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    2024年10月24日~ 不定期更新ですよ

  • 毎日400字小説

    2023年10月24日~2024年10月23日 毎日1篇アップしました!

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    思ったこと、読んでる本のことなど、つぶやきです。

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読書日記、はじめます。

一年間、毎日400字の小説をアップしてきた。最初の頃は楽しかったが、だんだんネタが思い浮かばなくなり、まあまあ苦痛だった。勝手に始めたのだから勝手に辞めればいいのだけど、自分で決めたことなのでとりあえずやりきった。いやあ、とにかくなんでもいいからと、いい加減に書いたやつもたくさんあります。変なものを読ませてすみません。 そして今日、それがなくなってみると、やらなくていいのか、という安堵とともに、なんだか気が抜けたよう。もっと楽に書けるものをと思い、今読んでる本について思った

    • 『小説すばる2024年12月』(集英社)

      第37回小説すばる新人賞受賞作『グッナイ・ナタリー・クローバー』須藤アンナ(抄録)。うまい。架空の町、チェリータウン。 「褒められたものではない大人たちに認められなかった子供たちが、他にすることもなく安いスリルに手を出し、後先を考えずに子どもを作っては、親にされて悲しかったことを自分の子どもにする。」 「もう何十年も、ひょっとしたら開拓時代から、ずっとそうなのかもしれない。」と、あるから、アメリカのどっか片田舎なのでしょう。携帯やネット、テレビさえあるかわからない、古い時

      • 『私の身体を生きる』西加奈子 他(文藝春秋)

        17人の女性作家による、性をテーマにしたエッセイ。のっけから、島本理生さんが引いている鷲田清一さんの一文に、どきりとする。 「それなしで生きていけないものを、心のどこかで見下しながら生きるというのは不健康です。」 これは身につける衣服についての言葉で、島本さんは自分がずっと「どこへ着て行っても恥ずかしくない、無難な服だけを選んでいた」という。他人から見た「女性」に、ふさわしい服ということだ。 女は女であるために、他人に迎合したり、自分を汚してみたり、自分の体を客体化して

        • 『いま、幸せかい?「寅さん」からの言葉』滝口悠生 選(文春新書)

          2019年公開のシリーズ50作目、『お帰り 寅さん』を見てから、『男はつらいよ』にハマった口です。時はコロナ禍、それまでの49作を、配信でほぼ見てしまった。滝口さんの小説は何作か読んでいて好きなほうだったので、寅さんマニアと知って、「わあ!」と、思った。妾の子で中学中退、怒りっぽいし、すぐに拗ねるし、えらそぶる、場を仕切ろうとする、迷惑な伯父さん。だけど、「人生にはもっと楽しいことがあるんじゃないかなって思わせてくれる人なんですよ」と言われ、慕われる寅さんの魅力の一端が、この

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        • 『小説すばる2024年12月』(集英社)

        • 『私の身体を生きる』西加奈子 他(文藝春秋)

        • 『いま、幸せかい?「寅さん」からの言葉』滝口悠生 選(文春新書)

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        記事

          『夜のピクニック』恩田陸(新潮文庫)

          朝八時から翌朝まで、丸一日ぶっ通しで全校生徒が歩き続けるイベント『歩行祭』。今年で最後の三年生、男女二人の視点で交互に語られる。主に、同性の友人たちと恋バナをしながら歩き続ける二人には誰にも言っていない秘密があり、このイベントを機に関係を変えたいと思っている。 2004年、第二回本屋大賞の受賞作。書店員が選ぶ賞ということで、書店員をしていた身としては注目していたし、ワクワクしていた。だけど文芸書担当ではなかったし、書店員といっても、どこか遠い人たちが選んでいるという意識もあ

          『夜のピクニック』恩田陸(新潮文庫)

          『冬の光』篠田節子(文春文庫)

