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アテンションエコノミーを逆手に取って、「対価」を得る方法

とあるサイトの1ページや、SNSに投稿されたコンテンツを「見る・注目する」というたったそれだけの行動が、金銭的な価値を持つアテンション・エコノミー。それよってフェイクニュースがさらに拡散されたり、若者のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼすなど、様々なリスクが指摘されています。

しかしこのアテンションエコノミーを逆手に取る「逆転の発想」で、実は誰もが簡単にウェルビーイングな状態に近づけるのではないか…?そんな仮説のもと編み出された、今日から始められる新しいデジタル習慣とは。

私たちのアテンションには価値がある

突然ですが、私たちがインターネットの様々なサービスを無料で楽しめているのはなぜでしょうか。

それは、私たちがとあるウェブサイトを閲覧するという行動(PV/ページビュー)が、「有限(時間を割かれるから)であり、貴重な資源」だから。つまり私たちの1PV=アテンションには、お金を生み出すほどの価値があるのです。他にも「インプレッション(imp)」や、動画コンテンツでいう「視聴回数(再生回数)」なども同様の概念です。

それらに値札が付けられ、「PV単価」「imp単価」として売り買いされたり、交渉の材料にされたりしているのがインターネットの世界の日常です。こうしたインターネット空間の独特な仕組みは、注目や関心(=アテンション)が経済的な価値を持つ(=エコノミー)ことから、「アテンション・エコノミー」と呼ばれています。

そこで私は考えました。そもそもお金を生み出すほどの価値があるのであれば、そのリターンを自分の手で受け取ることはできないのか?と。名付けて「アテンション換金術(仮)」。つまり、私たちが1ページビューのために費やす時間や注目・関心を貴重なお金と捉えて、投資・運用するという発想です。

方策①自分の1PV/impの価値を高める

実はPV単価やimp単価は、媒体によって異なるということをご存知でしょうか?

例えばXやfacebookといったSNSのimp単価はだいたい0.3〜0.5円くらい、PV単価(CPM)は50〜150円くらいが相場です。一方、某マスメディアが運営するウェブサイトではimp単価で3〜5円、PV単価で300〜1,000円など、媒体によって桁が違うことがザラにあります(各メディアの媒体資料を調査)。

同じひとりの人間でも、あるサイトを見ている単価と、別のサイトを見ている単価が異なるって、不思議な感じがしますよね。これは、そのサイトにお金を払いたい人(広告主)がどれくらいいて、そのサイト内に存在する枠(広告枠)がどれくらい貴重か、によって値段が変動する仕組みによるものです。

ざっくり言うと、コンテンツやユーザーの「質」を売りにする媒体は「高い単価」を設定し、トラフィックや流入と呼ばれるような「量」を売りにする媒体は「安い単価」を設定しています。一般的には、プロの記者やカメラマン、編集マンなど取材体制を整え、一つのコンテンツにお金をかけているマスメディアなどは「質」が一定レベル担保されるため、前者のような「高単価」な媒体である一方、様々なメディアからコンテンツを集めるプラットフォーム事業者や、一般人による投稿がタイムラインの多くを占めるSNSは「量」を強みとする「低単価」な媒体とされます。

以上のことから言えるのは、私たちの1PV/impの価値を単純にお金に換算した場合、安い媒体ばかり見ていると自分の価値が下がることになりますし、逆に単価の高い媒体を見ていれば、自分の1PV・1impの価値を高められるということになります。

では、自分のPV単価・imp単価の価値を高めてくれるような「高い媒体」は、どう見つけたら良いのでしょうか。単価の高い媒体は、社会的に信頼性の高いメディアに多い傾向があり、例えば「クオリティメディア宣言」に名を連ねているかどうかをチェックするのが一番手っ取り早いでしょう。下記のリンク先を見れば、「私たちは質を重視するメディアです」という宣言に賛同した媒体がずらりと並んでいます(※順次、新たな媒体も追加されているようです)。

方策②「価値」を投資・運用する

価値を投資・運用するという発想も有効です。アテンションという限られたリソースをどのように割り当てるかを決められるのは自分しかいません。まるで資産運用の「ポートフォリオ」のように、将来自分がどんな価値を手に入れたいか、という視点で、逆算して配分を考えてみてください。

例えば私の場合、人脈づくりのためのSNSチェックに加え、情報通信を取り巻く気になるニュースのチェックのため2〜3サイトを欠かさず訪問。それから天気とスポーツと占い(照)を確認して、残りを電子書籍に振り分けたい。そう考えると、「SNS」30%:「ニュース」30%:「天気・スポーツ・占い」20%:「読書」20% の配分が理想です。iPhoneの「スクリーンタイム」という機能で調べてみたところ、私は1日平均約4時間をデバイスに費やしているようなので、「SNSチェックはだいたい1時間くらいで済ませようかな」と、目安をつけることができるのが最大のメリットです。

ちなみに、私がnoteを通じて知り合ったコンテンツディレクターの田中慎太朗さんは、1年間ほどマーケティングなどのビジネス書や経済メディアであるPIVOTに意識的に触れ、独立・起業に向けた集中的なインプットをされたそうです。そこで得た知識・ノウハウが、その後の活躍に生きているのは言わずもがな。

まさに限られたアテンションのポートフォリオを組んで運用し、自己実現に向かって突き進むお手本のような存在です。

方策③「価値」を換金する

私が現在取り組んでいる研究活動の中で、とあるニュースメディアの「記事をどれだけ多く読んでいるか」や「多様なジャンルの記事に触れているかどうか」によって、平均年収や肩書きにどのような差が現れるか、を調査しています。

その結果(まだまだ母数が少なく仮説の段階ですが)、1週間で多くのニュース記事を読んでいる人ほど年収が高く、また多様なジャンルの記事に触れている人ほど、同世代の中でも高い役職に就いている割合が高い傾向があることが分かりました。

このことから、価値あるアテンションをうまくコントロールできれば、その価値を換金し、十分な対価を得られる可能性が高まると言えます。年収や肩書きなどはあくまで一つの指標に過ぎませんが、いわゆる「社会的な評価を得られている人」の多くは、ダラダラとスワイプし続けたり、スクロールが止まらず時間を浪費したりすることはめったにないというわけです。

『アテンション・スパン』の著者、グロリア・マークさんもこのように記しています。

-あたかも手持ちの金融資産を分散させるように、限られた集中リソースを読書や電話、中断への対処、さらに自分の思考にも割り当てなければならない
-ポジティブな気分でいれば、達成できることも増える。ポジティブな感情は創造力の源となることが証明されており、私たちの思考と行動の可能性を広げ、広範な問題解決策を生み出してくれる

グロリア・マーク.ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学.日経BP 日本経済新聞出版,2024

アテンション・エコノミーを逆手に取り、「対価」を得るというアプローチは、一転してウェルビーイングを手に入れるための有効な処方箋と言えるのではないでしょうか。



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