【教材研究のお供に一冊】#4 『アトキンス 一般化学(上・下)』

前口上

久々に綴る【教材研究のお供に一冊】シリーズ。
このシリーズでは高校生用の参考書以外に、教材研究でお役に立つような学術書・一般書籍などをご紹介。
私自身もこういった本も眺めてみて、新たな視点から教材研究を深めることにつながっていると思います。
ひょっとしたら高校の理科の先生の中で、この記事をご覧になっている方がいらっしゃいましたら、ご参考までに。


上巻


下巻

さて今回ご紹介するのは、理系の大学の一般教養レベルの教科書『アトキンス一般化学』。
大学で化学を専攻された方の中では「アトキンス」という名前から、物理化学の大家を思い出す方が多いのではないでしょうか?
特に『アトキンス 物理化学』という教科書は超有名。
そんなアトキンス先生は物理化学だけでなく、無機化学や有機化学の分野も含めた教養の化学の教科書も執筆されていました。
高校の先生の中では教材研究をされる際、大学レベルの専門書まで必要ないのでは?思われるかもしれません。
実際に『化学の新研究』『原点からの化学』『新・理系の化学』といった中身の深い受験参考書も出版されているので、教材研究をする際は、これらを参考にするだけでも十分とも考えられます。
しかし、『アトキンス 一般化学』を高校の物理・化学の教材研究で使う際、こんなところでいいね!思ったことをつらつらと。

ポイント

1.カラーのグラフィックわかりやすい

まず、この本は全体がカラフル!!
あらゆるページで粒子の結合・変化・移動、グラフ、試験管内の液体(溶液)の変化、エネルギーのやりとりなどを、カラフルに図解している。
しかも、色分けや色の濃淡を上手いこと使っているので、立体感が出ている。

2.化学熱力学についての説明が詳しい

やはり物理化学の大家であるアトキンス先生。
化学熱力学については詳しく綴られている。

ネット界隈では「物理化学の本より一般化学の本の方が熱力学について詳しく綴ってるんじゃないの?}といわれているんだとか。

高校の物理・化学において熱力学は必須の分野。
新課程の学習指導要領では高校の(基礎なし)化学においては、主にエンタルピーを使って化学反応と熱のやりとりを学ぶことがいわれている。
しかも、教科書によってはエントロピーやギブズエネルギーについても扱われている。
特にこの本ではカラフルな図解を用い、なおかつ高校の物理・化学で出てくる程度まで数式を出すのを抑えながら、わかりやすく化学熱力学を説明している。
それでも人によって難しいと思えるかもしれないけど、根気よく考えれば理解できると思っている。

振り返り

大学レベルの専門書というと難しすぎて、高校の授業の教材研究にはマッチしないかな?と私自身思っていました。
確かに、特に量子論などで難しい記述がございますが、よく読んでみると高校の物理・化学の授業や教材研究をする際、専門書の中では背景となる知識や考え方が得やすい一冊だと思います。
ご興味がございましたら、一度ご覧になるのはいかがでしょうか?

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