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21日の音楽

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2022年9月より、毎月21日に好きな音楽の動画(または音声)について、ひとりよがりに紹介しています。
運営しているクリエイター

記事一覧

True Colors by Cyndi Lauper

なんと21日の音楽が2025年の初noteになろうとは。近々書く予定ではあるけれど、ほかの優先事項…

桂田祐介
1か月前
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Bésame Mucho by Michel Camilo & Tomatito

昨年まで幾度か取り上げていたミシェル・カミロを今年はまだ紹介していなかった。このドミニカ…

桂田祐介
2か月前
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San Diego Serenade by Rebekka Bakken

先日まで米国に行っていた。滞在したのはカリフォルニア州南部のカールスバッド。週末にはバス…

桂田祐介
3か月前
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Innocent When You Dream by Tom Waits

先週、これまでの「21日の音楽」を総括したなかで、わたしの敬愛するトム・ウェイツの曲が(カ…

桂田祐介
4か月前
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25本の音楽動画まとめと「壊れた自転車」再掲

先月21日に書いたとおり、細々とマニアックな音楽動画を紹介してきた「21日の音楽」もまる2周…

桂田祐介
4か月前
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Time by Tori Amos

21日の音楽として毎月音楽について書き始めてまる2年。今月から3年目。今月は原点に戻るつも…

桂田祐介
5か月前
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再生

China Girl by David Bowie

昨日まで中国に行っていた。大陸側、いわゆるメインランド・チャイナへははじめてだ。 10日間の日程、ずっと北京にいた。比較的低緯度の海に面した香港や台湾にくらべて、その気候や言葉以上に違いを感じたのはやはりその体制の違いか。いつも使っていたスマホのアプリはほとんどが使えず、持っていた書類が没収されることもあった。 中国からの帰国直後となった今月の21日の音楽、ややベタな選曲だけどデヴィッド・ボウイのこの曲を選ぶことにする。 ボウイがライブで語るように、このChina Girlは1970年代にイギー・ポップと一緒に書いた曲だ。 現代とはおおきく異なる当時の中国。その中国Chinaの名を冠した少女に対して、「青い瞳をあげよう(I'll give you eyes of blue)」、「世界征服を企む男をあげよう(I'll give you a man who wants to rule the world)」と尊大な妄言を吐く白人男の様は、現代では問題視されそうではある。この妄言や「雷鳴のごとき心臓の鼓動(I hear her heart beating as loud as thunder)」、「破裂する星(I saw the stars crashing down)」といった表現に、ドラッグの隠喩だとの説がある。そうしたダブルミーニングはロックの定番だから、きっとそうなのだろう。 ボウイがこの曲を書いた70年代、歌った80年代を経て、中国は世界の工場と呼ばれる経済大国になった。自由主義世界とは異なる価値観の、一党独裁の社会主義の大国になった。近年は、他国の情勢との連関もあって、不穏な危うさを感じさせる場面もある。 この曲が書かれた70年代なかば、デヴィッド・ボウイは東西冷戦の最前線のベルリンにいた。当時もすでに中国は社会主義陣営。チャイナ・ガールが否応なしに黙ってと言うところにも繋がってきそうだ。 And when I get excited My little China girl says Oh baby just shut your mouth She says, Shh... わたしたち日本はいちおう自由主義世界にいる。ここでどちらがどうというのは不毛だ。2016年のはじめに亡くなったボウイは冷戦下ですでに何かを予見していたのか。 中国から帰国してすぐ、ふとそんなことを考えてしまった。

We Can Work It Out by the Beatles

本日7月21日、思いたって浅草のブックマーケットに出かけた。去年も行って楽しかったブックマ…

桂田祐介
7か月前
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The Elfin Knight by Boann

本日は夏至。 夏至にはいつもシェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』を思い出す。洋の東西を問わ…

桂田祐介
8か月前
9

忘れちやいやョ by 渡邊はま子

先日、大吉原展を観に行った。これはまた別に書いておかなくてはと思っているのだけど、かつて…

桂田祐介
9か月前
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Moon River by Audrey Hepburn

昨日、東京の虎ノ門ヒルズで行われているTiffany Wonder展に足を運んだ。これはあのジュエリー…

桂田祐介
10か月前
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Martha (Tommy) by Bette Midler

まさかの2回目のMarthaはベット・ミドラーによるカヴァー。トム・ウェイツはトム・フロスト(…

桂田祐介
11か月前
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Valentine Moon by Sam Brown and Jools Holland

2月といえばバレンタイン。本邦では女性から男性にチョコレートを贈るのが定着して久しいけれ…

桂田祐介
1年前
9
再生

The Times They Are A-Changin’ by Sinéad O’Connor

先日、地図について書いたときに最後に取り上げたボブ・ディランの名曲The Times They Are a-Changin’ (時代は変わる)。この曲は多くのシンガーにカバーされている。もともと変化に乏しい曲調のせいか、どれも歌詞のメッセージがはっきりと伝わってくる。 いつのものか不明だけど、昨年56歳で他界したシネイド・オコナーが歌うバージョンを見つけた。 先のnoteでは断片的に歌詞を引用していたけれど、じつは公開直前に削除した引用部分がある。描写が津波を連想させて、記事のテーマ的に不適切な感じがしたからだ。以下、その部分と拙訳を書いておく。 admit that the waters around you have grown and accept it that soon you'll be drenched to the bone 周りの水がどんどんと増してきて、 骨の髄まで浸ってしまうのを受け入れざるを得なくなる if your time to you is worth savin' then you better start swimmin' or you'll sink like a stone for the times they are a-changin' 自分の時代に救う価値があるなら いますぐ泳ぎだしたほうが良い さもなくば石のように沈むしかない 時代は変わるものだから この曲が発表された1964年にはまだ温暖化による海面上昇など想定されていなかったし、ディランがこの比喩で何を示唆していたのかわからない。しかしダーウィンの適者生存説のように、わたしたちも変化に適応していかなければならないことを歌っているのは明らかだ。 先日、突如わたしの使っていたMacBookが壊れてしまって、前回のnote更新はスマホからおこなった。このnoteも同じくスマホで書いていて、操作の勝手の違いがじつにまどろっこしく感じる。 いままでと同じように推敲しながら長文を書くのにはスマホからではかなりエネルギーが必要だ。たまたまパソコンが故障しただけなのだけど、なんだか自分の状況がこの曲でも歌われていることのような気がしないでもない。noteの書き方を変えるタイミングなのかもしれない。 いやいや、noteの書き方はほんのひとつのことにすぎない。身の回りから世間、政治、世界情勢と、あらためていろいろと変わり続けている。わたし自身こそアップデートが必要な時期が来ているようだ。 今日選んだ音楽映像のシネイドも、けっして幸せな形ではなかったけれど、変化し続けた生き様の表現者だった。