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毎日400字小説「朝」
階段を下りると白々と夜が明けてきていた。俺は寝不足の目をしばたたかせ、冷たくすがすがしい空気を胸の中に入れる。カズー、と、後ろから冬馬の呼ぶ声がした。振り向くと美保の肩に凭れかかって立っている冬馬の、爆発したような金髪がある。金髪の根元は三センチぐらい、見事に真っ黒になっている。
「おれきょういちげんむりらわ」冬馬は回ってない舌で言いながら地面に下りてよろけ、倒れ込むように俺の肩に縋った。「たく、どうすんだよこいつ」俺はその体を押し返し、困ったな、という顔をつくって美保に向ける。「ごめんねーカズ君」美保は笑い、よろける冬馬を引き連れ、アパートのほうに帰っていった。美保と変われたら。俺は、力なくぶら下がった冬馬の左腕を見ながら思う。
俺たちは四回生で、久々のオールだった。この日を懐かしく思い出すことがあるんだろう。そんなことを考える俺の横を、通勤のサラリーマンが駅へのスロープを上がっていく。