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「猫様のクチバシ」第十三回 雑誌で買いたい小説を物色する

私が雑誌に出会ったトシ


雑誌って買いますか?
私はサブスクを利用するようになってから読むようになりました。例えば、手芸雑誌とか旅行雑誌とか猫の雑誌とか、必要に応じて検索するような感じです。

私は漫画雑誌ですら中学生になってからしか親に買ってもらっていませんでした。小学生の頃までは図書館の本を読んでいました。おそらく漢字が難しかったんじゃないかと思うんですよね。
私が漢検の準2級か2級を取ったのは、小学校高学年の時で、父の言葉と学校の先生の言葉がきっかけでした。

上場
旗手

この2つの漢字が読めなかったのですね。父には馬鹿にされ、学校の先生には意外そうな顔をされました。父に馬鹿にされる事はしょっちゅうですからそれほどではなかったものの、学校の先生の反応の方に奮起することができました。
上場については今もよくわかっていません。キシュは乗馬の騎手の事は知っていたのですが、文脈から旗を持つ人だという意味を理解することができなかったのです。旗という感じは今でもすっと出てきません。手がシュと読んで人を指すというのは何となくわかっていました。

↑こういうの読んでも理解力が足りず、全く意味が分かりません。

音で読めても意味がわからないと文章って面白くなかったんですよね。高校生くらいまでは広辞苑を引きながら本を読んでいました。

ライトノベルにはまったのは友人の勧めです。雑誌を私に勧めてくる人はいませんでした。まるでおしゃれに興味がなく、興味を持ってもらえそうに思われなかったのでしょう。

しかし、高校生の頃には、公募ガイドや少女漫画の雑誌を読むようになっていました。これが間違いで高校生の時こそ勉強に勤しむべきだったんですよね。私は高校生活が本当に嫌でした。勉強というよりも学校という環境が嫌でした。

別冊の魅力

私は読むために買った雑誌についている付録には子供の頃全く興味がありませんでした。しかし、別冊漫画が好きでした。本編とは違ったエピソードが読めたり、新人の方の読み切り小説が読めたりするのが楽しかったのです。

大学生になって一人暮らしを始めて、半年以上はテレビも買わず、冷蔵庫もなくクーラーもつけませんでした。秋に部屋にカビが生えてきたので、クーラーを取り付けてからなし崩しに家電を買うようになりました。

17年以上前ですから、YouTubeなどネットで動画が頻繁に見られる時代でもありません。雑誌を買い込んで暇つぶしをするようになりました。特に好きだったのが別冊です。漫画や小説だと分厚くて、いろんな方の作品が載っているのが好きでした。
あの頃の自分を思い浮かべるともっと違った生活をしたら、何か変えられることがあったと思うのです。しかし、自分に待ち受けている将来のことを全く見通せておらず、周囲のことに興味もありませんでした。
祖父母が亡くなったときの事は遠い記憶となっており、悲劇は物語の中の出来事になっていました。

推理小説をよく読みました。漫画もいろんなジャンルに手を出して、20代まで書籍代がとんでもないことになっていました。

20代前半までは書籍代のために働いて、後半からは病院代のために働いていました。今は何でしょう?猫たちが生きがいです。


私にとって宿敵の文芸春秋に手を出しました。とは言え、20代の頃は文芸春秋の分厚い雑誌を読んでいたのです。阿川弘之さんのコラムが読みたかったんですね。
怖い話や泥沼展開が苦手なので、小説は読んだり読まなかったり。戦争についての考察を聞くのも嫌いでした。週刊誌も好きではありません。しかし、週刊誌を出している出版社の本は読まないと決めていたら、読む本はなくなってしまいます。いわゆる半沢直樹シリーズがテレビドラマで始まる前、たまたま立ち読みした経済雑誌の「ロスジェネの逆襲」の連載小説が面白くて、全く経済雑誌コーナーに似合わないジーパンと洗いざらしのTシャツにずだ袋のようなリュックを背負った女が青山や新橋の書店の経済誌のコーナーに入って、経済雑誌を買うという事をしばらく続けていました。もちろん経済について全く知識はつきませんでした。読んでいた経済雑誌の名前も東洋経済だったかプレジデントだったか、それすら覚えてもいません。今ならネットで注文すれば済みます。女性の全くいない書店に入って、いかにも場違いな格好で、いそいそと雑誌を買わなければいけないのが本当に惨めでした。仕事を辞めて飛行機に乗って東京を去る時に、もう二度と東京で働く事はないだろうと思ったものです。

本を買いに出かけると、都会では必ず人から話しかけられます。福岡で働いている時もそうでした。電車の切符の買い方、乗り換えの仕方、交番の場所や駅の場所やバスの乗り方、飛行場に行っても外国人にゲートがどこか聞かれる始末。私はとても方向音痴です。
大抵のことに慣れていないのに、歩いていて、人に道を聞かれないことがないという20代でした。

話がそれました。

私にとって書店に雑誌を買いに行く事には以上の通り良い思い出がありませんでした。しかし、今はサブスクで多くの雑誌を以前よりも身近にするようになりました。
新聞を毎日取って、小説雑誌や漫画雑誌を隔週で買って、コーヒーを飲んでたった1人で生活することが私の20代の夢でした。できれば、古本屋さんの隣に住みたいと思っていました。

その夢は全く叶わず、読みたい本を探すのではなく、サブスクでお勧めの本を漁る日々。コーヒーを飲み過ぎないように気をつけて、なるべくカフェインレスの飲み物を探して、ハーブを育てて、猫と実家で暮らしている。20代の頃の夢に固執などしていませんが、なんでこうなっちゃったんだろうとは思っています。
それをちょっと変えてくれるのが、こうした別冊雑誌だったり、図書目録だったりするのです。別冊雑誌がサブスクに上がってくれたら、図書目録を取り寄せる手間も省けるというものです。

コバルト系小説が文藝春秋で読める時代

#宮島美奈

著者紹介  みやじま・みな  一九八三年静岡県生まれ。滋賀県在住。京都大学文学部卒業。二〇一八年「二位の君」で第一九六回コバルト短編小説新人賞を受賞(宮島ムー名義)。二一年「ありがとう西武大津店」で第二〇回「女による女のための R- 18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。二三年、同作を含む連作短篇集『成瀬は天下を取りにいく』でデビューし、話題となる。同作の続篇『成瀬は信じた道をいく』が2024年一月に刊行されて話題となり、2024年第21回本屋大賞を受賞。

懐かしいですね。10代から20代はコバルト文庫をよく読んでいました。20代の後半になるとコバルト文庫の作家の方々がオレンジ文庫に移動されたので、オレンジ文庫を一時期を読むことも多くなっていました。

この宮島美奈さんの新作「婚活マエストロ」が文藝春秋の別冊に掲載されています。
私はnoteで、本屋大賞の話題が出てお名前を知りました。

「婚活マエストロ」

連載小説です。5月の別冊文芸春秋第55号では、前回のあらすじの解説とともに続き、外が描かれています。別冊文芸春秋で連載中なのか、本誌の文芸春秋でも連載されるているのか分かりません。
今回は65歳以上向け、シニアの婚活パーティーのバスツアーが舞台です。会話主体で話が進み、短文改行多めの軽やかな文体で、サクサクと読み進められます。
バスツアーは疲れるイメージでしたが、疲れない婚活というのが参加する人たちの命題。
まだ単行本になっていないようなので、続きが気になります。

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