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毎日400字小説

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2023年10月24日~2024年10月23日 毎日1篇アップしました!
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#400字

毎日400字小説「トリップ」

 トベる、と、あの子は言った。やなことがぜーんぶ消えて、ふわふわする。きもちーの。一緒に…

友直
1年前

毎日400字小説「生活」

 よく切れない包丁でフサエは魚を捌いた。もともと小柄で既成のシンクは使いにくかったが、八…

友直
1年前
1

毎日400字小説「再会」

「でも、先輩彼女いるし」「でも、それと茉由が好きなのとは、関係なくない?」「えーそうかな…

友直
1年前
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毎日400字小説「夢」

 別々の夢を持つ男と女が、旅先で出会って恋をした。励まし合いながら、甘い時を過ごす。男の…

友直
1年前
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毎日400字小説「さし」

「さし貸して」  隣の席の男の子が、こっちを向いて言った。入学したばかりの大学の、階段教…

友直
1年前
2

毎日400字小説「夕焼け」

 駅を出ると金色の夕陽が目を打った。赤く染まった空のほうに顔を向けて、目を細める。橋の欄…

友直
1年前
1

毎日400字小説「遭遇」

「見ちゃったかも、わたし」教室の前で雪乃がそう言うのを聞いて、また言ってる、と思った。藤崎のイオン、駐車場で、と続くのを聞いて、はいはい、と胸の中でだけ言う。「やっぱ警察に言った方がいいのかなぁ」好きにしてくださいよ。茶色い髪の毛を頭のてっぺんでお団子にして、サマーセーターの袖を引っ張って着ている雪乃は、クラス一かわいいわけではないけれど、そういうふうに見える仕草はきっと学校一で、彼女の周りも、そんな、男子からの人気しかものさしのない子たちで、もちろんわたしはその外周の外周に

毎日400字小説「焼き肉」

 年取ったら量は無理だわ、って言うのムカつく。前に座る先坂さんが、上カルビを追加する瑠璃…

友直
1年前
6

毎日400字小説「救い」

    そのメッセージが入ったのは、日曜日、夕方五時ごろのことだった。昼過ぎに起き、こたつ…

友直
1年前
1

毎日400字小説「未遂」

 そうっと鍵を回し、ドアを開ける。センサーで玄関のライトが光るのにもびくつきながら、靴を…

友直
1年前

毎日400字小説「朝」

 階段を下りると白々と夜が明けてきていた。俺は寝不足の目をしばたたかせ、冷たくすがすがし…

友直
1年前
3

毎日400字小説「美容液」

「この成分が入ってるのは、これだけなんです。毎日の習慣で十歳、若見えしますよ」  ドラッ…

友直
1年前
2

毎日400字小説「シケモク」

 段ボールを敷き、ビニールシートで覆った下で、寅三は腹を庇うように体を丸めていた。額には…

友直
1年前

毎日400字小説「初恋」

 ぐんと体を伸ばす。水を掻く。足を交互に上下する。水面に口を出して息継ぎをする。  水の中、美佳子の身体は地上にいるときよりしなやかに、力強く動く。三歳で入会したスイミングスクール、背の届かないプールに入れられたとき、ここが私の居場所だと、頭じゃなくて感覚でわかった、それからずっと、美佳子は水の中を愛した。青いプールの底から見る景色を愛した。水を押しのけるときの、かすかな抵抗を愛した。水は実日子の身体を軽くする。水中でくるくると何度も回転した。肌との境目がわからなくなるぐらい