Martha (Tommy) by Bette Midler

まさかの2回目のMarthaはベット・ミドラーによるカヴァー。トム・ウェイツはトム・フロスト(男)からマーサ(女)への呼びかけだったけど、このカヴァーではベッツィー・フロスト(女)からトミー(男)へと変わっている。そして40余年の設定が半分の20余年に。

20年。結婚23年目のわたしには別の含みをもって聴こえてしまう・・・が、ここは素直に若き日の想い人への呼びかけということで。

ベットはトムとのデュエット曲 I Never Talked to Strangers を収録したアルバム Broken Blossom にこのカヴァーを入れたかったとか聞いたことがある。なにかの事情がそれを許さず、ライブで歌われただけだったようだ。

情感たっぷりに、かつての薔薇と詩と散文の日々(the days of roses, poetry and prose)をふりかえる。あの頃は若くて愚かだった(we were all so young and foolish)とふりかえる。

ベットはトムに恋をしていたのではないかとすら思えるその歌いぶりはさすがだ。

先日、石山寺を訪問したことを書いた記事で、わたしは大河ドラマ『光る君へ』について触れた。ドラマで現在進行中のまひろと道長の恋路は史実から成就しないことが明らかだ。けれど、互いにずっと想い慕いつづけて老境に達した頃には、あのふたりは和歌と漢詩を交わした日々を若者らしく愚かだったと省みるんじゃないだろうか・・・と、そんな想像をしてしまう。

あぁこの感覚、トムの歌うMarthaみたいだなと思ったら、ふと、このベット・ミドラーの歌うカヴァーをも思い出した。

歌の中のトム・フロストもきっと忸怩たる思いでマーサと別の人生を歩むことにしたのだ。そしてそれを読みとったベットは、同じくすれ違う恋物語を歌うためにカヴァーした。マーサとしてではなく、自らを投影したベッツィーの名で。では、ベッツィーの恋の相手トミーは誰?

ベット・ミドラーはちょうどトム・ウェイツとのデュエットで見知らぬ男と恋に落ちる歌を歌った直後。このカヴァーは20年後を想定したのかも。

ベッツィーはフロストの姓を名乗っている。トム・フロストの配偶者?とするとさらに別のトミー(トム)がいる?それとも愛するトム・フロストと結ばれた想定でそう名乗っている?

そんな妄想をしたら、紫式部が道長をモデルに光源氏の物語を書いた説がとても有り得そうだと思えてきた。

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