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#393 巧みなポジティブフィードバック。相手を立てる人は、自分を立てる
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
今日は、先日仕事上で実際にあった出来事からの学びをご紹介します。
意外なところで取り組みを良く言ってもらえた
先日、プロジェクトを共に進めているビジネスパートナーの執行役員と私が勤務する会社の上席の面談の場に同席しました。
先方4名・当方4名の計8名で、いわゆる大企業トップ同士のコミュニケーションの場であり、私のような若造はその場をアレンジするための場所の調整や当日の説明資料の手配など、足回りを担当していました。
もともと私自身も出席予定はありませんでしたが、上司から「林くんも当日参加できるなら参加してもらってもいいよ」と声をかけられたので、当日のアジェンダも割と重要なものばかりで、どのような議論がなされるか勉強したいという気持ちもあったので、末席に加えてもらったのです。
で、基本的には、各アジェンダに沿って、先方の責任者の方から順番に説明を受けて、それに対して当社の先輩たちが色々と議論をする形で進められ、「林さんも何かありますか?」と振ってもらった時にプロジェクト現場の管理者として私もコメントする、みたいな形で進められました。
そして、色々と議論があった最後で、このまま閉会になるかな?というクロージングに入ったところで、先方役員や営業責任者の方から嬉しいフィードバックがあったのです。
先方役員からは「特に最近になって、当社と御社の関係性が過去とは非連続的な形でアップデートされていて感謝している」という趣旨のコメントでした。
そのビジネスパートナーとは、プロジェクト自体はもう15年近く一緒に仕事をさせてもらっていて、これまでも過去の先輩たちが色々と協力しながらやってきました。しかし、私が去年社内異動で全く別の部署から今のプロジェクトに参画した時に、「もっとコラボレーションを深化できれば、他にもやれることはたくさんあるのではないか?」と考えて、「お互いの会社のことをより理解する」ための施策を色々とやってみたのです。
今年度に入って自分のミッションについて上司とすり合わせの場があるのですが、私は自分のチームメンバーや、ビジネスパートナーの社員の方々と話していて、もっとお互いコミュニケーションを深められると、モチベーション高く仕事できると考えて、「会社間の関係性強化」を行動目標に設定しました。
それで自分のチームメンバーをパートナー会社の本社があるアメリカの研修に派遣したり、パートナー会社のニアショア先を訪問して直接現地のメンバーとコミュニケーションを取る場を作ったり、パートナー会社と共同主催の形でお客様向けに生成AIワークショップを企画しました。
また、手前味噌にはなりますが、生成AIワークショップで私がプレゼンした内容に対して先方の営業責任者の方が「林さんのプレゼン資料は、当社の社員が1年かけても作れないであろうレベルのものを自前で作られていた。そして、お客様の業界や会社に対する分析や想いを自分の言葉で熱く語られていて、私は営業として普段何のために仕事をしているのか、と猛省させられる素晴らしいプレゼンだった」という身に余る言葉をいただいたんですね。
もちろん、リップサービスもあると思いますが、思いがけない場で自分が主導してやってきたことに対して、有り難い言葉をいただき、思わず胸が熱くなりました。
褒め方が物凄く巧みだと感じた
で、この話から何が言いたいのかと言うと、単純に「やってきたことが評価されて嬉しかった」ということではなくて、さすがグローバル大企業の役員クラスの方は、相手の立て方が巧妙である、と感じたという点です。
ここで起きていることを俯瞰して捉えてみます。
まず、先方役員が「会社間のコミュニケーションがこれまでとは違った形で深化しており感謝している」という言葉は、当然その場で会社代表として出席している私の組織長への感謝の言葉でありつつ、先方としても関係強化の様々な取り組みに主体的に参加している、という実績のアピールにもなります。
役員の立場からすると自分たちの仕事は、ステークホルダーとの協力関係を最大限にして仕事の成果パフォーマンスを最大化することですから、さらに上の役員から「関係深化のためのアクションはやっているのか?」と問われることがあっても、「このような新しい取り組みをしている」ということがお互い上にも説明できる状態にできる、ことが双方で共有されたわけです。
また、具体的な取り組みを現場側で推進しているのは私だとしても、当然上が許可している(止めない)から実現できているのであり、私に対して褒めることを通じて、上の人を間接的に褒めているわけですね。
上の人が直接上の人を褒めたとしても、それこそ会社間の関係性もあるからリップサービスで褒めているとも捉えられる可能性もありますし、上の人1人に対して褒めている、という話で終わります。しかし、そこで末席として参加している私を褒めてくれることで、その活動を支援してくれている上司3名もまとめて褒めている、という構図が取れて、「全員が悪い気分にならない」状況を作り出しています。
また、私個人に対しては、(そこまでは全く意図していないとは思いますが)定量的な効果測定が難しい「会社間リレーションの深化」というテーマに関して、ポジティブなフィードバックがあった、という事実を作ってくれています。つまり、評価面談などの場で、「自分としては会社間の関係強化のためにこういう取り組みをして、深まってきていると感じている」というだけではどうしても独りよがり感を拭えないですが、「相手役員からもこういうフィードバックがあった」という事実を渡してくれているんですね。
私としては、そのような事実を作ってくれたことで、今後も積極的に「さらなる関係強化」を目的とした次の一手がさらに打ちやすくなります。これまでにない新しいチャレンジに対して社内でエスカレーションをする時に「以前もこういうチャレンジをして、先方役員から好意的な評価をいただいた」という事実により、次の決裁が取りやすくなり、当社の上司視点では「こいつに何かやらせると、また何かお土産を作ってくれるかも」という期待感に繋がります。
私としては、個人として個別に褒める場合、その場で励みになった、というだけの効果です。しかし、当社の組織長などもいる場で改めて褒めてくれたことにより、今後も社内説得をしやすくそのようなお膳立てをしてくれた、という貸しを作られた構図にもなります。
私に対しては、返報性の原理が働き、貸しを返すために次は自分も何かGiveしないといけない、という気持ちにさせています。
どこまで計算しているかはわかりませんが、少なくともこのような場で担当者を持ち上げるというのは、単純に担当者を褒めているというだけでない複数の意味を持っているわけです。
良いと思うものには、「良い」ということが大切
このように、「相手を立てる」ことが出来る人は、結果として「自分を立てる」ことができます。
そして、自分が良いな、と感じたものには、「良いな」と心の中で思っているだけではダメで、ちゃんと言葉にして然るべきタイミングで然るべき人に伝えて表現することが超大切です。
ちゃんと伝えることで、「相手を立てて、結果的に自分を別の場で立ててくれる」ことに繋がります。自分が「良い」と感じている取り組みを後押しすることになるんですね。どんなにいい取り組みでも、継続して発展させていくためには、客観的に「いいと思ってくれている人がいますよ」と言えるかどうかが肝です。
ポジティブフィードバックは、「いいと思ってくれている人がいる」ということを「事実」として認定することで、より取り組みを広げるための理由を作る応援行為です。
そして何よりも「相手にこれをしてほしい」と求めるだけのテイカーではダメ。今回のケースのように「あの時、ああいう場で後押ししてくれた」という「貸し」を相手にどれだけ作れるか。つまりGive Firstなんです。
出来る人はあらゆる場面で色んな人に「貸し」という資産を作り、いざと言う時に協力を得られるようにする、ということを実に強かにできていると思いますね。
一見処世術のようにも聞こえてしまいますが、物事を動かすにはこういう振る舞いも大切だと勉強になったので、今日は取り上げました!
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