          父が遺体となって海から上がった。父には家族を裏切った過去があり、数年前に、家族の前で、その女と絶縁させられている。海に落ちたのは、四国八十八カ所の遍路帰りのフェリーであり、遍路は、東北の震災の被害者の慰霊のためだった。彼はその前に、被災地でボランティア活動をしていた。純粋な慈善活動かと思いきや、かつての愛人がそこで罹災し、亡くなっていることを知って、未婚アラサーの次女が、父が何を考えていたのか調べるため、残された手帳を元に、四国の遍路を回ってみることにする。 「お母さんより

          『冬の光』篠田節子(文春文庫)

          『さくらのまち』三秋縋(実業之日本社)

          マチアプのサクラの仕事をしている主人公(男)のもとに中学の同級生が死んだという一本の電話が。死の真相を探るために田舎に帰る。その同級生(女)とは、もう一人の同級生(男)と三人で、ガレージで映画を見たりしてかなり親しくしていた時期があった。 腕輪によって、国が国民の健康管理をしている社会という設定。自殺願望のある人のもとには、それを止める役割の者が派遣される。全く自然に友達のように近づいてくるため、それがサクラとわからないが、それゆえ、自分に親しくしてくる人は、サクラなんじゃ

          『さくらのまち』三秋縋(実業之日本社)

          『朝と夕の犯罪 神倉駅前交番狩野雷太の推理』降田天(角川文庫)

          かつて、お父さんと賽銭泥棒などをしながら車中暮らしをしていた血のつながらない兄弟の再会と狂言誘拐が第一部。第二部はその八年後、児童置き去り事件を発端に、過去の狂言誘拐が本当のところ何だったのか、暴かれていく。ううーん。虐待の連鎖。事件ものったら、それが多いよな。つい、そうなってしまうのよな。それだけ興味を引く話であるから、これも、ぐいぐい読まされた。「知りたい」という人間の欲望は強いそうですよ。でも、新味がないと、新人賞は獲れません。こういう謎も、考えつきません。 本筋の謎

          『朝と夕の犯罪 神倉駅前交番狩野雷太の推理』降田天(角川文庫)

          『アメリカン・マスターピース 古典篇』柴田元幸翻訳(スイッチパブリッシング)

          オーディブルで。なんと柴田元幸さんの朗読。 ホーソーン、ポー、マーク・トウェインにジャック・ロンドン。19世紀~20世紀初頭、アメリカ古典のザ・ベスト・オブ・ベスト。ほとんど読んだことなかった。そして、メルヴィル著『書写人バートルビー』にやられてしまった。書写人として雇われたのに、仕事を頼まれても「そうしないのが好ましいのです」と言って、なんにもやらない人。この「好ましいのです」が、人にもうつって、口癖になってしまう。ついに職場に住みつき、出て行かないので、雇い主は事務所を引

          『アメリカン・マスターピース 古典篇』柴田元幸翻訳(スイッチパブリッシング)

          『旅する練習』乗代雄介(講談社文庫)

          誰か忘れてしまったが「宝物のような本」と絶賛していた書評を読んで、読もうかどうしようか、やっぱり読むべきかと考えていたのだけどようやく読んだ。中学受験に合格したばかりの亜美ちゃん(あびちゃん)の魅力がすごい。サッカーが好きで、サッカーをやるために受験をして、オムライスが大好きな楽観的な女の子。ちょうどコロナで学校が休校になってしまい、もろもろ予定が飛んでしまったころの話。小説家の叔父さんと亜美ちゃんは、合宿所から拝借してきてしまった本を返すために、鹿島まで徒歩で旅をすることに

          『旅する練習』乗代雄介(講談社文庫)

          『死刑にいたる病』櫛木理宇(ハヤカワ文庫)

          レベルの低い大学にしか入学できず、鬱屈した学生生活を送る主人公が、元パン屋の店主であり、連続殺人犯として収監されている男から、一つの容疑を晴らして欲しいとの依頼を受ける。男の関係者に聞き込みに回ることで、虐待されてきた男の過去を知ることになり・・・という話。虐待の連鎖。調べていくうちに明らかになる衝撃の事実。ちょうど今、兵庫県の連続女児殺傷事件のニュースが流れていて、とてもタイムリーだった。サイコパスの出来上がり方。 ずうっと、気にはなっていたのだけど、ようやくオーディブル

