【読書】マインドフル・リスニング
これからの時代に欠かせない「聞く」スキルの重要性という帯がついているこの本。YeLLの篠田さんが前書きを寄せている。
「きく」というのは「聞く」「訊く」「聴く」などといろんな言葉が当てられていて、人材育成の世界では、傾聴、対話の話をする際によく触れられることであると思う。「相手の話を評価判断しないようにしよう」、「相手の言葉の背景にある、感情、価値観、経験をその世界を体験するようにきこう」と、その大事さが伝えられる。このことは何度となく、それこそ”きいて”いて、一応受け取っているつもりでいたけれど、その実、中身についてはほとんどよくわかっていない、という状態であったと思う。
まず、「きく」ということについて、私は受動的な印象をもっていた。
相手の意見を受け入れる、遮らない、そうだね、と共感的にきくというくらいのことしか思っていなかったし、実際そのようなことしかできていなかった。
ハーバードビジネスレビューの主要論文をピックアップしてあるこの本では、きくということに対する実証実験、研究者による検証がなされた興味深い論説が11個まとめられている。どれも興味深いけれど、このnoteは別にほんの要約を目的としているわけではないので、一つだけ紹介したい。
もっとも興味深かったそれは、9番目の論文。ガイ・イツチャコフとアブラハム・N・クルーガーの”The Power of Listening in Helping People Change”
この本でのタイトルは、「部下の話に耳を傾けるだけで自発的な改善が促される」
フィードバックは、相手に変化してもらいたい。気づいてもらいたいためにすることである。上司が部下に対して指導するような印象が強いけれど、部下が上司に理解してほしいとフィードバックすることも該当すると思う。
肯定的なフィードバックであれば、まだよいが、相手にとって嫌な気持ちをもたれる懸念のあるフィードバックは本当に難しい。私の経験上、うまくいかないというのがほとんど。そこには、自分の相手に対する否定的な感情がある。怒りや不満が言葉だけでなく、表情や態度で伝わっていく。そのことが相手に受け取られるということはほぼない。
残念ながらフィードバックがよい結果を生むということなく、相手との関係性が悪化し、そのまま距離をとったり、愚痴をいったり、と疎遠になってしまうというのが私のパターンである。他の方も程度の差はあれ、同じような経験身に覚えがないだろうか。
この論文は、表題にあるとおり、相手の話に耳を傾けるだけで、相手の自発的な改善が促されるということが、実感などを通じて照明されていることを伝えてくれる。
相手を変えたいと働きかけるのではなく、相手の話に耳を傾ければ、相手が(結果的に)変化する。というのはインパクトがないだろうか。
なぜそのような結果が起きるか。
一つは、よりよいきき手を前にすると、その人は相手に対する不安感が低くなり、自己認識力が高まるということ。もう一つは、より幅広い、極端でない考え方を受け取れる状態になることであると言っている。内省できるとも言える
このことが実験で証明されているというのだから興味深い。
結局のところ、自分が変化を創れないのは、自分がきけないからであるということを考えてみることには価値がある。
このことはあまりにも知られていないし、多くの人はここで関係性の問題に苦しんでいるように思う。
相手を変えるのではなく自分が変わりなさい
とはよく言われるが、この言葉だけでは具体的にどうしたらいいかが乏しく、立ち往生してしまいがちだ。私のように、受動的に相手を受け入れるということなのかと勘違いしてしまう部分もある。
実際には、相手のことを”ききなさい”とはもっと積極的なアプローチであることを示唆している。
自分には足りないスキルであると自覚しているので、かなり鍛錬が必要。粘り強く取り組んでいきたい。
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