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川下り型キャリアを実践する女の話

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大企業正社員、専業主婦、パート主婦、海外インターン、海外中小企業の管理職、フリーランスと、様々なポジションで、編集、企画、事業推進、秘書、マーケ、ライターと様々な職種を経験した自…
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#アメリカで働く

「川下り型キャリア」を実践する女の話:イントロダクション

「君のキャリアは川下り型だね」 これは元上司で現リクルート社長の北村さんに言われた言葉である。当時私はサンフランシスコにあるUXデザイン会社でマーケティング部門を統括するディレクターとして働いていて、北村さんは出張でサンフランシスコを訪れていた。マリオットホテルの最上階にある夜景の素敵なバー「The View Lounge」で飲みながらリクルート退職以来の紆余曲折を話した私について、北村さんはそう表現した。 それまでキャリアに「山登り型」と「川下り型」があるなんてまったく

爆発した欲、取り戻した自己肯定感

「サンフランシスコ インターン」で検索ヒットした記事を読むと、どうやらbtraxという会社で日本人がインターンしているようだ。次は「btrax」で検索。開いたウェブサイトで最初に目に飛び込んできたのは”Cross-cultural Marketing”という言葉だった。 衝撃を受けた。私が卒業した学部の英語名は当時”Cross-cultural Studies”。そして私はマーケティングがしたい。自分にはまるキーワードが並んでいる。さらに進むとその会社は日本語のオウンドメデ

内なる「世間の常識」に気づいた日

こうして私は「正社員か、インターンか」の選択を迫られた。 インターンは無給である。期間は3か月間。インターン終了後に正社員に採用される確証はどこにもない。つまり、3か月間のインターン終了後、また就職活動をしなければならない可能性があった。 常識的に考えたら選ぶべきは東京での正社員だった。すぐにお金をもらえるし、やりがいも得られそうだ。それにそこで働いている社員の人たちがとても魅力的だった。これまでの社会人経験から「誰と働くか」が重要だと思ってきた私にとって、このポイントは

便利を得て想像力を失する

『おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。』 サンフランシスコに渡る直前、私はこの『魔女の宅急便』のキャッチコピーをよく思い出していた。英語はおぼつかないし、すでにブランクは4年半になっていた。そもそも週40時間働くのだって4年半ぶりだ。それに新卒以来一番下っ端の立場だ。基本的には落ち込むことばかりだろうことを覚悟していた。 インターン中の3ヶ月間は先述の友人宅に居候させてもらうことになっていた。彼女の家に到着した日、玄関にこの言葉が入った『魔女の宅急便』のポスターが貼

When there is a will, there’s a way

イタリアから帰ってきた私は東京でマンスリーマンションを契約した。すでにアメリカのビザが切れていたため、次のビザが承認されるまでの間は東京勤務となったのだ。東京オフィスのメンバーは温かく迎えてくれたし、サンフランシスコのメンバーともSlackでこまめにコミュニケーションを取っていた。しかし、経営陣とはだんだんと歯車が噛み合わないように感じることが増えていった。 今自分がやっていることは果たして何のためなのか。たとえば会社の売上や利益を増やした先に実現したいことは何なのか。イノ

サンフランシスコに幕、京都へ

独立すると決めた私は、クリスマスに入る前に会社にその意思を伝えた。会社の方針に理解が追い付かなくなったこと、ディレクターという立場上、その状態で働き続けるのは難しいことを伝え、会社が私のビザ申請に費やしたコストと労力について謝罪した。 会社を辞め、日本に帰ってフリーランスで働くという決断を短期間で下したことに、周囲はまた度肝を抜かれていた。「1ヵ月前に会ったときそんなこと一言も言ってなかったのに!」と言った友人もいたが、1ヵ月前には私自身がそんなことをまったく考えていなかっ