          『死刑にいたる病』櫛木理宇(ハヤカワ文庫)

          『イニシエーションラブ』乾くるみ(文春文庫)

          これほど売れてる本はないだろうから、もうネタばれしてもいいよね?うちにあるのは2007年4月第1刷の、2009年7月第27刷だった。初めて読んだ時は、こっわ、えっぐ、と思ったので、どのようにだましていたのか検証しがてら再読したところ、そうこわくもえぐくもなかった。まあ、知ってるからでしょうが。遠距離恋愛になって、不安や不満などが出てきた時期に新たな出会いがあり、並行して付き合っている期間があって、結局別れたという、おそらくよくありがちな恋愛模様だが、書き方によって、こう見せる

          『イニシエーションラブ』乾くるみ(文春文庫)

          『偽りの家 家族ミステリアンソロジー』宮部みゆき他(角川文庫)

          『鬼畜』松本清張が鬼畜過ぎた。外で3人もの子供をつくってしまった印刷工。妻バレし、女は子供を置いて逃げ、男は子供を処分するよう、妻から言い渡される。一人は事故のような形で亡くなり(おそらく妻の仕業)、一人は見知らぬ土地に置き去りにし、もう一人は毒殺に失敗して崖から突き落とす。1957年初出。児童虐待がミステリの題材として注目されるようになったのは1990年である、と解説にある。この話は、検事から聞いた実際の事件をもとに書かれたものだとも。人間って、おそろしい。 『裂けた繭』

          『偽りの家 家族ミステリアンソロジー』宮部みゆき他(角川文庫)

          『恍惚の人』有吉佐和子(新潮文庫)

          「早く死にたい、早く死にたいって、ポロポロ泣きながら言ってるわ」 人間は誰しも最後の最後に死を迎えなければならないって、なんて残酷なことでしょう。 姑が死に、残った舅に振り回され、日常生活が送れなくなっていく一家。昭和47年刊ということもあって、一番の被害を被るのは嫁であるが、でも今もそんなに変わらない家庭はあるに違いない。徘徊したり、やたらとご飯を食べたり、息子の顔がわからなくなったり、おねしょをするようになったり・・・と、老いた人間の介護にうんざりし、死を願いもするの

          『恍惚の人』有吉佐和子(新潮文庫)

          『不倫論』鈴木涼美(平凡社)

          「個人を追い詰める結婚制度とは一体何なのか」ということにつきるようです、どうやら。男も女も、一生一人の人と添い遂げるのは難しい。一夫一婦制に無理がある。生涯不倫経験率は男が四人に三人、女は十人に三人。男のほうが多いわけで、そして、女が不倫した場合、結婚生活の破綻につながることが多いらしい。けれど、結婚生活維持のために、よそで恋愛をするということもあるようですよ。 そうまでして守らなければいけない結婚て、何なのか。 「恋愛における行き場のない不安や言い表せないほどの愛しさに

          『不倫論』鈴木涼美(平凡社)

          『BLUE GIANT MOMENTUM 3』石塚真一(小学館)

          サックス奏者を志した大が、世界各地で揉まれて、でっかくなってゆく話のニューヨーク編第三巻。今一番好きなマンガ。石塚さんは、『岳』もボロ泣きしたけど、魅力的な人物を描くのがとてもとてもとても、上手。 とてつもないライバルの存在を知って、大は奮起する。ぐっとくる会話が、各巻に一個や二個、ぜったいあって、この巻では、サックスレッスンの生徒との以下の会話。 「勝てないで、何も起こらす終わるんじゃないかって・・・」 「全然思わないね!!  毎日、何かが起こってる!練習だって調子が悪

          『BLUE GIANT MOMENTUM 3』石塚真一(小学館)