンスを獲得したり、その企業の存在意義=社会に与えたいインパクトを体現するというところにあるはずですから、本気で取り組んでいる企業が提案に込めた想いというのがあるはずです。

そこに対して、多くの候補者を集めてとりあえず提案させて、値段が安いところをとりあえず選ぶ、とかいうのは、何ともリスペクトがないスタンスだと感じます。
最悪の場合、提案だけさせてアイデアだけ盗んで丸パクリするという卑劣な手段を取ることも少なくないようです。
候補者を絞らないといけない以上、何かを選択するのは仕方がないと思いますが、せめて企画案を提示してくれたことに対する提案料を支払うとかは、コンペ主催者側は考慮する動きが広がっていけば良いと感じます。

必要以上に準備させない

何らかの事業に対してファンドをつけてくれるような機会は少なくないと思いますが、応募に必要な必要書類がやたら多いケースってありますよね。
提案書本書もそれなりに分厚いし、別紙が1から10まであったりして、それを埋めるだけで平気で2週間〜1ヶ月とかかかってしまうケース。
応募に必要な書類を準備するのに、仮に3人で1ヶ月かけて作った場合、1ヶ月分の1人あたり労務費をざっくり100万円と見ても、応募するだけで300万円のコストがかかるばかりか、その間、その3人は丸々一ヶ月間を他の事業にリソース投入できなくなっているんですよね。

他にリソースを割けない分の機会損失分まで考慮すれば、普通に600万円以上の
コストがかかっていることになりますが、それで援助してもらえる金額1,000万円あったとしても、本当にそれをやる意味あるのか、仕事を受ける方からすると疑問です。

だから、コンペの開催元は、審査にあたって「本当にその資料が必要か?」をよく吟味して必要最低限にすることを考えないと、誰も応募してこないです。「とりあえず必要になるかもだから入れておく」という軽い気持ちで入れたものが、どれだけ応募者側の負担に繋がるかを想像することが大切です。

以上、コンペや相見積もりに関して個人的に感じていることを整理してみました。
発注先の立場に立った健全な競争の気運が高まっていけば良いなと考えています。

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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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